「半翅戦隊フィロキセレンジャー」

秋来一年

第17話 乗り込め! 悪の巣窟は移動式?!

 これまでのあらすじ! 

 ついに敵のアジト・ヴォーヌロマネにたどり着いた戦士たち。しかし悪の四天王の策略により、あと一歩のところで逃げられてしまう。果たしてフィロキセレッドたちは、秘密結社ロマネ・コンティを倒し、平和な日々を取り戻すことができるのだろうか。



 薄暗い部屋だった。

 轟々と地面が鳴る。どこからか流れる音楽は重苦しく、部屋の狭さと相まって息が詰まるようだ。


 しかし、常人なら立っているだけで息苦しいはずのそこで、高く笑い声を上げる者がいた。


「はーはっはっ! まさか貴奴らも、我らが首都環状線の車両を根城にしてるとは思うまい」


 小さな少女だ。見た目相応の甲高い声が車内に響く。

 そう、車内である。息が苦しいのは、単にここが満員電車の中だからである。そしてこの幼女はボックス席に座っているので元気いっぱいである。


「おいピノ。我々の存在は秘匿されなければならない。いくら前後の車両まで構成員しか乗っていないとはいえ、発言には気をつけるべきだ」


 あと、電車の中では静かにするように。飴ちゃんやるから。

 そう言って、組織ナンバー2の男・絶炎のシャルドネは目の前の座席に座る少女に飴玉を渡す。


「ピノワール様をお子様扱いするなっていつも言ってるだろ! それに、乗車マナーで言ったら車内喫煙してるシャルドネの方が悪いだろうが」


 ゲシゲシと前の座席を蹴る少女――勅命のピノ・ノワール。

 ピノが蹴りを入れる度、まるで双翼のような豊かなツインテールが上下に跳ねた。

 ちなみに、彼女の頬は何かでまあるく膨らんでいるのだが、口の中に何が入っているかは四天王である彼女の名誉のため伏せる。お子様じゃないもんね。甘いものが好きなだけの立派なレディだもんね。


 ピノの指摘に、シャルドネは自らが咥えている〝火のついていない〟煙草を指に挟み、口から離す。

 火がついていないはずのそれはしかし、細く長い煙を昇らせていた。

 蹴られた仕返しとばかりにシャルドネがピノに煙を吹きかけると、「ぎにゃーっ」とピノが目を瞑って首をぶんぶん振る。


「そんなことより会議しねえのか? 早く俺様たちの手で、さくっと世界救っちゃおうぜ!」


 ピノの隣、ボックス席に座るもう一人の男が言った。

 快活な笑みを浮かべるのは、怪力のブルゴーニュ。黒い髪に、地中海を思わせる爽やかさが印象的な青年だ。


「……」


 そんな三人のやりとりを寝ぼけ眼で見つめるのは、四天王最後の一人――泰然のメルロー。

 自身の顔よりも大きなぬいぐるみを抱きしめた少女もまた、ボックス席に座っていた。


 そしてそんな三人を囲むのは多数の構成員たち。

 スーツ姿に擬態した彼らは、首都環状線の四両目から六両目までを埋め尽くしている。

 その顔はみなどこかくたびれており、目の下には二頭の茶色い熊が住んでいた。彼らは誰にも邪魔されない会議の場をつくるため、始発からこの車両に揺られ続けているのである。


 それも全ては秘密結社ロマネ・コンティのため。日本転覆を目論む彼らは、日本社会のあらゆる企業に潜入し、日々来たるべき時を待っているのである。コピーとか電話応対とかしながら。


「おいそこのお前! 会議をしてたら腹が減った。《ピノワール様のために揚げたてのドーナツをもてい!》」

 不意に、ピノワールが構成員の一人を指さした。


「イーッ!」

 指さされた構成員は元気よく応える。忠実なる下級構成員である彼は、まだ全然会議してないじゃん、という心の声はおくびにも出さない。


 その時、不思議なことが起こった。

 返事をした構成員の手が、いつの間にかボウルを抱えていたのである。ボウルには白い粉がたっぷりと詰まっており、泡立て器が刺さっている。

 先ほどまで、その構成員の手に握られていたのは通勤鞄だけだった。今日の会議資料とパソコンの入った鞄の重みは、しかし、今どこにもない。

 明らかにおかしなことが起きているというのに、車内の誰一人として驚く者はいなかった。


 だって、これは彼らにとって当たり前だから。

 秘密結社ロマネ・コンティの四天王はみな、特異な能力を持っている。それこそが、彼ら彼女らを四天王たらしめている理由でもあった。


 一見、ただの偉そうな幼女にしか見えない、〝勅命〟のピノ・ノワール。

 彼女の勅命に逆らうことが出来る者は、誰もいない。

 彼女が一声命じれば、誰もが頭を垂れる。それは、物理法則ですらも例外ではなかった。


 電車内で命じられた《揚げたてのドーナツをもてい!》という一見不可能に思える勅命は、彼女の能力によって絶対的に訪れる未来へと塗り替えられたのだ。

 命じる機会さえあれば、神をも跪かせられるこの能力。惜しむらくは、一度に一つの対象にしか命令できないところか。  


〈次は、梟谷、梟谷……〉

 車内にアナウンスが響く。それを受けて、シャルドネが口を開く。


「少しお遊びが過ぎたようだな。これより、日本転覆会議を始め――」

 開かれた口は、しかし、会議開始の宣言をするより前に閉じられる。

 そのまま小さく舌打ち。


「――一時中断だ。車掌が六両目より接近。総員、片付けカモフラージュ開始」


「イーッ!」

「ここではリントの言葉で話せ!」


 スパコーンッと、どこからか取りだしたハリセンでシャルドネが近くにいた構成員を叩いた。だからバレたらやばいって言ってんだろ。


 シャルドネの号令を受け、構成員たちがわらわらと原状復帰カモフラージュを行う。カーテンは開かれ、ホワートボードは解体して座席の下へ。カチ、という音と共にラジカセが黙り、先ほどまで流れていた重苦しいBGMも止んだ。


 間一髪。

 会議セットをしまい座席を閉じるのと、四天王のいる五両目に車掌がやってくるのは同時だった。


 車内を見回りつつ、四両目方向へ向かう車掌。

 ふと、車掌が鼻をぴくぴくとさせた。どこかから、こうばしい匂いが漂ってくる。ドーナツだ。


 姿こそ多数の構成員によって隠されているものの、ついに揚げ段階に入ったドーナツの食欲をそそる薫りが車内に漂っているのだ。

 まずい。(ドーナツは美味しそうなのに)


 シャルドネは咄嗟に、車掌の違和感を〝燃やした〟

 途端、車掌は小さく首を傾げ、四両目へと進んでいく。


 これこそが、絶炎のシャルドネの能力。

 彼はあらゆるものを燃やすことが出来る。相応の熱量さえ在れば。

 だからこそ、彼は常日頃煙草を咥え、その熱量を虚数空間に保存・蓄積しているのである。おかげで肺は真っ黒である。

 もし肺ガンになったら労災は降りるのだろうか。そんなことを考えながら、シャルドネは大きく息をついた。ともかく、車掌に勘づかれなくてよかった。


「よし、これより会議を再開する」

「イーッ!」

「お前の罪を数えろ!」


 スパコーンッと再びハリセンが唸る。

「何度言えば分かるんだまったく。まだ車掌がいつ戻ってきてもおかしくな――」

 言い切る前に閉じられる口。

 今度の舌打ちは少し大きかった。


「――一時中断だ。車掌が四両目より接近。総員、片付けカモフラージュ開始」


 そう言うシャルドネの隣にはまっさらなホワイトボードがたち、カーテンは閉められ、ラジカセからは重々しいBGMが流れていた。会議再開の準備はばっちりだった。


 構成員だけでなく四天王も手伝い、急いで会議セットを隠していく。

 間一髪。

 またしてもぎりぎりのところで、会議セットを車掌の目が届かないところに仕舞い込むことが出来た。


 構成員の背中は汗で濡れ、ワイシャツが張り付いてしまっている。

 車内の皆がどこかボロっとした様子で、片付けの際に乱れたのか、髪の毛がぴょこぴょこと跳ねている者も少なくなかった。


 そんな乗客に、再び五両目にやってきた車掌は首を傾げる。

 車掌はそのまま、辺りに気を配りながらゆっくり歩いて行き、奇抜な格好の四人組に目をとめた。


 それに気づき、先ほど同様車掌の違和感を〝燃やそう〟としたシャルドネ。しかし、車掌が口を開く方が早かった。

「切符を拝見します」


 無用な騒ぎは避けたい。なぜなら、我らは秘密結社だから! 


 四天王の四人は、言われた通りに切符を取りだし、車掌に提示する。

「ずいぶん遠くからいらしたんですね。今日はどのようなご用事で?」

 余程不審に思われているのだろう。車掌が訝しげに四人に訊ねる。


「取引先へ向かっているんです。この子は娘で」

 ゲシッ。

 子供扱いされたことに怒ったピノワールが、シャルドネのすねを蹴る。

 びきびきと青筋を浮かべながらも、笑顔を維持するシャルドネ。


 そちらは? と促すように、車掌が視線を残りの二人へと向ける。

「……眠い」

 これまでの話を聞いているのかいないのか、メルローはそう呟くと、くあ、と欠伸をした。


「俺様はロマネ・コんぐむぎゅ「彼は私たちのボディーガードでして! こら、取引先のことは守秘義務だと言ったでしょう」

 ブルゴーニュの口を塞ぎ、シャルドネは無理矢理笑顔を維持して言う。こめかみの青筋は先ほどより増えていた。


「そうでしたか。それでは、よい旅を」

 車掌の浮かべる笑みもまた、ぴくぴくと引きつっていた。

 不審な四人組に、車掌はあまり関わらないことに決めたらしい。

 さくさくと離れていく車掌。五両目の扉が開かれ、閉じて、車掌の姿が隣の車両へと消える。


「ふぅー」

 大きくため息をつくシャルドネと構成員。

 いつもは偉そうなピノワールも、この時ばかりは平らな胸を撫で下ろしていた。


「っぷはあっ。おい、シャルドネ。さっきは俺様たちのことを言っちゃってもよかったんじゃねえか?」

 ブルゴーニュが、塞がれていた手から逃れるやいなや言った。

 また始まったよ、と構成員たちは少しだけ緊張した面持ちで会議の準備を行う。

「もっと堂々としててもいいんじゃねえか。正義の味方なんだからよ」


 そう、ブルゴーニュは、秘密結社ロマネ・コンティが正義の味方だと勘違いしているのである。


 〝怪力〟のブルゴーニュ。四天王一、恐ろしい能力を持つ男。

 彼の能力は物理法則すら破壊する。

 例え隕石が落ちてこようとも、〝俺様なら止められるぜ〟という強い意志の力があれば、受け止めることが出来てしまうのだ。


 そんな彼の力が〝正義の味方〟陣営に取られてはまずい。

 そこでロマネ・コンティの面々は、彼の勘違いを正すことなく、秘密結社の仲間として行動を共にしているのである。

 さて、そんな強力な能力を持つこの男にも欠点があった。

 それは――


「いいか、ブルゴーニュ」

 シャルドネが、言い聞かせるようにゆっくりと口を開く。


「「名乗るほどの者ではありません」って、格好いいと思わないか」

 シャルドネの言葉に、ブルゴーニュの瞳が輝く。

「正体を知られてはいけないヒーロー、格好いいと思わないか? 古来より、ヒーローはその正体を隠すものなんだ。ヒーローの「ひ」は秘密の「秘」なんだよ。だからな、私たちの正体を一般人に知らせるわけにはいかないんだ」


 シャルドネの言葉に、ブルゴーニュは言った。

「おう、わかったぜ!」


――そう、ブルゴーニュはバカなのである。


「分かってくれて何よりだ。さて、会議の準備も整ったことだし、気を取り直して

今度こそ会議を――」


 二度あることは三度ある。

 そんな古くからの慣用句に、これほどまでに苛立ったのは、シャルドネは初めてだった。

 今度はもう、舌打ちすらしない。代わりに大きくため息をつく。


「――会議は一時中断だ。次の駅のホームに人が落ちたらしい。しかも、運転手ほか鉄道関係者は、まだそのことに気づいてないようだ」


 構成員からの報告をイヤフォン型通信機で聞くなり、シャルドネは周囲の仲間にそう告げた。

 人身事故が起きたら電車は回送扱いとなり、乗客は下ろされてしまう。そうなっては会議は再開できない。となれば、とれる手段は一つ。


「みんなで、電車を止めるぞ」

 シャルドネの言葉に、四天王と構成員は顔を見合わせ、大きく頷いた。


《電車よ、停まるがいい!》


 最初に動いたのはピノアールだった。勅命の能力を持つピノアールは、あらゆる物を思い通りに動かすことが出来る。それは無機物である電車でも例外はない、はずだった。


「ピノワール様が命じているというに、なんで止まらんのだ!」

 むきーっと、ピノワールが駄々っ子のように地団駄を踏む。


「さっき構成員にドーナツ作りを命じたのは誰だ、ピノ」

 シャルドネが呆れ顔で言った。ピノワールの勅命の能力は、一度に一つの対象にしか命令を下すことが出来ない。部下にドーナツ作りをさせている今、それ以外の勅命を何者かに下すことは出来ないのだ。


「お前の力でなんとかならんのかっ?」

 ピノワールが、シャルドネに問いかける。

 確かに、シャルドネの虚数空間に溜め込んだ熱でレールを膨張させれば、電車は止まるだろう。もしくは、電車の速さを熱で燃やしてもいい。だが。


「生憎弾切れだ」

 シャルドネの能力〝絶炎〟は、虚数空間に熱を溜め込み、その熱で対象を燃やすというものだ。

 先日のフィロキセレンジャーによる本部襲撃でほとんどの熱を使い切ってしまった上、今日も車掌の違和感を燃やしてしまっている。

 電車という高速で動く巨大な物体を止められるほど、熱が残っていなかったのだ。


「そうだ、メルローの力があれば」

 四天王が一人、メルローの能力は〝泰然〟

 本人の意思が揺るがぬ限り、何人たりとも彼女を動かすことは出来ない。

 メルローが動かなければ、彼女の乗る電車も止まるはずだ。みんなの視線を一手に浴びた彼女は、小さく口を開く。


「ぐー……」

「「「……」」」


 メルローは寝ていた。


「《おい、起きろメルロー》って、だからピノワール様は能力使用中なんだったあ!」

 ピノが激しくメルローを揺するが、いっこうに目を覚ます気配のないメルロー。


 このままでは、約一分後に電車はホームへと侵入する。そうなれば、人身事故は免れない。

 絶望的な状況に、車内の温度が下がる。

 構成員たちの表情も暗い。

 その時、重苦しい空気を切り裂くかの如く、声を上げる者がいた。


「俺様の出番みたいだな!」

「ブルゴーニュ? お前、一体何を……?」

 シャルドネの疑問に、ブルゴーニュはニッと太陽のような笑みで返し、車両の連結部に移動する。そして――


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 六両目の車両を思いっきり押し返した!


 連結部はぐらぐらと不安定で。しかし、ブルゴーニュはそんな揺れごときに負ける男ではない。

 連結部の床を必死で踏みしめ、顔を赤くしながら全力で電車を押し返す。


 最初はブルゴーニュの行動をぽかんとしながら眺めていたみんなだったが、彼が何をしようとしているのか徐々に分かってきた。

「もしかしてあいつ、電車を止めようと……?」


 そう、彼は自らの〝怪力〟で電車を止めようとしているのである!


「でも、電車に乗ってたら意味な、もが、もぎゅぎゅ」

 ピノの口をシャルドネが塞ぐ。

 ピノが指摘したように、電車に乗りながら電車を押そうとしたところで何の意味もない。同じ速度で前に進んでいるのだから。

 けれど。


「と、ま、れえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」


 ホームはもうすぐそこだ。徐々に大きくなるホームの影を踏むまいと、ブルゴーニュが全力を込める!


 ブルゴーニュの思いに応えるように、電車が少しずつ減速し始めた。

 止まれ。止まれ……!

 みんなの感情が一つになる。


 そしてついに。

 ギ、ッギイッ。悲鳴のような音と共に、電車が静止した。

 一瞬の静寂。後に。


「「「ぃやったあああああああああああああああああああ!!!!!」」」


 車内が騒然とする。みんなで抱き合い、押し合いへし合い。ブルゴーニュの肩を

大勢が叩き、皆で笑い合う。瓶ビールでもあれば、そのままビールかけが始まりそうな様子だった。


 ロマネ・コンティは秘密結社であるが、無用な殺生は好まないのである。というか、みんないい人なのである。

 だから、会議とか云々以前に一人の尊い命が救われたことに、皆の胸は喜びに満ちていた。


「ブルゴーニュがバカでよかったな……」

 本人に聞こえないよう、シャルドネがぽつりと呟く。

「ほんふぉふぃふぁ」

 もきゅもきゅと、ようやく揚がったドーナツを食べながら、ピノが相槌を打った。


 ブルゴーニュの能力は、〝怪力〟

 そしてその能力は、彼が「自分ならできる」と思うかどうかに依存する。


 電車の五両目から六両目を押したところで、同じ速度で進んでいるのだから何の意味もない。

 しかし、ブルゴーニュがそのことに気づかなかったため、怪力の力で物理法則が破壊され、電車を止めることが出来たのだ。


「これで、ようやく会議が始められるな」

 何はともあれ一件落着。シャルドネは盛り上がる皆の注意を引くため、二度大きく手のひらを打ち鳴らす。


「四天王・〝怪力〟のブルゴーニュの尽力により危機は去った。遅くなってしまったが、これより会議を――」


 もしかしたら自分は、永遠に会議の開始を言えない呪いにでもかかってるんだろうか。またしても言い切ることが出来ず、シャルドネは己の運命を呪った。


 彼が口を閉ざした原因。それは向かいの電車に乗っていた。

 電車に乗る、と言っても客席に乗っているのではない。上だ。


「やっと見つけたぞ、ロマネ・コンティ! 今度こそお前らを倒してやる!」

「フィ、フィロキセレッド……!」


 線路に転落した人の救助と、電車の急停止の原因解明のため、向かいのホームに停車中の電車。宿敵、半翅戦隊フィロキセレンジャーが、ずらりとその屋根に並び、秘密結社ロマネ・コンティに向けて指をさしていた。


 そう、ロマネ・コンティの皆は危機的状況を乗り越えた興奮から忘れてしまっていたのだ――自分たちが秘密結社の一員であることを!


 電車を止めた上、大騒ぎしていればそりゃ目立つ。しかも、先日襲撃された際に、四天王は顔が割れているのだ。


「いかにも。ちっちゃい身体にでっかい力! フィロキセレッド!」


 赤い全身タイツの男が、ポーズを決めながら名乗りを上げる。

 青、緑、黄、桃と続く名乗りをBGMに、シャルドネは咥えていた火のついていない煙草を指で挟んで口から離すと、肺の空気を全て吐くかのような深いため息をついた。


 フィロキセレンジャーたちの名乗りが終わり、五人の背後でカラフルな爆発が起こる。

それを見届けてから、シャルドネは本日三度目の台詞を口にする。


「――総員、会議は一時中断。片付け掃討の時間だ」

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「半翅戦隊フィロキセレンジャー」 秋来一年 @akiraikazutoshi

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