第125話

まもなくして、車は花音の会社の近くまで来た。


「すみません。そこを右に回った所で止めて頂けますか」


古城の言葉に、車は花音の会社の前で静かに止まった。


「有り難うございます!」


花音は車が停まると同時に、会長、古城、そして運転手さんにお礼を言った。


「お母様の手術、無事に終えると良いですね」


花音が降りようとした時、会長が優しく声を掛けた。


「はい。ありがとう御座います」


花音は車を降りると、もう一度丁寧にお礼を言い、古城達が走り去るのを見送った。


(結婚するつもりですって言ってくれた! 嬉しい! 夢みたい! 夢じゃないよね……)


花音は自分の頬をつねってみた。


「いた!」

花音は自分の頬をさすりながら、


「夢じゃない! 夢じゃないわ!」


花音は嬉しくて飛び跳ねそうになった。


(でも、本気なのかな……。私に恥をかかせないように気遣ってくれたのかも……そうだよね。朝一緒にいるところを会長さんに見られたから……ボディガードのお話があるといっても周りから見れば変だもの、私、また迷惑かけたのかも……そう考える方がしっくりくるもの)


そう思うと、古城のことがまた遠い存在になって来るのだった。


(その上、古城さんは、私が思ってた人とは大分違ったみたい。会社で一番偉い会長さんとあんなに親しく話してるんだもの、びっくりしちゃった)


いろいろ考えているうちに花音の頭の中はますます混乱するのだった。

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