【第四話】三谷恭司 ②
「ば、バカな…………ッ!!一体どうなっている!!くそッ!!奴らの思考を読み違えたか…………ッ!!ミッドカオス兵よ!!数で押し潰せッ!!」
バルキーが焦った様子で指示を出す。
日本国の理念、思想について、バルキーはしっかり理解していたはずだった。
事ここに至っては、日本国は延命を選ぶものだとばかり思っていたのだ。
まさか、ここに来て怒りの感情が爆発し、自爆的に攻撃をしてくるなど思っていなかった。
完全に読み違えたと言える。
ミッドカオス王はここにきて、とても大きな失態を犯した。
「バルキー・ロォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオズッ!!!!」
途端、
森の中から一斉に日本国軍らしき人間が飛び出してきた。
速度から見るに三谷一族だろう。
彼らは一目散にバルキーへ向けて三日月を放ち、バルキーはそれを剣で弾き返す。
その瞬間に周りのミッドカオス兵たちがバルキーの前に立ち、バルキーは後ろへと下がっていった。
「くそッ!!くそくそくそ…………ッ!!何故こんなことになったッ!!ここまでは完璧だったというのに…………ッ!!何故だッ!!」
後悔は先に立たない。
戦場には身を裂く烈風がいくつも行き交い、人の腕が足が宙を舞う。
大勢の仲間の仇を目にした三谷一族は、その全員が凄まじい鬼の形相で、目は紅く爛々と輝いていた。
返り血で全身赤く染まった彼らは、傍から見れば鬼そのものだ。
それが一騎当千の強さで幾多ものミッドカオス兵を蹴散らしていく。
「逃ィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイがすかアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
バルキーが下がっていくと、森の中からさらに人が現れ、ミッドカオスにさらなる容赦ない攻撃を浴びせてきた。
逃げるバルキーを追い詰めんと、こぞって追い討ちをかけにきたのだ。
生き延びていた日本国軍はそのほとんどが三谷一族だったことも関係しているのだろう。
後からやって来る人間のほとんどは三谷の技で激しく追随し、ミッドカオス軍はまだ日本国の誰1人も殺せていない状況だった。
飛び交う風撃の乱舞に、ミッドカオス兵はその悉くが死に絶えていき、反撃どころか姿を確認することすらままならないときている。
バルキーはそれらを苦々しい目で睨み付け、声が枯れるくらい指示を出し続けた。
もう奥の手も何もかも出すしかない。
このままだと、ミッドカオス軍はコイツらに全滅させられてしまう。
「視察に出した兵も全て集めろッ!!こうなれば総力戦だ!!『シェル』もここに呼べッ!!」
バルキーはもはや焦りの表情を隠さなかった。
ここにいる日本国軍は、おそらく100にも満たないだろう。
それに対して、
ここにいるミッドカオス兵は20万はくだらない。
それがここまでの苦戦を強いられているのだ。
敵の思想だけでなく、戦力も読み違えていたと認めざるを得ない。
「使える物は全て使えッ!!隠蔽はもういい!!ここで奴らを根絶やしにするのだ…………ッ!!」
バルキーは精鋭部隊に守られながら、なるべく軍の奥にまで移動し、その間にも指示を出し続けた。
軍略に長けたミッドカオスの王は、この状況下でもあらゆる策を出し、日本国に対抗する術を展開する。
だがそれでも、
日本国の勢いを止めることは出来なかった。
元々国民全てが将軍クラスの実力を持った国だ。
真正面からやり合えば、いかに数で勝っていようと、勝てるとは限らない。
それが精鋭揃いの三谷一族ともなれば、尚更だった。
「一気に片付けることは諦めろッ!!1人ずつ着実に殺していけッ!!」
バルキーはようやく軍の奥で人心地つくと、改めて全体を俯瞰する。
それぞれが紅い目を爛々と光らせ、目にも止まらぬ速さで敵を殺し続けるこいつらを、バルキーは初めて恐ろしいと感じた。
こんな怖い敵は初めてだった。
およそ人間とは思えないほどの速度で、人間離れした形相でいとも容易く人を斬るこいつらに、バルキーは心底恐怖した。
この民族はやはり皆殺しにしておかなくてはならない。
ここで全てを断ち切っておかなければ、後に強い災いとなって、自らに降り掛かるだろう。
バルキーは目を瞑り、周囲の"気配を感じ取る"。
すると、
まだ森の中に人の気配が残っているのが分かった。
「あと500人…………いや、1,000人森に向かわせろッ!!まだ森に残っているはずだッ!!『ビス』も動かしていいッ!!」
バルキーは隊長の1人に指示を出す。
指示を出された隊長は、きっちり1,000人もの精鋭を引き連れて、森の中の恭司たちのもとへ向かっていった。
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