幼馴染と幼馴染の小競り合い
次の日、俺は紬と学校へ向かおうとすると、家の前でリリアナが待っていた。
「おはようございます、ユート」
「……リリアナ、おはよう」
「じゃ、行きましょうか」
リリアナは、グイッと俺の腕に手を伸ばし、絡めてくる。
「お、おい」
「良いじゃないですか。ワタシたち、婚約者してるんですから」
「してない」
「ケッコンを認めてくれるまで、ワタシは話しませんよ☆」
「リリアナさん、ほらほら離れた離れた」
強く絡んできたリリアナを俺から引き離したのは紬。
思い切り力で引き離すと、紬はリリアナさんを軽く睨みつけた。
「リリアナさん、結人困ってるじゃん」
「これは照れ隠しですよ!」
「いや絶対違うし」
「もー、紬さん。嫉妬しないで貰えますか?」
「は? 嫉妬じゃないし」
「ワタシが現れた時から対抗心バチバチじゃないですか。そんなにワタシに居なくなって欲しいんですか?」
「そんな事言ってないじゃん」
「紬さんには、止める権利なんてありませんよ。だって、部外者ですからね」
「部外者って……」
「だってそうじゃないですか。これは、ワタシの家とユートの家のお話なんです。紬さんには、関係ないでしょう」
「それは……」
「おいリリアナ。それ以上はやめろ。流石に俺でも怒る」
「それはすみませんでした」
流石に今日のリリアナの挑発は度が過ぎていた。
そしねリリアナは、俺の手を握ると
「じゃ、行きましょう」
と走り出す。
「ちょっと、リリアナさん待ちなさい!」
◇
教室にて。
「おい、リリアナ」
「どうしましたー? ユート」
「離れろ」
「えー、十分離れてますよ?」
「密着してるんだよなぁ」
リリアナは、俺の席と机をくっつけ肩が当たるほど近くへ来ていた。
紬は別クラスなので、流石に授業中までは目が届かない。
「ケッコンするんだから、良いじゃないですか」
「だから、ケッコンしないって」
「ケッコンしてくれなきゃ飛び降ります」
「おい待てそれは流石に冗談でもやめろ」
「すみません」
「……なんで、そんなに拘るんだよ。他に方法はいくらでも」
「無いですよ。……ケッコンじゃなきゃ意味がないんです。パパは、昔から言ってました。『リリアナの花嫁姿が見たい』と。だから、ワタシはそれを叶えたいんです。そのためには、ケッコンしないと行けないじゃないですか」
「そうやって結婚するもんじゃないだろ結婚ってのは」
好き同士が、夫婦という形で一緒にいるためにするものだろう。
俺とリリアナは、そこまで至っていない。
「ユート、確かにそれも一つです。しかし、昔からお見合いや政略結婚など、望まないケッコンもありましたよ。それでも、その中でも夫婦として幸せを掴んできた人も多くいるとワタシは思います」
「だとしてもな……」
「ユートは、ワタシが嫌いですか?」
「そういうわけじゃない。ただ、こんな形で結婚したくないだけだ」
「そんなに、紬さんが好きなんですね」
「……そうかもな」
◇
昼休み。
「ユート、お弁当作ってきたんです! 食べてください?」
「なんで?」
「胃袋掴む作戦です!」
「……まあ、それくらいなら良いけど」
俺とリリアナは机を合わせると、昼ごはんを食べ始める。
リリアナの作ってきた弁当は、ご飯に卵焼きやウィンナーなどおかずの詰まった王道なお弁当。
「いただきます」
俺がそのお弁当を食べようと時、後ろから手が伸びてきて卵焼きを奪っていく。
「……悔しいけど美味しいわね」
「紬さん……それ、ユートのためのものですよ」
お弁当を持った紬が教室へと来ていた。
紬は近くの椅子に座ると、俺とリリアナの輪に入ってくる。
「リリアナさん、確かに美味しいけど。……結人にはもっと甘い味付けが良いよ。あ、結人。代わりに私のお弁当の卵焼きあげるね」
「教えていただきありがとうございます。今後、将来の糧とさせてもらいますね」
「そんな将来、来ないと思うわ」
「あらあら。嫉妬しちゃって紬さんどうしたんです?」
「嫉妬じゃないよ? 幼馴染で家族の結人が変な女の子に捕まりそうになってたら教えてあげないと」
「なら、ワタシも許嫁に近づく家族を名乗る女の子にはしっかり教えてあげないとですね」
二人は、ニコッと笑いながら見つめ合う。
牽制しあい、ふふふと笑って楽しそうな空気を醸し出そうとしているが、それが帰ってギスギス感を強めて空気が悪い。
「ユートは、ワタシのご飯の方が好きですよね?」
「長年親しんだ私の料理の方が口に合うと思うけどね」
「「どっち?」」
二人は、お弁当おかずを箸に取ると俺の口へと寄せてくる。
両方食べて勝敗を決めろって事ですか?
俺はひとつずつ口へ放り込み咀嚼。
そして。
「どっちも美味しい。……が、紬の方の料理が好みだな」
「ほらねー、言った通りだよ」
「なんでも甘くすればユートの好みになるっていう浅はかな考えですね!」
「それで喜んでくれるんだから良いじゃない! 私だって甘い方が好きだし」
そこからも、二人の言い合いは続き、肩身の狭い昼休みだった。
◇
そして午後。
俺は疲れからか、凄く眠たかった。
この騒動による疲弊。
一瞬でも考えるのをやめると、意識が飛びそうな感覚。
「ユート、大丈夫ですか?」
「うん? 大丈夫だよ」
「顔色が悪そうです」
「大丈夫」
「ほんとうに……」
プツンと、何が切れる感覚。
「ユート? ユート!? ユート!」
リリアナの俺を呼ぶ声だけが聞こえる。
そして、俺は意識を失った。
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