学区対抗戦

「新一――お前、まじで会ってたのかよ」

 次郎も困惑した声を上げる。仁美は、無言で新一をじっと見つめていた。

「ああ、会っていた。今回の戦いに、どうしても必要なことだったんだ」

「だからってお前――おれにも黙っていくことねーじゃねぇかよッ」

 次郎は、純粋な怒りと共に、悲しみを覚えた。新一とは、兄弟同然だと思っていたし、実際にそうだったからだ。幼い頃から、親に悩まされ続けた二人――そして、これから命を賭けて戦いに望む二人――。その絆は、新一と次郎には理解できることはないが、少なくとも、次郎は新一のことを仲間だと思い、兄弟だと思っていた。

「私達にも、言えないって――こと?」

 仁美が悲しそうにそう呟くと、新一はそれに頷いてから、俯いた。重い沈黙が続く。四人の息づかいだけが響く教室。長い沈黙の後で、新一は小さく言った。

「今は説明できない。でも、信用して欲しい。おれには――おれ達にはもう、これしかないんだ――」

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