「これだから素人は困る」(1/2)

 少し突飛な話をしよう。


 読者諸君も「徹夜」の経験が何回かあるだろう。


 一晩寝なければ頭は混乱し、

 二晩寝なければ幻覚が見え、

 三晩でついに謎の失神を起こす。


 まあ個人差はあるだろうが、

 だいたいこんなものだと予想する。


 好きなことに打ち込んでいる時でも、

 この鉄則からは逃れられない。


 しかし。


 徹夜で小説を書き続けるほど、

 どんどん頭が冴え渡っていく男がいる。


 もちろん現実には存在しないが、

 異世界には、確かにいる。


 これから出てくるのは、

 畢竟そういう男である。





 ニューザード南エリア「商店街ブロック」

 王都入り口と城を繋ぐまっすぐな道路の脇に、専門店がずらりと並んだ様子からつけられた名前だ。

 食料品店に雑貨屋、古本市にカフェテリア。さらに魔法専門店まで。

 すべての需要を満たしてくれる商店街は、まさにニューザードの心臓だ。


 舞台は、商店街から少し離れた小さな家である。古くてぼろくて、誰もが倉庫と見間違える。内装も貧相で、玄関扉とキッチンとトイレ、あとは8畳分のダイニングしかない。


 そこの隅っこのベッドで、一人の女の子が目を覚ました。

 小さな体を起こして、目をこすり、あくびをする。


 部屋は薄暗い。しかしカーテンを見ると下から白い光が漏れている。その明るさで時刻がだいたいわかる。今は午前8時だ。


 女の子はベッドのそばの作業机に目をやった。カーテンとちょうど向かい合う場所だ。

 机の周りは、うずたかく積まれた本の塔たちに囲まれていた。塔は女の子の背丈より高い。ジャンルも、事典やら小説やら、不ぞろいだ。


 しかし、女の子は「机」を見たのではない。


 その机に、血走った目で向かい合っている「男」。

 憑りつかれたように、何かをひたすら書き綴っている「男」。


 それこそが女の子の目的であった。


「……せんせー」


 少し間があって、「せんせー」なる男は手を止め、目線を変えずに答えた。


「トローカ。俺が小説を書いているときは、まず要件を話せと言ったな。なるべく返答を少なくするために」

「うん」

「ひるがえってお前はどうか?俺をただ呼んだだけだ。約束を守ったと心の底から言えるか」

「うん」

「なぜ」

「せんせー、って言いたかっただけだから」


 トローカ、と呼ばれる女の子はニッコリした。

 男はため息をつき、また書き始める。心なしか先ほどより音が乱雑だ。

 しかしトローカの方はどこ吹く風で、しゃべり続けた。


「せんせー、今日は”あれ”の日だね。小説、だいたい終わった?」

「もう少しだ。昨晩はすごく筆が進んでな」

「アドレナリンベータワンレセプターが活性化したんだね!よかったよかった!」

「意味わからんけどそういうことだ」


 トローカの言葉を軽くいなしつつ、男はついに筆を置いた。


「よし、終わりだ」

「わーい!あそぼ!」


 トローカは後ろから男に抱き着く。

 男は知らぬ顔をして、原稿用紙の最後にこう書き加えた。


『ソユーズ・シュリーファー』


 彼の名前である。


 そして、書き終えたすぐ後。


 コンコンコン。

 コンコンコン。


 玄関扉を叩く音がダイニングに響いた。


「……なんだろ」


 困り顔のトローカ。

 反対にソユーズは得意顔で、


「お、来た来た。やっと来た。トローカ、代わりに出てくれ」

「誰なの?」

「出ればわかる」

「はーい」


 トローカは本の塔たちをするりと抜けて台所に入る。

 ついでに部屋の明かりもつける。

 そして狭い通路をひょいひょい進んで、玄関扉を押し開けた。


――――――――――――――――――――――


アリョーナ「…………」


トローカ「こんにちはー」


アリョーナ「…………」


 扉が開いてから、アリョーナはずっと絶句していた。


 理由は簡単。思ってたのと違ったからだ。


 聞いた話ではソユーズ・シュリーファーは大人の男のはず。


 だが出てきたのは――10歳かそこらの女の子だ。

 茶色い髪の毛をサイドテールで肩にかけた、つぶらな瞳の女の子。

 初めて出会った大人の女性を、首をかしげて眺めている。


 かわいらしい。

 だが、思ってたのと違った。違いすぎた。


(あ、あれ?住所間違えましたかね??)

(いやでも何回も確認しましたし、ここで合ってるはず……)

(どうしよう、気まずい。なんて話せばいいのかわかんない)

(せっかく編集者デビューだから、

 ストール着てメガネつけてイメチェンしたのに……)


「ど、どうしましょう……」

「どうしましょうって?」

「ひゃいっ!?ごめんなさい何でもないです……」


 動揺しすぎて心と言葉がごっちゃになってしまった。


 アリョーナは何度か深呼吸した。

 大丈夫、と自分に言い聞かせる。


 気持ちが落ち着いたところで、ようやく名刺を取り出した。


「は、初めまして。アリョーナ・クローバーです。

 今日からソユーズさんの編集者として働かせていただくことになりまして」


「……あー!」


 トローカは目をキラキラ輝かせた。


「そっか!せんせーが言ってた!

 今日、あたらしいへんしゅーしゃさんが来るって!」


 そして、有無を言わさずアリョーナの手を取った。


「じゃ、上がって上がって!

 せんせーまってるから!」


「あ、ちょ、ちょっと!」


 抗議の声は、元気っ子な年下ガールに届かなかった。

 引っ張られるまま、家の奥に入り込んでいく。

 暗い廊下を数歩で抜けてダイニングへ入った。


 その瞬間、アリョーナはふたたび絶句した。


 理由は二つ。


 まず一つは、部屋のあまりの悲惨さだ。

 奥に見える作業机は、何かの儀式のように本タワーに囲まれている。

 その手前のテーブルには、丸めて散らかった原稿用紙の山。

 右の本棚は、もう本が取り出せないほどぎっしり詰まっている。

 脱ぎっぱなしの服。使いっぱなしの木箱が四隅を埋め尽くしている。


 まさに「汚部屋」。

 それもぶっちぎりでグランプリレベルの惨状だった。


 そしてもう一つは、作業机のそばにいる男の、凄まじい美しさだった。

 サラリと長い黒髪、そこから覗くセクシーな切れ目。

 すらりとしたシルエットによく似合う細めの輪郭。

 そり残した無精ひげも、男の儚げな雰囲気とマッチしている。

 もはや男が汚部屋から浮いているようだ。


 この男こそ、「せんせー」と呼ばれる男。

 すなわちソユーズ・シュリーファーに違いなかった。


「せんせー!へんしゅーしゃさんのアリョーナさんだよ!」


「え、あ、はい、ア、アリョーナです……」


 思わず声が上ずってしまった。

 なまじソユーズが無言で見つめてくるから、ますます浮ついてしまう。

 想像よりはるかにイケメンな小説家と出会えて、


(神さま、ありがとうございます……!)


 と、脈絡不明な感謝までしていたところだ。


 しかし。

 その幻想は、わずか数秒で打ち砕かれることになる。


「えー、コホン。改めまして、アリョーナ・クローバーです!この業界についてはまだまだ未熟ですが、精いっぱい勉強しますので、どうぞよろしくおねが……」


「おい、アリョーナ、だったか」


「は、はい?」








「クビだ」







「は、はい?」


 同じ疑問形でも前と後でかなり意味合いが違う。

 アリョーナは事態を飲み込めず、


「え、あの、それってどういう……」

「同じことを二回言わせる人間をこの世では落伍者と呼ぶ。

 だが初回限定サービスでもう一度だけ言ってやる。

 クビだ、アリョーナ。速攻で荷物まとめて国営出版所に帰れ」


 アリョーナはしばらく無言になった。

 そしてようやく事態を理解し、思いっきり顔をゆがめた。


「ちょっと待ってください!

 クビ!?ってなんでですか!?

 まだ何もしてませんよ私!」

「せんせー、インフォームドコンセントを忘れちゃダメだよ?」

「インフォーム……?」


 トローカが発した謎の言語にとまどうアリョーナ。

 ソユーズはそれを完全にスルーして、


「アリョーナ、お前はなぜ俺の編集者に回されたか分かるか?」

「え、それは、私が邪竜討伐のときに魔力を使い果たしたから……」


「違う。俺が頼んだからだ。『退役武官、それも経験豊富な人材を編集者にくれ』ってな」


「え?」


 唖然とするアリョーナにかまわず、ソユーズは続ける。


「俺の連載作品『夕暮れ刻のデーモンロード』は知っての通りハードボイルド冒険小説だ。

 国と国の抗争シーンとか、巨大魔獣との戦闘シーンとかがある。当然だよな」


「『こだいまじゅつ』をつかったシーンもあるね!」トローカが補足する。


「そう。だから、経験豊富な元軍人に話を聞きたかったんだ。

 武器とか魔術とか、想像で書くよりうんとリアリティが出るだろう。

 モンスター表皮のゴツゴツ感をなるべく精巧に書きたいだろう。

 だいたい普通、退役武官つったら老練なおっさんとか寄越すだろ」

「…………」


「だのにお前……」


 ソユーズは全身をなめるように見つめ、


「なんだその、文化系丸出しのストールとメガネは?

 年季も経験値も説得力も感じられん。

 何?最近の軍人はドラゴンとフォークダンスでも踊るの?」

「なっ……!?」


 さしものアリョーナもこの発言は看過できなかった。


「そ、そんなことありません!踊りません!倒します!

 あとこれは伊達メガネです!常用してません!」

「アリョーナさん、今それかんけーないとおもうよ」

「あ……コホンコホン」


 トローカに突っ込まれ、アリョーナはわざとらしくせき込んだ。


「……それに、私にだってそれなりに経験はあります!

 もとは国軍の分隊長を務めていましたし、ドラゴンを狩ったことも!」


 もちろん、すべて事実だ。

 とくにドラゴンの件はアリョーナ自身も誇りにしている。


 しかしソユーズの顔は一向に晴れない。


「信頼できん。お前のような青二才は」

「大丈夫です。任せてください。

 私はじゅうぶん大人です!」

「そのふざけた胸で?」

「ふざけてないです。胸の大きさとか関係ないです!

 というか私けっこうありますよ!Eぐらいは!」

「アリョーナさん、それもかんけーない」

「ぐ……」


 この辺になると、もう先ほどのときめきは消え去っていた。

 さすがに思っていた以上の難物だ。

 今では対抗心と、セクハラ発言への憤怒しかない。


「でも、せんせー」

 ふとトローカがソユーズに向き直った。

「みんな言ってたよね、ドラゴンをたおした『えーゆう』がいるって。あれアリョーナさんのことじゃないかな?トローカ、おはなし聞きたい!」


「…………」


 自分の半分ほどの年齢の女の子にせがまれるソユーズ。

 彼もようやく落ち着いたのか、一度ため息をついた。


「……わかった。聞くだけ聞いてやる。そこ座れ」


ソユーズはテーブルの下座を指さした。


「……はい」


 アリョーナはしぶしぶ座りつつ、

 この男の素性を頭の中で復唱していた。




 ――ソユーズ・シュリーファー。

 王都で彼の名を知らない者はいない、と言われるほどの天才作家だ。


 二年前、彼は流星のごとく鮮烈な文壇デビューをした。


 新人作家の登竜門と呼ばれる新人賞「エグザクト賞」を、史上最年少で受賞したのである。

 がんこな審査員たちがこぞって満点評価をつけ、二位と倍の点数差で勝利。

 厳正な審査のもと選ばれた100人がしのぎを削る賞レースで、異例中の異例である。


 受賞作『夕暮れ刻のデーモンロード』はそのまま大きく羽ばたいた。

 出版すればするだけ売れて、シリーズものの歴代売り上げ記録を大幅に更新。

 読者アンケートではトリプルスコアをつけての1位。

 あげくのはてにそのまま一流月刊誌「クイーン・タイムズ」の看板連載まで勝ち取ってしまったのである。


 ここまでの時間、わずか一年。

 文学史上の奇跡とも評され、中にはソユーズを「小説の邪神」と呼ぶ者もいる。


 彼の作品の購買層は子どもと女性がメインだ。

 とくに女性は作品そのものより、彼の伝説にあやかろうとして、新刊のたびに嬌声を上げている。

 センセーションから一年たった今も、その声は衰えていない。


 そんな男の編集者に、どうして素人のアリョーナが抜擢されたか?

 簡単な話だ。誰もやりたがらないのだ。

 出会って5秒でクビ宣言する作家の相手などーー。




 ――アリョーナは思わず笑ってしまった。

 邪神、そう、まさに邪神である。

 まったくいい意味じゃないところがなんとも皮肉である。



 しかし、トローカの説得もあり、かなり状況は好転してきていた。


「……ふぅむ、1人でカイザードラゴンを、ねえ。

 たしかにただの尻青星人(ケツあおせいじん)ってわけでもなさそうだ」


 淹れたての紅茶を口に含み、目をつぶるソユーズ。

 一方トローカは興味津々に体を乗り出した。


「ね!どれぐらいおっきかったの?

 図鑑だと、お城よりおっきいってかいてたけど!」

「ええ、大きかったですが、私の秘術が功を奏したんですよ!」

「すごいね!アリョーナさん、えーゆうだね!」

「ふふん、そうです!

 私は誇り高きクローバー家の末裔として……」


「あー」

 ソユーズは唐突にさえぎった。

「ところでアリョーナ。

 お前、俺になんか用があるんじゃないか」


「用?」

 アリョーナは少し考えて、

「あ!」

 思いだした。


「そうです!危うく忘れるところでした!」


 アリョーナは手提げかばんを探り、空っぽの封筒を取り出した。


「先生、来月分の『デーモンロード』の原稿、提出してください。

 単行本100ページ分、もう締め切り3日過ぎてます」

「えー!?せんせー、しめきりわすれてたの!?」

「忘れてなかったし、なんなら3日前から書き始めた」

「いけしゃあしゃあと言わないでくださいよ!?」


 ちなみにこの世界での単行本100ページは、おおよそ70000字だ。

 小説執筆に携わったことがある人なら、70000字を3日で書き上げることの異常さが分かるだろう。

 ソユーズの速筆は業界でも知る人ぞ知るところなのだ。


 さて、ソユーズは依然として余裕をかましている。


「まあ案ずるな。今日中にはかならず出す」

「信じますよ?」

「だが……そのために、やるべきことがある」


 ソユーズは言う。


 するとトローカがいきなり立ち上がって、


「あ!じゃあそろそろはじめよっか!」


 そう言って、

 おもむろに服を脱ぎ始めた。


「うんしょっと」



「ちょ何を」動揺して目をつぶるアリョーナ。


「あ、ごめんね!向こうで着替えてくるね!」


 トローカは台所の方へ向かった。


「はぁードキッとしたぁー……」


「童貞か。着替えるだけだ。お前も支度しろ。

 今から俺たちと一緒に来てもらう。編集としての初仕事だ」


「仕事って、何をするんです?」


 ソユーズは腰を上げ、カーテンを開けた。


 サラサラサラ。


 すると日の光が入って、部屋がさらに明るくなった。


 さらに城下町の人々の往来もくっきりと見えた。

 カラフルな石造りの道、シックな木造の店の前を、折々の格好をした人が闊歩している。中には尻尾や獣耳の生えた者や、鎧を着た者、上裸で色黒の男までいる。

 はすむかいの店では鉢巻を巻いた兄ちゃんが手を叩いて客を引いている。

「らっしゃい!」「いいのあるよ!」と声がする。


 活気あふれる「城下町の心臓」がそこにあった。


 ソユーズは大きく伸びをして日光を浴びる。

 そして振り向き、こう言った。



「戦争だ」


―――――――――――――――


「アリョーナちゃん!

 軍、やめたんだろ?だったらおめかししようぜ!」

「アリョーナ!聞いたよ!

 出版社に勤めたのよね?お肌のケアもした方がいいわ!」

「アリョーナっ!

 人間たるもの修練あるのみ!我らが秘伝の増強剤を!」

「アリョーナさん……

 魔導書……いいのあるよ……」


「あ、あの……お気持ちだけで……」


 ソユーズ宅を出て商店街に繰り出して、

 わずか5分でアリョーナは包囲されていた。

 どこに行っても声を掛けられる。

 そしてあれやこれやと宣伝される。


 もはや取り付く島なし。

 少女は涙目だ。


「せ、先生!助けてください!」

「断る」

「そんなぁ!」

「さっさと振り切れ。あと5秒で来なきゃクビだ」


 ソユーズは数メートル先で急かす。


 ちなみにソユーズには人が群がらない。

 これが覆面作家のいいところだ。


 さしものアリョーナもクビは避けたい。

 「ごめんなさい、急いでますので」と振り切ってきた。

 落胆の声がしたが聞こえないふりをした。


「やればできるじゃないか」

「やればできる子なので!」

「皮肉で言ってんだよ」


 たがいに恨み言を言いつつ、二人は人ごみを潜り抜けた。


「……ところで先生」

 アリョーナが質問する。

「これからどこに行くんです?戦争って言ってましたけど。というかトローカちゃんがいないんですが、どこです?」

「質問が多い」

「えー?いいじゃないですかー!」


 ソユーズは辟易したように頭を掻き、


「これから行く場所と、トローカが待ってる場所は同じ。

 戦争とは小説を書くため必要なステップで、少々手荒なことをする。

 で、戦争のための道具が、今から行く場所にあって……」


 ソユーズは立ち止まり、右手の店の看板を指さした。


「ここが、その店だ」


 アリョーナは指の先に目をやる。


 そこには「一級危険魔剤店」とあった。



 魔剤店の中は薄暗く、床はぎしぎしと軋む。

 戸棚にしき詰められたカラフルな謎の発光液体が、灯りだ。


 前方にカウンターがあり、その手前にトローカが立っている。

 扉を開けるとトローカはすぐ手を振ってきた。


 3人そろったと同時に、

 奥から店主のゴツい男が出てきた。


「……来やがったか、偏屈作家」

「依頼したとおりだ。出すもん出せ」

「その前に払うもん払え」


 ソユーズは懐から袋を取り出す。

 ひっくり返し、中身を一気に出した。


 金貨、それも20枚。


「え……」


 アリョーナは驚嘆した。

 金貨20枚は、国軍分隊長の月謝と同じ値段だ。

 ちなみに100枚あれば家が建つ。


「あいよ、毎度」


「せ、先生、こんなお金をどこに?」

「半分は経費もう半分は自腹。食費や住居費を削って補ってる」


 アリョーナは思わずうなずく。

 執筆のために生活費を削る姿勢は納得できなかったが、「この男ならやりかねない」と思い直した。


 しばらくして主人が戻ってきて、

「注文の品だ」

 と魔剤のビンを置いた。


 魔剤はこの世のどんな色にも似ていなかった。

 ただぎらぎらと、妖艶に発光していた。


 ラベルには「エンバルザック」とある。

 アリョーナはその名に見覚えがあった。



「これ……爆薬ですよね?」

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