第3話
メイドであるココがメイドとしてこの家に来た翌日、いくつかの宅配便が届いた。
「ありがとうございます」
ココは配達人をきちんと出迎えていたようでなによりだ……ではなく、俺は何かを頼んだ覚えはない。
何かを頼んでいなくても送られてくるときには送られてくるのだが、それは年末とか夏に届くお中元とかお歳暮だ。こんな何もないときに送られてくることはまずない。
「それは?」
見た感じ、段ボール箱である。
段ボール箱ではあるのだが、包装紙で丁寧にラッピングされており、見るとそれが呉服屋の「レイ・バチェア」のものであることが分かる。
「メイド服です。トランクに入れるとシワになってしまうので宅配で送ってもらいました」
「もしかして、その服も……?」
「はい、そうですよ。レイ・バチェア製です」
「待ってくれ!」
今更こんなことを言うのもアレなのだが、別にメイド服で来いとは言っていない。
そもそも、来た時から思ってはいたのだがこの家でメイド服を着た人物を雇うというのはなんともアンバランスすぎる。
とてもではないがこの家はメイドに釣り合うほどの豪華さもお洒落さも持ち合わせてはいなかったのだ。
もちろん、高級ブランド服バチェアのメイド服など言うまでもない。
だが……。
身につけるメイドさんの方はそれに負けないくらいかわいい!!
むしろ、ブランド服を身につけていたという事実は彼女のかわいらしさに加えて少し大人で上品なエレガントさをイメージさせた。
間違いなく似合っている。彼女がメイド服を着たのではない、メイド服が彼女に着てもらっているくらいには似合ってる。
「いや、引き止めてしまってすみません……。よろしくお願いします」
ココは少し首をかしげたが、
「こ、こちらこそよろしくお願いします!」
と言って部屋へと戻っていった。
いや、かわいいんだが。
「え、どうしよう。メイドさんめちゃんこかわいいんだが!?なんなの、俺本当に起きてる?寝てないよね」
退院後はある程度の時間しっかりと寝ているようにしていたし、今はもうばっちりさっぱり目は覚めているはずだ。
いや、分からん。次寝てメイドさんに起こされるようなら信じよう。
と、俺はソファで横になる。
ばっちりさっぱり目が覚めているとはなんだったのか、少しするといつの間にか俺は寝てしまっていた。
—————
私が服を取り出そうとラッピングをはがしていたところ、隣の部屋から声がした。
それなりに扉は厚めだが、防音できるというわけでもなさそうだ。なんて思っていたら、その言葉だけは私の耳に入ってきた。
『メイドさんめちゃんこかわいいんだが……!?』
あ、あの人なに言ってるの?
私はとても恥ずかしくなってきて服を取り出す作業に集中しようとする。
集中できるわけがない。
なんとか服をハンガーにかけてクローゼットに仕舞ったあと、私はリビングへ出てみた。
とても静かだと思ったら、ご主人様はソファで寝てしまっていた。
「困ったご主人様ですね」
と思わず出てしまった言葉が聞かれていなければいいのだが。
私はそっと彼にブランケットをかけ、職務に励むことにしたのだった。
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