【第10話】ヤスフミとヨシナリの青春時代 幕間《中庸からの補足》(※王者兼道視点)

――――最後の方は一方的に近いヤスフミの感情の吐露とろになっていたが、やがて語り尽くして満足したのだろうか? 耳障りな捨てセリフを残し、ヤスフミは完全に俺の中へ溶けていった。

「なんて過去だ」

「同感です。ミサキ先輩の過去がこんなにも凄惨せいさんだったなんて驚きです」

「その姿で言うな」

「申し訳ありません」

間接的とはいえ、先輩の過去を垣間見た俺は吐き気を押さえるのに精一杯だった。

「……気持ち悪い」

「ミサキ先輩がですか?」

「んな訳ねえだろっ、クソ野郎がっ!」

そんな俺達を意地悪く見つめる影ひとつ。


「我が補足説明してやろう」

気付けばすぐ傍に中庸ちゅうようの姿があった。

「たあーんと召し上がりな」

「あの孫娘の絶望・・をなあ」

「アッハハハ、何言ってんの? ……ふざけんじゃねえゾっ、中庸おおおおおーーーー!」

怨敵おんてきと相対した武士の如く怒りのままに中庸を喰う俺。すぐさま目の前に広がる光景。これはどうやら中庸の記憶らしい。そして俺は、先輩の真実の過去を知る。


「これは、我自身のの記憶だ」

 喰う前に聞こえた中庸の懺悔ざんげの言葉がやけに印象に残った。

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