【第十三話】ドラルスの街 ⑧

「さらに言えばね……。アナタたち相当強いわよね?お隣の子がさっき放った気配も相当だったけど……アナタの体からもしっかり伝わってくるわ。見たところミッドカオスとディオラスで出身国も違うようだけど、そんなアナタたちが2人揃ってるってだけで目立つのよ。しかもアナタたちの国、今戦争中だし……。タイミングもバッチリ。そりゃ只事じゃないってことくらい、私にだって分かるわ」


「なるほどな……」


「ていうか……これだけの戦力の持ち主、ミッドカオスもディオラスも簡単に手放すはずないわよね……。それに、場所柄色々と情報も入って来るんだけど、最近同時期にあった2国の事件……。アナタたち……もしかして……」



チャキッと……音が鳴った。


音を鳴らしたのはわざとだ。


恭司は店員の背後から、店員の首筋に刀を当てる。


あと少しでも動かせば、その太い首を掻っ切るだろう。



「俺たちみたいなのを相手にするのが売りだと言っていたな……?なら、余計な詮索をしないのも、そのルールに入るんじゃないか?」



店員は、ゴクリと唾を呑み込んだ。


店員も鍛えている。


後ろ暗い連中ばかりが来るということは、そういう手合いに慣れる一方、強行してくる相手に対処できる実力を持っていなければならないのだ。


中にはお金を払わないなどの強行策を取って来る連中も多いし、こういう業界において、自身も強くあることは必須だと言える。


だが、


恭司のこの動きに対し、店員は少しも対応することが出来なかった。


何の反応も出来なかった。


やはりと……店員は納得する。


さっきの恭司の時に既に分かっていたが、この2人のどちらかがその気になったら、この店などあっという間に壊滅してしまうだろう。


抵抗も無駄だ。


後ろ暗いとは言っても、ここに来る人間の大概は戦争の敗残兵やハグレ者が多いため、普段、あまり実力者は来ないのだが、この2人は本物だ。


人を殺すことに慣れすぎている。


だとしたら、


さっきの話も……



「おい。聞いているのか?」



恭司の声に、店員はハッと顔を上げた。


ブンブンと首を横に振り、両手を上げる。



「不用意に口走ってしまったことをまずは謝罪するわ……。そう、アナタの言う通り。ここにはアナタたちのような人が多く来るし、その事情を深く聞くのは御法度……。今のは私が悪いわね」



店員はそう言って冷や汗を一筋流した。


いつもの中途半端なアウトロー相手じゃない。


これは、本当にヤバい相手だ。



「…………」



恭司は店員の様子を見ると、黙って刀を下げる。


少し気まずい雰囲気が流れた。


そこで、


スパイルが場を取りなすようにパンパンと手を叩く。


またしても、仕切り直しだ。

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