第14話武術大会
武術大会当日、
当然、修行中の者たちは実力を出し切ろうと朝から浮き足立っている。武術大会で実力が認められると、仙洞門五氏の養子として迎えられる事もある。普段はだらしない格好の者でも、今日ばかりはちゃんと身だしなみを整えていた。
その中でも際立って美しいのが
「
流石の美しい所作で、
辰亮緯も妹のように大切にしている
(絶対、一番気合が入っているのは
女性たちの嫉妬や羨望を一心に浴びても動じない
自分にはできないことだ。
辰亮緯は、弟の
年頃の女性たちは、「
「弓術部門に出場する者は、集合」
最初は弓術から行われる。武術大会は自分が得意とする部門に出場すればいいので、マリエッタは剣舞部門だけの出場だ。
弓術は人気種目のようで、
マリエッタは、
弓術部門は術が使える者と使えない者とで競い合うルールが異なる。
術が使えない者は、遠方に設置された的をいかに正確に射るかだ。
術が使える者は、動く的に弓を射る。その的には色々な術が施されていて、相剋する属性を付与した矢でなければ的に刺さらないようになっていた。
瞬時に的の属性を判断し、それと反する属性を矢に付与する。そこで初めて、的に当たる条件が揃うのだ。
ひと目見て的の属性を判断するというのは難しい。ほとんどの者は、属性を判断する術を自分にかけ、その後、矢に属性の術をかけと手間をかけている。
しかし一番際立ったのは
的の属性の判断から矢の属性の決定まで流れるような動作だ。
流れる水のようなしなやかさと、美しさに観客たちから歓声が上がる。
「一位、
弓術部門が終わり、優秀者の名前がよばれる。
競技が終わり、マリエッタの隣に戻ってきていた
「
仲睦まじい二人に、一人の男性が近づいた。
「お久しぶりです。
「
「君は?」
「マリエッタ・ドロレアと申します」
「ああ。君が例の、炎術に目覚めた子だね。君の噂は聞いているよ。楽しみにしている」
剣舞部門の開催となり、マリエッタと
マリエッタが用意したのは、
マリエッタは化粧もしている。
公爵令嬢だった頃は、アレクセイに恥をかかせないため、家の名誉を傷つけないため、と負の印象を周囲に持たれないようにするために化粧していた。
だが、今回は違う。
少しでも自分たちの剣舞が上手に見えるようにという思いだ。
服を着替え、化粧したマリエッタを見た
前の演技が終わり、会場中から拍手が沸き起こる。
「次の番だね」
マリエッタは生唾を飲み込んだ。
「緊張しているのか」
「ちょっとだけ」
「俺も」
「
「始まるぞ」
手を離して寂しいと、思う気持ちに気がつかないふりをして。
出だしは思いの外上手くいった。
マリエッタと
風向きが変わったのは、マリエッタと
マリエッタが本気で打ち込んできたのだ。
マリエッタは不敵な笑みを浮かべ、
「目が赤い!」
観客の一人が叫んだ。
気がつかれたと、
踏み込んできたマリエッタに
札がぼっと燃え上がって灰になるとマリエッタの瞳は、空色に戻っていた。
マリエッタは、周囲の状況を把握できていないのか不思議そうな顔して
「気を失ったフリしろ」
「なんで?」
マリエッタの問いかけに
観客から黄色い悲鳴が上がる。
なんとか「そういう」演目だと誤魔化せたようだ。
ロマンスものを彷彿とさせる演技に会場から大きな拍手が沸き起こった。
マリエッタと
「マリエッタ、君は炎術の才能があるようだ。うちの息子との縁談も考えておいてはくれないか」
「おや、辰家の貴公子と呼ばれた君が、そこまで感情を表に出すのは珍しいな」
「マリエッタ、行くぞ」
「え?でも」
「
「そんなに泣きそうな顔しているのに?」
「私、わかりやすい?」
マリエッタは、
涙がこぼれ落ちそうだ。
本当は、マリエッタは泣きそうだったのだ。「結婚」「婚約」にいい思い出はない。どうしても処刑された時のことを思い出す。
情緒が不安定になったことを
少なくとも、マリエッタはそう思っている。
「うん」
気がついたらマリエッタの手首を掴んでいた。いつも冷静であろうとする自分には、考えられないことだった。
——これは、自分のものである
暗い感情が心の底から湧き上がり、マリエッタを連れ人混みを縫うように足を進める。
マリエッタをひと目のないところへ連れて行きたい。
マリエッタの目の色が赤く変わることを大勢の人に知られてしまった。今は、注目を浴びない方が良い。
自然に足は、六角堂へ向かった。
六角堂には人がいなかった。御堂自体は、鍵がかけられていて中に入ることはできない。二人は、六角堂の入り口の階段に座った。
「流石に六角堂には、人がいないのね」
「マリエッタ」
「話してもいいと思ったら、教えて欲しい」
「
「うん」
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