第78話

朝の光とパンの焼ける香ばしいにおいに誘われて目を覚ました。いつの間にか眠っていたらしい。花音がキッチンで忙しそうに朝食の用意をしている。


「おはようございます! アンディ先生はもうお出かけになったんですね」


「うん。今夜から病院に泊ると言ってたよ」


それを聞いて花音は申し訳なく思っていると、


「心配しなくても大丈夫だよ」


古城が花音の頭を撫でた。


「古城さんにもアンディ先生にもどう感謝すればいいのか分かりません」


古城は微笑むとテーブルを見た。


「いい匂いだね」


「あ、朝ごはんにしませんか? コーヒー、どうぞ。あの、え~と…それから昨日の夜はごめんなさい」


花音は真っ赤な顔をして下を向いた。ベッドに運んだことを言ってるらしい。花音は次の言葉が見つからず困っていると、チャッピーが二人の間を通り抜けた。


「あっ、チャッピー!」


花音が呼ぶと、早く食べようというように飛びついてきた。抱き上げようとすると、するりとかわし、走って行ってしまった。



「顔を洗ってくるよ」


チャッピーが戻って来て、洗面所に行った古城の後を追いかける。それを見て花音はクスっと笑ってしまった。


(いいなぁ、チャッピーは……)


花音はチャッピーの気持ちをストレートに伝えるところが羨ましいと思った。


古城が戻ってくると、チャッピーも着いてくる。


「おいで、チャッピー、朝ごはんだよ」


花音がボウルにドッグフードを入れて床に置くが、古城の足元でお座りしている。


「あはっ、おいしい匂いがするから、これはいらないと言ってるんだね。分かるよ。チャッピー」


チャッピーを抱き上げながら古城が言った。

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