第13話 賞賛の陰に、威嚇あり

 中酷共産党中央委員会は湖北省党委員会書記(省のトップ)蒋超良氏の後任に周近併国家主席の側近、応勇・上海市長を、武漢市党委員会書記(市のトップ)馬国強氏の後任に山東省済南市党委員会書記、王忠林氏を充てる人事を発表した。明らかな更迭人事だ。周近併にとって、隠蔽出来る範疇が狭まれてきていた。世界を巻き込むパンディミックの責任が自分に向くかが気掛かりで仕方がない。側近を配することで、内部からの不満を押さえ込むのに必死だった。しかし、側近を配したことで失態は、自らの失態となるまでは考えが及んでいなかった。金と権力でどうにかなる。それが本質を欠いた主導者の実態だった。

 新型コロナウイルスの死者や感染者の数が突然、急増したのは世界からの疑惑を払拭するための言い訳、辻褄合わせだった。中酷は、上から目線、被害者意識で独自の基準から国際基準に近づけたものだと主張した。メッキが剥がれれば、さらにメッキを塗り直す、それが中酷共産党のお家芸だった。


 エドワードは、ムハメドに世界の反応記事を添付した。


●新型コロナウイルスの病名は「Covid-19」


 世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は2020年2月11日、新型コロナウイルスの病名を「Covid-19」と公式に命名。新型コロナウイルス肺炎の流行を「非常に重大な脅威」と位置付け、国際社会に協力を呼びかた。先に研究を進めていた国際ウイルス分類委員会コロナウイルス研究グループは、新型コロナウイルスそのものについて、SARSの姉妹種「SARS-CoV-2」と名付けいた。

 既に研究現場では新型コロナウイルスの配列データベースの共有が始まっており、混乱を招く恐れがあった。

 通常、ウイルスの名前を付ける際、「主要症状」(呼吸器症状、神経症状、水様性下痢など)が示されていて、更に「重症度や季節性などの追加情報」(進行性、若年性、重症、冬型など)を含む。また、病原体が既知の場合には、ウイルス名なども加えることが推奨されていた。

 SARSは、中酷を連想させるため「SARS-CoV-2」というウイルス名ではなく「Covid-19」という病名を普及させようというテドロス事務局長の配慮が働いた。中酷にはSARSが流行した時に容赦なく、叩かれたというトラウマがあり、WHOにも叩きすぎたという反省が感じられた。


 新型コロナウイルスが見つかるまで、人に感染することが知られているコロナウイルスは6種類しかなかった。うち4つは軽度の風邪を起すもの。その他は、2002年以降、動物ウイルスに由来する重度のSARSと中東呼吸器症候群(MERS)が確認されていた。


●SARSと新型コロナウイルスの比較。


 [ロンドン発]新型コロナウイルスが中酷から世界に広がっている問題で、中酷の国家衛生健康委員会は14日、中酷国内で1716人の医療従事者が感染し、いち早く異変を医師仲間に知らせた武漢市の李文亮医師(34)ら6人が死亡していた。

 湖北省の医療従事者の感染は1502人にのぼり、まさしく「医師は兵士、病院は戦場」(人民日報)になっている実態を浮き彫りにした。中酷共産党の報道管制、情報統制が感染者と濃厚接触せざるを得ない医療従事者に感染を広げてしまった。

 元世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局長の尾身茂・独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)理事長は13日、日本記者クラブで行われた記者会見で中酷を礼賛するWHOのテドロス・アダノム事務局長に苦言を呈した。

 エチオピア出身のテドロス氏は中酷の武漢市や湖北省の初動の遅れが感染拡大を招いたのは明らかなのに「中酷はよくやっている」と称賛を繰り返し、政治的に中立であるべきWHOの伝統と信頼を損ねた。尾身氏の発言は次の通りです。


 2002~03年にSARS(重症急性呼吸器症候群)があった。それまで感染症は日本で言えば厚生労働省の管轄。SARSで香港などへの経済的なインパクトが強く、あれ以来、国際社会は厚労省の枠を超えて各国の首脳、外務大臣が同じことを繰り返すまいと強い関心を持つようになった。2003年から2年半はSARSと同じことをいかに繰り返さないかという議論しかWHOでは行われなかった。国際保健規則が改正され、決まったことが一つある。どうも普段と違うような状況があれば病原体や原因が分からなくてもすぐにWHOを通じて国際社会に報告することだ。

 中酷もその議論に十分参加した。SARSの時は中酷政府の意図的な情報非公開が半年間にも及び、WHOが2003年4月に香港や広東省への旅行延期勧告を出した。それに比べれば今回、中酷の周近併国家主席の対応は早かった。しかし、中酷はSARSを起こした同じ国。国際保健規則を巡る議論を湖北省の衛生担当者が知らないということはあり得ない。昨年12月初旬から(原因不明の感染例の報告が)もっとあったはずだ。初動が遅れたということについて中酷はSARSで反省をしているわけだから。

 こういう全ての感染症の大流行に共通する要素は、初動の遅れ。西アフリカのエボラ出血熱も現地にキャパシティーがなく、初動が遅れた。今回も武漢市があれだけの事態になったというのは、明らかに初動の遅れがかなりの原因とした。


●テドロス発言はWHOトップとしては残念

 テドロス氏から“中酷はよくやっている”“他の国のために一生懸命やっている。心から感謝しています”という発言があった。どこの組織にも欠点はある。WHOにも政治的な圧力は勿論ある。本部と地域の事務局長も選挙で選ばれているから各国の意向は理解しているはずだ。WHOは基本的には、健康を守るために設立されたテクニカルエージェンシー。政治的、経済的な考慮はしても最終的にはテクニカルに行うべきだ。1948年の設立以来、テクニカルなところではこの組織は信頼できるという関係が確立されていた。

 テドロス氏の発言は、今の周近併はよくやっていますよ、ただし残念ながら武漢市の対応は遅すぎて国際社会は重く受け止めており、反省すべきですと、これぐらいは最低言わないとWHOのトップとしては不適切だ。

 WHO は各国の優秀な人材が周りを固めているから、テクニカルな勧告は彼の発言と違って、イメージが悪くなったので早く是正しないと考えているはず。折角1948年から営々と築いてきた信頼感がなくならないよう早く軌道修正する必要があった。

 WHOをテクニカルエージェンシーとして各国の上にいるわけではないが、政治的中立の立場で言うべきことは言った方が良い。初動の遅れでSARSに続き感染を拡大させた罪は重いという結論だった。


●「中酷の行いを認めて何が悪いのか」WHO事務局長


 テドロス氏は、新型コロナウイルスの感染拡大について「世界にとって非常に重大な脅威 」と警告する一方で中酷について「もし、中酷の並外れた対策が取られていなかったら、国外でもっと感染が拡大していただろう」と中酷礼賛を繰り返す。

 12日の記者会見でも「WHOは中酷の面子を守るためよくやっていると称賛するよう中酷政府から圧力を受けているのか」と質問され、テドロス氏は「全ゲノム配列決定の公開や武漢市封鎖など中酷のしたことを認めて何が悪いのか」と反論した。

 世界全体で見ると感染者の99%が、死者の99.8%が中国本土に集中。中酷本土では感染者の81%が、死者の95.4%が湖北省に集中している。テドロス氏は「感染拡大防止のため都市を封鎖した武漢市は英雄的だとイギリスの理事は発言した」と自分の発言を擁護した。事務局長選を争ったイギリスのデービッド・ナバロ元国連事務総長特別顧問は、英紙フィナンシャル・タイムズに「テドロス氏は非常によくやっている。彼は中酷と協力しなければならない。中酷を非難しても何も始まらない。テドロス氏はボタンを掛け違えないようにと必死だ」と皮肉に評価した。

 テドロス氏は、記者会見でこう続けした。「中酷人女性がドイツから上海に戻った後に感染が判明した際、直ちにドイツに知らせて感染拡大を防いだ。われわれは真実を語る必要がある。中酷がWHOに称賛を求める必要などない。周近併は自ら感染拡大防止の先頭に立っている。こうした政治的リーダーシップは称賛に値する。全ての加盟国が中酷を称賛している。今は特定の国に烙印を押して非難している場合ではなく、力を合わせてウイルスと闘うことだ」 パンデミック(世界的な大流行)を防ぐには感染の99%を占め、情報量が圧倒的なエピセンター、中酷の協力が欠かせない。大国になった中酷を面と向かって非難するより持ち上げた方が賢明だというのがテドロス流のようだ。 

 テドロス氏は2017年7月にWHO事務局長に就任後、ジンバブエの独裁者ロバート・ムガベ大統領(当時、故人)をWHOの親善大使に任命。しかし、国際的な抗議を受けて、すぐに撤回した。世界保健総会にも中酷の政治的な圧力を受け、3年連続で台湾を招待しなかった。権威主義的な支配と人権侵害で批判を集めているルワンダのポール・カガメ大統領が、世界保健総会で医療政策の成功をアピールする基調演説を行ったこともある。しかし、WHO事務局長のとんでも発言は何もテドロス氏に限ったことではないようだ。

 米外交評議会のスチュワート・パトリックは、外交雑誌フォーリン・アフェアーズのブログで次のような懸念を示していた。「香港出身のマーガレット・チャン前事務局長は、北朝鮮の医療制度は医療スタッフが不足していないため、多くの途上国の羨望の的だと話したことがある。結局、WHOの意思決定は自由を制限する恐れがある加盟国主導のプロセスだ」とパトリックは指摘した。


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