第110話

食堂に行くと、入り口の所にまで人の熱気と、おいしそうな匂いがしてきて、花音は思わず、古城を見上げて笑った。


テーブルには白いクロスがかけられていて、中華料理やお寿司の等の和風料理、それにイタリアン、色とりどりの料理が綺麗に盛られて並んでいる。


スープも多種類あり、デザートも揃っている。数名のスタッフがいて、常にプレートを取りやすい状態に保っている。

病院で働いている人達が、スパゲティやお寿司をおいしそうに頬張っている姿が、とても楽しそうに見える。



古城に気付いたケータリングの責任者が挨拶に来た。


「古城様、有難うございます」


「こちらこそ、急な注文でしたのに引き受けて頂いて感謝しています。若い人達はよく食べるので、大変でしょう」


「何をおっしゃいます。ご安心下さいませ」


「有り難うございます。狩野さんにはいつも無理な事ばかりお願いして、申し訳ありませんが宜しくお願い致します」


丁寧に礼を言う古城に、狩野が言いにくそうに見せて言った。


「古城様、こんな時に申し訳ないんですが、1週間後に私共のホテルで開かれる関東建設機械様との合併合同パーティのメニューに目を通して頂いても宜しいでしょうか」


「全て狩野さんにお任せします」


「宜しいのですか?」


「もちろんです。予算面で不足のある場合は連絡下さい」


「お土産の方は……」


「そちらもお任せしたいのですが」


「お土産の方は、当ホテルで高い評価を得たケーキをご用意いたします。きっとお気に召していただけると思います」


「よろしくお願いします」


「こちらこそ、古城様にはお心を掛けて頂き、感謝いたしております」


深々とお辞儀をすると、狩野は持ち場に戻って行った。


「うまそうだね。僕達も食べに行こうか!」


「はい!」


楽しそうに食事をしているみんなの様子を見ている花音に、古城が言った。

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