【第十四話】魔法医師 ①
「そう機嫌悪くするなよ、恭司。似合ってるぞ?」
「ブチ殺すぞ」
そうして、
2人は店を後にすると、再び職人街へと戻ってきた。
その姿は入る前とは打って変わって、貴族の令嬢とその執事が並んで歩いているような見た目になっている。
髪の色も恭司が金髪で、スパイルが黒髪のため、正しく逆になった形だ。
服装だけでなく細かい所まで色々と変わったこともあり、確かにバレにくくなっているだろう。
「まぁ、元々の目的は達成できそうだし良いじゃねぇか。これで、宿屋にも医者にも行き放題だぞ?」
「行き放題ってことはないだろう……。というより、俺がこのまま医者に行ったら、色々と勘繰られそうな気しかしないんだが……」
「女装趣味とか?」
恭司の鉄拳がスパイルの溝落ちに入った。
スパイルはその場で悶え、恭司は先を歩いていく。
もうスパイルを先導させるのはやめたのだ。
「冗談だよ。そんなに怒るなよ」
スパイルはそう言って、後ろから恭司に追いついてきた。
怪我人相手のため、恭司も一応手加減はしたのだ。
思いの外、回復が早かった。
「もっと強く殴っておけば良かった……」
「まぁまぁ……。ところで、それじゃあ今向かっているのは医者の方か?」
「あぁ。一時の恥は我慢することにした。このままだと色々ヤバいからな」
「あぁ……確かに……色々とヤバいな」
ホテルで睡眠はしっかり取ったとは言っても、多少体力が回復しただけで、根本的な所は何も変わっていないのだから当然だった。
恭司はシェルの時にやられた骨折と火傷に、出血多量ーー。
スパイルはティアルと恭司との連戦で蓄積されたダメージで、出血多量だけでなく生傷も多いーー。
応急処置で縫い付けたとはいえ、喰斬りのダメージもある。
確かに、早めに医者に行くのが正解だろう。
「医者は南の教会付近に集まっていたはずだ。職人街の隣だから、それほど遠くはないはずだぜ」
「そりゃどうも。もうお前に先導は任せられないからな」
「手厳しいねぇ……」
そうして、
2人は南の教会付近に辿り着いた。
何の宗教かは分からないが、大きな教会が奥に聳え立ち、周りには住民の家や事務所関係が並んでいる。
他にも喫茶店や整体院なんかもあり、自宅と兼任してそうな店が多かった。
一応、住宅街の一部にあたるのかもしれない。
そして、
2人の目当てである病院や治療院もその近辺にけっこう沢山あった。
大小様々な店が並び、繁華街や風俗街の時のような客引などは勿論ない。
どれがいいのかは正直まったく分からなかったが、恭司はその内の1つに目を付けた。
この中で最も小さく、特に取り立てて目を見張る特徴もなかったのだが、何故かそこが一番いいと思ったのだ。
恭司は迷うことなく歩き出す。
「あそこにしよう」
「ん……?あぁ……」
歩き出した恭司の後ろを、スパイルは不思議そうに付いていった。
特徴がない分、特に反対するポイントもなかったためだ。
別に何も言うことはない。
2人は扉を開けると、中へと入っていった。
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