第4話
自分の席に戻ると、二宮紗子が話しかけてきた。
「ねぇ、伊藤さん。今付き合ってる人いないんでしょ? 小林さんどうよ? あの子、絶対伊藤さんのこと好きだと思うわ」
彼女は、度々、小林を勧めて来るので花音は困っていた。
この課には女子が花音のほかに3人いるが、彼がいないのは花音だけだからだろう。
二宮紗子は、次期課長の噂のある営業部のエース、肥田さんとお付き合いしていて、みんなから羨ましがられている。
「ね、伊藤さん、一度、食事くらい一緒に行ってみたら?」
「いえ、あの……私、…………ごめんなさい……」
“お断りします”の一言が出てこない。
二宮は女子社員の中で1番美しい人だ。それだけに自分に自信もあるようで押しも強い。
「もう伊藤さんもいい年よ。 そんなこと言ってると、いい人捕まえられないわよ。小林君、真面目だし性格も良いもん。
それにね、実家が造り酒屋なんだそうだけど、お兄さんが継いでて、親の面倒を見なくて済むらしいの、お勧めよ」
「あの……、でも……」
付き合うのなら好きな人がいい。勧められたって困ってしまう。
「私、心配してるのよ。伊藤さんは、真面目で仕事はきちんとしているし、それに、課長からも彼からも頼まれてるのよ。誰かいい人いないかなって……。
それに、伊藤さんって男の人と話すの苦手でしょ?
ずっと、幼稚園から私学で女子校育ちだから免疫がないのよ。世間話のひとつもしないもん。表情もかたいし……
だから、ああいう大人しくて真面目な人がいいと思うわ。私から話してあげてもいいし。ね?」
二宮はニコッ!としてくれたが、花音の気持ちは重くなって来た。
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