【第14話】決別?
「マスター、しっかり」
目を醒ました俺は浜辺に横たえられていた。そこには俺の名を心配そうに呼ぶ文子と
「やっと、目覚めたか」
「おいっ!
「おちつけっ!」
飛び起きながら文子につかみかかる俺にヨシナリさんはピシャリと告げる。
「あそこはブンシュの海の最底辺、未練まるけの作家が
「何が言いてえんだよっ!」
「まさか、お前がよもやあんな墓所に堕ちるとはなっ! 情けないぞ」
だが、心底がっかりした表情で告げるヨシナリさんに叫びかかる。
「そんなこたあ、かんけえねえだろ!」
「お前は何がしたかったんだ?」
どこまでも冷たい言葉に想いが爆発する。
「なあ、ヨシナリさん、作家ってなんなんだよっ!」
俺は全てをヨシナリさんにぶつけた。
「じゃあ、あの時の質問をこちらからしようか?」
「そもそも『
いきなり
「自分で作る意志のない『プレイヤー』だろっ!」
吐き捨てるように言葉を放つ、
「ちがうなあ」
ヨシナリさんはここに来て初めて唇の端をつり上げ、邪悪な笑みを
「『
諦めたように語るヨシナリさんの言動が信じられなかった。
「違う、違う、作家は全てを救える!」
「そんなわけ無いだろっ!」
一喝され、縮こまる俺。
「お前は楠のところで何を見てきたんだ?」
挑発するようなヨシナリさんの言葉が突き刺さる。俺は二の句を継げないでいた。
「思い上がるな」
「作家が【救えるのは】『せいぜい
そう言われると、あの『二人だけの世界に
「その上でどこまで出来るのかを追求するのが作家だろ」
「いきなり全てを救おうなんてのが無理なんだよ」
だが、すげなくバッサリやられる。
「あらかた、取り込んだサッカ共に影響されたかあ? ゴミムシがっ!」
ヨシナリさんの視線に
「……あんたの
自分の身体が震えているのが分かる。俺はヨシナリさんに嫌われたくない。そう思っているが、それがもう、取り返しの付かないところまで来ていると気付いてしまったから。
「だからあんた俺に『
でも、ヨシナリさんからのとどめの一言を喰らうのを分かっていても言わずにはいられなかった。
「そうだ、私はサッカを許すつもりなど
「それに、分かるだろ」
「お前はミサキちゃんを殺しているんだぞ?」
「許しや救い、その
正論という名の現実を突きつけてくる。
「くそう、ちくしょう、このやろう」
「じゃあ、どうすりゃよかったんだよおおおおおおー!」
俺の想いをしれっと受け流し
「王ちゃんって、いつも『
「ほんと、王ちゃんって『味付け濃い』よなあ、ほんと、楽しませてもらったよ」
さもおもしろおかしく答える様子が不真面目すぎて血管がきれ、そうだ。
「でもなあ、だからこそ、『人間』そして『作家』に
「そう、思えた。ありがとう」
いきなり褒められて
『感情で書くな』
目の前のヨシナリさんは180度違うことを言っている。ソレが何故か新鮮で、救われた気がして、俺は泣いていた。
「うっ、うっ」
「いい、面になったじゃねえかあ、王ちゃんよお」
「これで試験は終了だな」
「へっ?」
「やっと全てを託せる
ヨシナリさんはそう言って、心からの
そしてすぐさま、ヨシナリさんの目つきが変わる。
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