【第4話】囲まれた王者(コトノハマでの戦闘)

「どうしてこうなった!」

 悪態あくたいだってつきたくもなるさ。

飽話世界之黙示録プレイヤーズ解禁・・! ってなわけで(文子を使って不正)アクセスして適当にサッカ共を狩っていたらいつのまにかブンシュの海の外苑がいえんにあたるだだっ広い砂浜『コトノハマ』のへとやって来たわけだが。オッ! める度に乳白色にゅうはくしょくの砂浜がいい音で鳴く……いやこのメロディに重なって幻聴げんちょうよろしく歌のような言葉の羅列られつも聞こえてくる。このからだと、思うんだけどなぁ……これがウワサに聞く『コトノ』か……おおっと、それぞれどころじゃねぇな。

俺は辺りを見回す。と、周りは数百・・もの『プレイヤー』に囲まれていた。というか、全員から、文子シリーズが放つ『』を感じる。

「どいつも、コイツも、俺達を『囲み』やがってぇ、よぉっ! ちっとは、『ルール』つーか、『マナー』ってぇ、もんをっ、守りやがれぃってぇんだぁーーーーー!」

「それこそ『ヒトとして』の『ルール』を『逸脱いつだつ』している、マスターに言われる筋合いではありませんけどね」

 さらに悪態を放つ俺のコトバに重ねられて、さらりと放たれた文子の精神攻撃・・・・。良かった。文子の毒舌は健在だ。まだイケる! お互い、ココロまでは『折れて』いない!

「ったく、そんな元気でげんきんなセリフが出るくらいなら、ちっとはこの『局面・・』を打開する『』を考えやがれ!」

「それがおいそれと出てくれば苦労はしませんのですよ。だめだめな主人ですこと!」

「オホホ」

 と、それどこの悪徳令嬢あくとくれいじょうだよっ! と言わんばかりの大根芝居・・・・を展開する文子ふみこを尻目に俺は辺りを見渡して対策を練ろうと努める。


 十数メートル間隔を開けて俺達を包囲する人間・・の集団は皆、紅々こうこうとしており、幽鬼ゆうきの軍団かくやというほどに殺気さっきいている。

「なんかあの不気味だよな?」

「おそらく強制的に意識を操られているのでしょう。瘴気しょうき正気しょうきを失うノリです♪」

 俺の疑問に文子は淡々とだじ解説を付けると思いきや、ダジャレをぶっこんで来るとはやるな!

「いいじゃ~ん、絶好調・・・じゃ~ん!」

「いいから説明続けますよ!」

 えっ! 逆ギレ?

 文子はむくれつつも、主に敵の仕様・・に関して解説を続ける。

「私達の視界に入る敵性人間たちは全員、『文子Ver.3.00』のユーザーです。Ver.1.00から文子のAI要素を排除し『自分の頭の中にある妄想を電脳世界ブンシュの海具現化・・・する』という『機能・・』に一点・・特化した仕様・・となるVer.2.00からさらに改良を重ね、『言霊技術シャーマニエンス』内のブラックボックスの解析が完了することで、よりダイレクトに人の持つ妄想を具現化出来、かつ同端末(文子Ver.3.00)を使う者同士の間で『妄想()の共有・・』ができるという、まさにトンデモな仕様・・となっているVer.3.00は…………」

「おーい、文子、おーい、戻ってこい」

 なんか情報の海にどっぷりかって現実に戻ってこない文子を揺さぶって呼び戻す。醜態しゅうたいさらすもタダでは起きない彼女は。

「トンデモ仕様な共感力・・・につけ込まれているか、Ver.3.00を操る専用のプログラムとかが有るのかも知れません。……だってあそこに」

 朗々ろうろうと状況分析と共に原因を導きだし。勝利の一手いってを指し示す。その指の先には。


 おそらくこの集団のボスと思わしき、魔物マ・モ・ノがこちらを見据みすえながら悠々ゆうゆう滞空たいくうしていた。

 大型バスを縦に三台繋げたぐらいの体長をほこる巨大なタツノオトシゴにチョウの羽を無理やりくっつけた見た目だが、顔はドラゴンもかくやというほどの流線形りゅうせんけいイケメンフェイス!虹色のウロコは光を反射してキラキラとかがやいている。

 さらには両肩から首の後ろ側にかけて左右それぞれ計2本のエネルギーケーブル(目と同じく紅々こうこうとしており、どこか血管……大動脈だいどうみゃく想起そうきさせられる)? がはしっている。

 そして美しい歌のような鳴き声を周囲に飛ばしている。これで周りに影響させてんのか?

 だが、その鳴き声はどこか苦しそうにも聞こえるし、何より周りのヤツらと同じく『』だけが異様に紅々こうこうと輝いて、今にも俺達を射殺さんとでもしているような殺気・・をまったくなんでもってもこれっぽっちも遠慮・・なぞせすに放ち続けている。

「あの真ん中の敵は厄介そうだな」

 だが、俺達との距離はわりと空いている。300メーターは離れていそうだな。これならまだ少し余裕が……。

「違う。マスター。肩! 肩! 肩!」

 文子に指摘され、魔物マ・モ・ノの肩に目を向けるとそこには。

「人間? しかもスーツ着てるし」

 そんな俺の疑問もそこそこに、魔物の肩? に乗る人間? から拡声器よろしく大仰な声が放たれる。

「どーーーーうーーーー? これが我々MUSTシステムの誇る『対サッカ撃滅げきめつシステム』……通称、『S・K・D(サッカ・キラー・デストロイヤー)』よっ!」

 なんだよ、そのロボットの秘密兵器みたいな頭の悪い中二病くさい名称は。

俺が心の中でツッコんでいる最中もソイツは朗朗ろうろうとまくしたてる。

「このしくみはねぇ、周囲に敵対……つまりある程度の驚異きょういのある『サッカ』を検知すると発動する『文子Ver.3.00』のユーザーたる『第三世代作家・・・・・・』ないし『我々が改造・・したサッカ化に失敗した成り損ないの魔物マ・モ・ノ』が有する機能よ! 性能が何十倍にも跳ね上がるんだからぁ!」

「まぁ、もっとも、サッカは周りにもいるし、あなたたちにターゲットをロックオンさせるためにこの魔物マ・モ・ノが発する鳴き声を利用してはいるけどね!」


 やけに過大評価気味の説明を蕩蕩とうとうと語る頭の悪そうな女。だが、自ら弱点を披露してくれるなど、こっちにとっては利点しかない。

「あの魔物マ・モ・ノの所まで行くぞ文子! いけるか?」

「がぁ~、てぇ~んっ、しょうちのすけぇ~♪ 『ブースト』」

 俺に抱きついた文子がスキル名じみた名を叫ぶやいなや、俺の体はワイヤーアクションよろしく唐突に『跳ねた』。ヤツのもとに向かって。

「……ちょっ」

 だが速度は別次元! おそらく音速は超えている。

「『ペーパーナイフ』展開~♪」

 俺にだけ聞こえる超早口で斬罵刀ざんばとうを俺の拳に展開すると。

「はいっ、終了~♪」

 俺の手を磁石みたいに操り、あっというまに魔物マ・モ・ノのケーブルを斬り落として見せた。

「……あっ」

 と女が言うか言わないかのところで、魔物が大きく身震いし、女は振り落とされる。


 そして、刹那!

 魔物マ・モ・ノ咆哮ほうこうした!

 超音波ちょうおんぱが辺りを蹂躙じゅうりんする。

「たっ! ざけやがってぇー!」

 咄嗟とっさにペーパーナイフを振り抜く。

超音波ちょうおんぱ常温じょうおんだ!芳香ほうこうのある咆哮ほうこうどの方向ほうこうへ?」

「おいおい本当に絶好調・・・だなぁ文子ぉおぃ」

 一瞬で俺の背後で音波の嵐が吹き荒れる。文子もずいぶんとバグってるし、音波に弱いのかもしれないな。

 ……っていう思考しこうをしてる合間に、周りにいた人間たちは吹き飛ばされ、地に付して、一律戦闘不能になっていた。


 そして唐突に。

「ありがとう。たすかったよ~」


 やけにおっとりしたいかにも『おじさん』って感じのコトバで魔物が俺達に語りかけてきた。

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