第15話

外に出てしばらくすると、雨がまた激しく降ってきた。さっきよりも激しく……


「まいりましたね。家はどこですか?」


「中津です!」


「送りましょう」


「え……、でも、い、良いんですか!」


黙って頷く彼の優しい横顔に心が温かくなっていく。


「同じ沿線なんですよ」


「え?」


「僕は江坂なんです」


(信じられない。こんなことって……、雨の神様、感謝します)


花音は心の中で、そっと手を合わせた。


「また傘の事で心配かけるといけないので、家の近くまで送ります」


爽やかに笑うと、傘を広げた。一歩、道路に踏み出すと足はすぐに濡れてしまった。靴の中にも入って来る。彼は花音を雨から守るように傘を差しかけてくれている。


「あなたが濡れます」


「大丈夫ですよ」


一つの傘に入って、夢にまで見た大好きな人とこうして歩いてる。信じられない出来事に、花音の胸は熱くなって来るのだった


(このままずっと、こうして歩いて行きたいな。どこまでもどこまでも……)


激しい雨の音も聞こえない。容赦なく吹き付けて来る風の冷たさも感じない。ただ心の中は温かかった。


淀屋橋駅に着いても、すぐに傘を折畳めない程の強い雨。自分に付き合ったためにと思うと申し訳なくなる。地下への階段の中ほどまで、雨が吹き込んでいた。


駅のホームで行きかう人のほとんどが急な雨で濡れていた。


中に入ると、花音の肩の雫をポンポンと払ってくれた。彼の手の触れた部分が熱かった。彼の肩が濡れている。


花音に傘をかけてくれていたからだ。花音は慌ててハンカチで肩をぬぐった。驚いたように花音を見たが、「ありがとう」と笑ってくれた。


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