【第十三話】ドラルスの街 ⑦

「ま、まぁまぁまぁまぁッ!!誤解も解けたようだし、そうと分かればちゃっちゃと商談に移っちまおうぜッ!!俺たちもこのままだと活動しにくくて困ってたからなッ!!手早く頼むわ!!」



スパイルはそう言って、明るくその場を仕切り直した。


さっきから恭司の方から鋭い姿勢がグサグサと突き刺さっている。


「何故、先に言っておかなかったんだ」と言わんばかりの目だった。


後で追及は避けられないだろう。


スパイルはカラカラの笑顔で誤魔化した。



「そうねェ……。お互い暇な身でもないでしょうし、そういうことならすぐに用意しちゃいましょうか」



そう言うと、


店員はスパイルの方に歩み寄って、おもむろにスパイルの股間を触り始めた。



「何ッ!?」



スパイルも思わず声が出る。


ズボンの上からとはいえ、そんな所をソフトタッチされるとは流石に予想外だ。


しかし、


店員は真顔で首を傾げていた。



「何って……。採寸を測ってるのよ。個室の方が良かったかしら?」


「い、いや、そうか……。悪い。突然だったもので驚いちまった……。別にここでいいよ」



スパイルは冷や汗そこそこに頷く。


「なら何故最初に股間を?」という質問は、やはりしないことにした。


仕事のためなら仕方がない。


さっきからやたらと下半身や筋肉に触れてくるのも、きっとたまたまなのだろう。



(タマタマだけにな)



スパイルは、1人で笑った。


恭司がそれで不審な目を向けていることについては、敢えて気づかなかったことにしておく。



「はい、完了よ。お疲れ様。アナタの服はコレで作れそうよ」


「いや、待ってくれ。今さらだが、別にオーダーメイドで作る必要はない。既製品でも……」



そこで、店員はチッチッチッと指を左右に動かした。


さっきから微妙に鼻につくと感じながらも、スパイルは話を聞く。



「変装をナメちゃいけないわ。特に、アナタたち2人は異様に目立つ見た目だからね……。細心の注意を払う必要がある」


「いや、そこまでか……?」


「自覚してないの?アナタが特に一番目立つわよ?身長も高いし、体は私以上にムッキムキ……。オマケにその金ピカの髪の毛に、凶暴なオーラ……。


隣の子は女の子みたいに超美形な顔している上に、襲いたくなるような細身の体で、見たことない着物を着ている……。


一体どこを取れば既製品でいいと思えるの?」


「オーダーメイドだと変わるのか?」


「当たり前じゃない。そこはプロよ。こんな街のおかげで、普通の服を作るより得意なくらいよ。ドラルスの職人を、舐めないでほしいわね」


「ほぉー……。そこまで言うか……」



スパイルは値踏みするような目付きで店員を見た。


さっきの股間に対する意趣返しだろうか?


店員はカチンときたのか、さらに言葉を重ねる。

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