第88話

レクサスは、オシャレなイタリアンレストランの前で止まった。

車を降りると、淡い光が降り注ぐ様に花音達を照らす。


中に入ると天井が高く、それこそ中世のイタリアを思わせる様な周囲の壁の雰囲気に、ゆったりとした大きめのテーブルと椅子が程良い空間を保って置かれていた。


花音は目を輝かせて言った。


「素敵なところですね!」


「気に入ってもらえて良かった」


彼は静かにほほ笑んだ。


「いらっしゃいませ」


古城に気づいて、レストランの支配人が一礼した。古城と同じくらいの年齢に見える。


「帰ってきたのか?」


近くまで来ると、親し気な口調になった。


「うん」


古城が頷くと、支配人は花音に親し気な笑顔を向けた。


「庭が見える静かなお席が、御座いますよ」


「あ、ありがとうございます」


案内された席は奥にあって、庭園が一望できる位置にある。ライトに照らし出される石や、植物の陰影が幻想的に見える。


「とってもキレイ!」


「そうだね」


古城はにっこり笑うと、支配人に目を向けた。


「何にする? 賢 今日は可愛いお嬢さんと一緒だから、ワインでも付けようか…」


「車で来たから」


「そうか……。じゃ、ワインは次にするか……」


支配人が花音の方に向き直って、キレイにお辞儀した。


「何か好きな物が御座いましたら、イタリア料理の他にも、仰って下されば出来る物が御座いますので…」


支配人の畏まって言うのを見て、古城が苦笑した。

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