第96話

「お前も楽しそうだと思ったけどなあ…」


アンディが古城を肘でつついた。


「まあ、今は良い思い出だね。でも、ジャングルで迷ったときは死ぬかと思ったなぁ」


古城がちらりとアンディを見る。


「ああ、食糧も無くなって、あれはヤバかったよ」


アンディが渋い顔をした。


「でも、過ぎて見れば、みんな楽しい思い出になるから可笑しいよね」


「そうだろ? 行って良かっただろ? あの時だって……」


「それより、アンディ、お前、俺に何か話があったのでは?」


「ああ、お前にじゃない。花音ちゃん。今日、泊めて貰っても良い?」


「え?」


花音が面食らっていると、古城がアンディのおでこをピンとはじいた。


「お前は俺のマンション使えば?」


「なんでだよ。賢は花音ちゃんのボディガードなわけだろ? 花音ちゃんのママにボクにも任せてほしいて言ったらOkしてくれたよ」


「お前ね……」


「ほんとは、病院に泊るつもりだったけど、スタッフがみんな優秀でその必要はなくなってしまってね。手術に備えて今夜は寝るよ」


「そうか、良かったじゃないか!」


「うん。この手術は成功するよ。一人一人の能力も高いし、それぞれの専門に対する情熱も凄い。香川教授を中心に、麻酔医の東郷教授、それに看護師、メンバー全員が毎回チームを組んでいたようにスムーズに話が進んでね」


「そうか、それは良かった」


「うん。とういうわけで」


アンディがにっこり笑って言った。

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