第109話

「花音、食事は?」


「今日はね、病院で食事を頂くの!」


「え!」


不思議そうな顔をする母に、花音が嬉しそうに言った。


「ケータリングと言ってね、病院にお料理を持ってきて下さってるんですって!」


「へ~? ママも行きたいわ!」


母が目を輝かせて言った。

「駄目、駄目、ママは寝てないとアンディ先生に叱られるわよ」


「花音は、意地悪ね」


「ごめんね。ママ」


「クス! 冗談よ! 早く行ってらっしゃい」


花音の母は、嬉しそうに笑いながら、古城に礼を言った。


「いつも有り難うございます。もし入用がございましたら、私のカードを使って下さいね。お願いします」


母はベッドの枕の下に置いた、バッグからカードを取り出して、古城に渡そうとした。


「お気になさらないで下さい。そんなに大したものではないのです。気取らないものなので…」


古城が、少しはにかみながら 言った。


「じゃ、お母さんのお言葉に甘えて、食堂に行ってみようか」


「はい。じゃ、ママ、食事に行ってきます」


「行ってらっしゃい」


「食事がすんだら、また、ママの顔を見に来るね」


花音は、母に手を振りながら病室を出て行った。幸せそうに古城の後に続く花音を見て、母は娘の恋が叶うことを願わずにはいられなかった。

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