第73話

「さ、もう遅いから休んだ方がいい……」


「はい。それでは、お休みなさい」


「おやすみ」


「チャッピー、おいで」


花音が呼んだが、古城の膝の上で寛いだままだ。


「僕が見てるから」


「はい、おやすみなさい」


古城の言葉に頷いて、花音は部屋に戻って扉を閉めた。それを見届けて古城が口を開いた。


「なあ、アンディ、かなり難しい状態だけど大丈夫か?」


「まあ、花音ママのこと? 実際に診てからだけど、お前が心配するくらいだから、心構えはしているよ」


「手術はいつ?」


「香川教授が5日後でどうかと打診して来ている」


「スタッフの予定を考えると、そうなるよな」


古城が頷いた。


「麻酔科医や器械出しの手配、教授が感謝していたヨ」


「いや、オレは教授が指名した人を集めただけだよ。それに外科医は決まってるんだからね」


「麻酔科医は藤沢教授だってネ。一緒に手術をしたことあるよ」


「聞いたよ。お前に会いたがっておられたよ」


「でも、今、東京だよね? いつこっちに来れるの」


「二日後に……」


「そうか。楽しみだな。それにしても、あのメンバーが理想だ。よくスケジュール調整できたネ」


「それはみんな香川教授の教え子だったからだよ。快く引き受けてくれたよ。お前が執刀医と言うのもあると思うよ」


「有難いよな。みんな多忙なのに」


「本当に感謝だよ。なぁ、手術に掛かる時間は? 大手術だけどあまり時間はかけられないだろ?」


「5時間。花音ママの体力を考えると、それが限界だな」


「5時間……」


古城が心配そうにつぶやいた。


「花音ママの体はかなり弱っているのが不安要素だけど、教授の話によれば、娘さんの為に生きようとする力が強いと聞いた。生きる意志が一番大切なんだよ。生きたいと強く望むことこそが、一番大事だからね。まあ、任せとけ。必ず成功させるから心配するな」


「ああ、頼りにしてる」

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