幼馴染で許嫁
「……おい待て、リリアナどういう事だ?」
俺とリリアナが結婚する……?
いったい何故そんなことになってるのだろうか。
リリアナは、下を俯き申し訳なさそうにする。
「今まで黙っていてごめんなさい。ワタシのパパとユートのファザーの取り決めで、ワタシはここに来たんです」
「父親同士の取り決め?」
「はい。ワタシとユートをケッコンさせる約束しちゃってるんですよ!! やっばいです」
「はぁぁぁぁぁあ!?」
何でそんな大事な事言わなかったんだ。
「今までは嘘ついて誤魔化してたんですけど……誤魔化しが効かなくなってきましたね。一緒の家に住んでる事にしてたんですけど、流石にバレました」
「ごめん、頭が追いつかない」
「それもそうですよね……急ですし。ひとまず、遠くへ行って作戦会議する時間を」
「あ、結人とリリアナさん」
後ろから、紬の声がした。
「紬、良い所に。今から少し時間ある…………か?」
俺は振り向いて固まった。
それを見て紬の後ろに立つ男性は、俺の方を見て口角を上げる。
「おお結人! 久しぶりだな! ……会いたかったぞ我が息子よ!」
「遅かったですね……ハハハ」
◇
「いやー、美雪さんお久しぶりです。うちの息子がいつもお世話になっております」
「いえいえ、こちからこそ助かってますよ」
「昔からお姿が全く変わってないですね。……いや、さらに艶が増しましたかね?」
「あらあらそんなお世辞良いんですよ〜、まあ? 確かに最近は美容に気を遣ってるんです」
「そうなんですか! こんな素敵なお母様の元で息子も住まわせてもらって大喜びですよ」
「うふふふふ」
「あはははは」
「…………なあ親父。さっさと話を進めてくれ」
美雪さんと親父の社交辞令合戦にも飽きてきた頃、俺は会話を遮り話を進めようとする。
夏目家リビングでの、家族会議。
参加者は親父、美雪さん、俺、リリアナ、紬。
リリアナは頭を抱え、紬は髪の毛をいじっている。
「全く、結人は冷たいな〜、数年ぶりの再会だぞ? もっと喜んでほしいんだが」
「ああ、普通の再会なら喜べたかもな」
リリアナから、あんなこと聞いた後に出会っても素直に喜ぶことは出来ない。
「その様子じゃリリアナちゃんから、話は聞いてるんだね?」
「今さっき聞いたよ」
「そうなのかい。リリアナちゃんには初めに言っておくように伝えていたんだがね」
「……それはすみません」
「ああ、別に謝る必要はないよ。人生というのは、イレギュラーが重なるものだからね」
この場の全員が今回の話の内容を共有していると確認し、先に進めようとした親父だが、1人事情を、知らないやつがいた。
紬は、俺の肩をちょんと叩き耳打ちをした。
「ねえ、なんでこんな重苦しい空気なの?」
「おや、紬ちゃんには話してないのか」
美雪さんは、わざとらしく手をポンと叩き
「あー、紬には言うの忘れてました」
と、ニコリとする。
「そうか。……じゃあ、先に教えておいた方がいいね」
親父は、コホンと咳をすると、今回の会議の内容を告げる。
「実はね、結人とリリアナちゃんは近々結婚する事になってるんだ」
「…………え?」
紬は、ポカンと口を開け硬直する。
「前々から少しずつ準備は進めていてね。まだ確定ではないが、一年以内には、挙式を挙げたいと考えてるよ」
「え? え? え?」
「だから、それに伴って。結人とリリアナちゃんは私の仕事先のアメリカへ来てもらおうと思っていてね」
「俺は、まだ納得してないぞ。……というか、その話は初めて聞いた」
結婚だけじゃなく、アメリカに行くだと?
次々と知らない情報を語る親父。
そして親父は、俺を鋭い目で睨みつける。
「結人、残念だがお前に拒否権はないよ」
「なんでだよ! それはアメリカなんかに行かないし、結婚もしない」
「確かに急な話になったのは申し訳ない。……しかし、お前の我儘に付き合ってやれるほど私も暇じゃないんでね」
「俺とリリアナの意志は無視かよ!」
親同士の勝手な取り決めで、人生を左右されてたまるか。
「…………結人、お前は勘違いしている。この話に反対してるのは、今のところお前だけだよ」
「は? ……俺だけ? リリアナもだろ」
俺がリリアナの方を見ると、リリアナは下を向いていた。
「おい、リリアナ?」
なんで、顔を上げないんだよ。
「……ユート。こういう流れでケッコンを認めさせるのは嫌でした。でも、こうなったら仕方ないです。ワタシは、結人とのケッコンに賛成ですよ」
「え……?」
リリアナが、賛成?
なんで?
俺は言葉を失い立ち尽くす。
何がどうなってるのか、分からなかった。
「美雪さんにも話は通してある」
……なるほど。
俺以外、みんな親父側なんだな。
俺がリリアナと結婚?
そんなの、急に言われても……。
第一、俺は……。
「じゃあ、これで決まりだね。というか元々決まっていたことの確認だったが。それじゃあリリアナと結人は」
「あの、待ってください」
親父が話し合いを終了しようとした時、1人だけ声を上げた人がいた。
さっきまで状況についていけず上の空で、この話し合いの場で最も部外者になるその人物。
「……紬ちゃん、どうしたんだい?」
夏目紬は、このおかしな縁談に意を申し立てた。
「私は、その結婚に反対します」
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