7章

1話 ドラゴンと美女

前書き

お待たせしてすみません。

しばらくは不定期更新とさせて頂きます。

投降時間は18時のままです。

――ここまで――



「舞え! 【氷の矢】!」


 クラリスが宝剣アルマスを掲げる。

 そうすると、数多の氷の矢がアイスドラゴンに向かって飛翔。

 アイスドラゴンは避けることもなく、氷の矢を全てその身に受けた。

 しかしノーダメージ。

 アイスドラゴンに氷の魔法は効かないんじゃないかなぁ。

 私は冷静にそんなことを思った。


 ちなみに、アイスドラゴンは身体が全部氷である。

 本当に氷かどうかは知らないけど、見た目は氷だね。

 そして割と大きい。

 まぁゴジラッシュよりは小さいけれど、戦車よりは大きい。

 アイスドラゴンが吠えて、氷のブレスを吐いた。

 クラリスが宝剣の切っ先をアイスドラゴンの方に向ける。

 その切っ先から氷系統のシールドが発生。

 氷のブレスを完全に防御した。


「すごいねクラリス」私が言う。「宝剣を使いこなしてるね!」


「まだまだ、ですわ!」


 クラリスが跳躍。

 それに合わせてレックスが駆ける。

 上下からの連係攻撃。

 うん、いいね!

 私は私で『20式小銃』を仮創造。

 アイスドラゴンが前足でクラリスをはたき落とし、尻尾でレックスを弾き飛ばした。

 あらら、思ったより強いみたい。

 クラリスは雪の地面に埋まってしまう。


「アタクシを虫みたいに叩くなんて許せませんわ!!」


 でも速攻で立ち上がる。

 レックスはちょっと遠くで転がり、でもすぐに立った。

 そしてダッシュして私の隣へ。

 私はとりあえずアイスドラゴンを撃ってみた。

 アイスドラゴンは「いてててて!」みたいな顔をして、銃弾を嫌がった。

 でもそれだけ。

 ダメージは大きくない。


「さすがドラゴン! ワイバーンと違って強いね!」

「ミア、喜んでる場合じゃない。このドラゴン、強いぞ」


 レックスは引きつった表情で言った。

 まぁ、今のレックスとクラリスには荷が重いか。

 アイスドラゴンが咆哮。

 ビリビリと空気が震え、地面に積もった雪が舞い上がる。

 私は20式小銃を消して『87式自走高射機関砲』を仮創造。

 これは陸上自衛隊の自走対空砲で、愛称はスカイシューター。

 でも一部ではガンタンクと呼ばれている。


 まぁ愛称は置いておいて、武器は35ミリ対空機関砲を砲塔の左右に1門ずつ装備している。

 突然出現した87式自走高射機関砲を警戒したのか、アイスドラゴンが一歩後退。

 さて、どうして私が対空砲を仮創造したかって?

 こいつは地上目標への水平射撃も可能なんだよね!


「撃てぇぇぇ!!」


 私が叫ぶと、35ミリ対空機関砲が火を噴いた。

 アイスドラゴンはシールドを展開。

 しかし私の機関砲は魔力が続く限り弾丸を撃ち出せる。

 本物じゃないので、砲身が熱くなるとかそういう細かいことも気にしなくていい。


「はっはー! シールドが割れるまで撃ってあげるよ!」


「ちょっとミア!!」クラリスが怒った風に言う。「話が違いますわよ!」


「え? 何が?」

「アタクシが主役で、レックスは修行、ミアはサポートのはずですわよ!」

「それはまぁ、そうだけど……」


 私は一応、撃ち方を止める。


「じゃあ、サポートに徹してくださいませ! 当たり前みたいに超火力でドラゴンを倒されたら困りますわ!」

「あ、うん。ゴメン」


 そう、この冒険はあくまでクラリスの冒険なのだ。

 正しくは冒険の予行演習。

 私たちが話している隙に、アイスドラゴンがブレスを吐いた。

 クラリスが宝剣で氷のシールドを展開し、ブレスを防ぐ。


「行きますわよレックス!」

「あ、ああ」


 クラリスが駆けて、レックスが続く。

 私はまぁ、2人が死なないようにサポートしよう。

 とりあえず87式自走高射機関砲は消しておく。

 クラリスとレックスはそれぞれ、剣でアイスドラゴンを攻撃。

 あまりダメージが通っている様子はない。

 火力不足だね。


 まぁでも、負けるのもいい経験になる。

 2人はしばらくアイスドラゴンと近接戦闘を繰り広げた。

 そしてクラリスがアイスドラゴンの前足で叩かれ、私の隣まで飛んで来た。

 クラリスは受け身を取って立ち上がったけど、かなり疲労している。

 レックスも疲労が激しいようで、足がもつれてその場に膝を突く。

 アイスドラゴンがレックスを食べようと大口を開けた。


「レックス!」


 クラリスが叫び、駆け出す。

 でも間に合わないと思うので、私が助けよう。

 そう思ったのだけど、

 次の瞬間、

 黒い刃が煌めいて、

 アイスドラゴンの首が落ちた。


「大丈夫? 迷子かな?」


 魔法で作った黒い剣を持ったお姉さんが言った。

 あまりにも簡単にアイスドラゴンを倒したので、クラリスとレックスがポカンとしている。

 私もビックリ。

 このお姉さん、めっちゃ強いじゃん!


 お姉さんは20代前半ぐらいの見た目。

 長い金髪のゆるふわウェーブで、ゆるっとしているのに、どこか華やかさもある髪型。

 瞳の色はグリーンで、私より少し濃い色。

 顔立ちはビックリするほど美しい。

 服装は寒冷地仕様の頑丈そうなジャケット。

 まぁ私たち3人もモコモコした寒冷地仕様の服装だけども。


「おーい? ドラゴンに襲われたショックで喋れない感じ?」


 お姉さんが魔法で作った剣を消して、レックスの顔を覗き込む。

 レックスはお姉さんの顔を間近で見て、頬を染めた。

 ちょ!

 美人にピンチを救われたから、惚れたとか!?

 ああんっ!

 私が助けようと思っていたのにぃぃ!

 いや、まぁ、大切なのはレックスの命だから、別にお姉さんが助けたっていいけど!

 いいけども!


「もしかして、冒険者、ですの?」


 おっかなビックリ、クラリスがそう質問した。


「そーだよー。私はルーナ。おチビちゃんたちはここで何してるのかな?」


「ルーナ先輩!」クラリスがビシッと姿勢を正して言う。「アタクシは冒険者志望で、今日は冒険者になる前の冒険訓練に来ましたの!」


「あー」美人のお姉さん改めルーナが笑顔を浮かべる。「それ、私もやった。子供の頃、早く冒険者になりたくてリリちゃんと色々なところで訓練して、帰ってはお姉ちゃんに叱られるっていうね」


 冒険者になれるのは15歳からと決まっている。


「あ、リリちゃんは私のパートナーのことね」


 ルーナお姉さんの言葉に、クラリスがうんうんと頷いている。

 クラリスの瞳がキラキラと輝いていて、本物の冒険者への憧れが前面に出ていた。

 レックスはボーッとした様子でルーナを見ている。

 くっ……。

 やはり美人に救われて惚れたのかな?

 あああ、私のハーレムがぁぁぁ!

 いや落ち着け私。

 大丈夫。

 ハーレムと言っても私の妄想だしね!


「でもどうやってこの大陸まで来たの?」


 ルーナが不思議そうに言った。

 ここは比較的、最近発見された大陸である。

 地球で言うなら北極の位置。


「私の魔法だよ」

「そうなの? 若いのにすごい魔法使いなんだね」

「ま、まぁね」


 ルーナは屈託なく笑い、私を褒めた。

 裏表のない無垢な笑顔。

 この人、超いい人!

 私も惚れそう!

 美人に褒められて惚れそう!

 私ってチョロいのかなって思っちゃうよね!


「あ、あの」レックスが言う。「俺はレックス・フォスターと申しまする」


 レックス、変な敬語が復活してる。


「私はルーナ・パーカー。よろしくね、小さな冒険者さん」

「お、俺は騎士……やっぱり冒険者になる」


 おおい!?

 君の未来はマッチョな騎士のはずだよ!?

 まぁ別にマッチョな冒険者でもいいけどさぁ!


「アタクシはクラリス・リデル・ハウザクトですわ」

「はい、よろしくね」


 ルーナはとっても人懐っこい笑みを浮かべている。

 本物の笑顔。

 純粋で自然な笑顔。

 コホン、と私は咳払い。


「私はミア・ローズ」

「うん、よろしくね」


 ルーナは笑顔のまま言った。

 それから、レックスを指さして、「レッ君」と名前を短くして呼ぶ。

 次にクラリスを指さし、「クーちゃん」と呼ぶ。

 最後に私を指さし、「ミアちゃん」と柔らかな口調で言った。

 私だけ名前そのまま!

 だけどまぁ、私の名前は2文字だから縮める必要があまりない。


「さて」


 ルーナが悪戯を計画する子供みたいな表情を浮かべる。


「3人とも、まだ冒険者になれる年齢じゃないから、本当は地下迷宮には入れないんだけど、これも何かの縁だし、私が特別に地下迷宮に連れて行ってあげようか?」

 

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