【第19話】神の見る世界 創世記=ジェネシス《怒りで『神』喰っちゃいました☆てへっ☆》(※神の『自分』語り)

――――世界にはもともと僕だけだった。僕が全てを創り、全てを管理し、全てを壊す。物語の作者のように……そう、僕が世界で唯一・・作者・・だったんだ。

 でも、見てくれる人が居ない。反応が返ってこないというのは作者にとってことさらにさみしいものさ。

 そして僕は読者・・を創ることにした。あくなき探究心・・・を持った僕だけの読者を……結果・・、あの女が生まれた。あの女は貧欲過ひんよくすぎた。貧欲すぎて、僕の創る物語だけでは満足できなくなった。

「もっと! もっと欲しいでありんす!」

 いつしか、『創る』は『作る』となり、作業じみていく。でもあの女の『オカワリ』を求める声は留まらない。僕はノイローゼになった。

 そして『人間・・』を作った。彼らは人生という『物語』の素材の生産プラントのようなものだ。そして人間の物語をプールする集積場しゅうせきじょうとして『ブンシュの海』を作った。そしてあの女を管理人・・・という名目・・で放り込んだ。あの女は満足していた。だってそうだろう。だまっていても物語がどんどん提供・・されていく、物語浸モノガタリづけの日々をおくれるのだから。まあ、割と結構、強引・・に物語を回収していたようだがな。まあ、そんなこんなで、あの女はブンシュの海の回遊者・・・となったわけだ。




――――神の語りが終わって、俺は得も言われぬ激情に突き動かされていた。

「なんだよっ! 何なんだよお前等っ! 俺たちゃテメエラノ家畜・・じゃねえぞっ!」

「いや、喰う価値も無い素材はゴミ屑以下・・だよ」

 至極当然とした神の物言いに、俺の感情は爆発・・した。

「てんめえええーーーーーーー!」

 渾身の力を牙に変えて、神の喉元に喰らいつく。

 そして、神に喰い付いた時、神の儚い呟きが聞こえてきた。

『王者とは常に孤独なのだよ……でもさあ、もう疲れちゃった』

『なあ、『わかって』くれただろ? だから『かわって』くれよ』

 神は力なく笑った。

「上等だ! じゃあ、テメエの孤独ごと俺が喰らってやるよ」

『じゃあ、あの女をやしなってあげてね』

 挑発じみた捨て台詞をくらいつつ俺は神を喰らう。そして、この世で唯一・・創作者・・・となった。

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