第126話

(今日、あの人は大阪にいないんだ)


そう思うだけで不安になって来る。夜には帰ると聞いているのに、もう会えなくなるんじゃないかと心配になってくる。


(何時くらいに帰ってくるのかな……)


(食事はどうするのかな……。聞いておけばよかった……)


頭の中は古城のことでいっぱいになる。


(は! 私ったらママが手術控えてるっていうのに、何と言う親不孝者。ママ、ごめんなさい……)


花音は自分が母親の手術の心配よりも古城のことばかり考えているのでビックリした。


(今朝のこと、ママに相談してみようか?)


そう思い花音はカバンからスマホを取り出した。

(でも……、ママをぬか喜びさせることになったら……)


結局、花音はママに話すのをやめた。

(ママ、ママは私のことをいつも一番大切に思ってくれているのに……出来の悪い娘でごめんなさい)


母が病を得てからは、ずっと一緒だった。これまで花音を一人にしていた時間を取り戻すように、母は花音との時間を大切にしてくれている。


でも母の体は日毎に衰え、歩く事すら出来なくなり、顔からは赤みが消えて、日に日に痩せ細って行く姿を見るのが辛いのも正直な気持ちだった。


“これ以上悪くなったらどうしよう” “ママが逝ってしまったらどうしよう”


そんな状況を古城が変えてくれた。

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