第67話

「親父さん、術後、どう?」


珈琲をアンディの前に置きながら古城が聞いた。


「ああ、安定してるし、心配ないと思う」


もうアンディの機嫌はなおったようだ。


「手術されたのか?」


社長が驚いたように言った。


「ガンが見つかって……」


「ガンって血液検査でわかるんだよな」


社長が心配そうに聞いた。


「そう……で、手術をなかなか受けなくて困ったヨ。医者のボクが早く手術するに越したことないって言ってるのに、この件が終ったらあの件が終ったらと言ってネ。いつも偉そうなのに、怖かったんじゃないの? 大手術ってわけでもないのに……」


「いやぁ、そうは言ってもなぁ……。お気持ちは分かるなぁ……」


社長は共感するのかウンウンと頷いた。


「親父の場合は切った方が早いのに……なかなかで、賢が説得してくれたんです。あの頑固者を説得するとは、さすが一流だな」


「何言ってんだ。お前は、」


古城は苦笑した。


「親父、お前に逢いたがっていたぞ。今度、会いに行ってくれよ」


「分かった」


「ちょうどいいな。賢は十日後NYに行くんだ」


社長がいいことを思いついたように言った。



「あ、NY……例の会社の合併か?」


アンディが聞いた。


「お前、医者のくせに耳が早いな」


社長が驚いたように言う。


「何でも知っておかないとネ」


「そうだな、お前はいずれ経営する側になるからな……」


「いや、医者として生きて行くって親父に言ってある。ボク、経営者には向いてないからネ」


「なんだって?」


社長が驚いたように目を丸くした。

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