◆第三部◆ ~作家の生~

【第1話】『サッカ』と戦うゲーム解禁(一般参加『プレイヤー』の視点から)

作家・・は死んだ』


「ひゃっはー! レア話ゲットー!」浜から上がって進軍してくるサッカという化け物共から人類の生活圏たる陸地りくちを守る設定・・。正に人類の守護者ガーディアン

「大層、大仰おおぎょうな設定だなあ」

 思わずごちる分には自分・・もこのゲームに慣れてきていた。


 数年前から作家の自殺、失踪が相次いでいたが、いまや、作家は居なくなってしまったといっていい。宝くじのキャリーオーバーの如く新人賞の賞金は桁違いに上がっていく……だが、応募者は十数分の一にまで激減・・し、デビューしたら一年も経たない内に自殺及び失踪してしまう。

 尚更、新人賞応募者は減っていく。悪循環だ。

 そして『新しい物語が生まれない』閉塞感・・・は、読者達の不安感を煽り、かつて創られた物語をを愛でる集団さえ生まれる状況が生まれた。物語を買い漁る傾向はさらに顕著になり、『新作』の触れ込みだけで、小説が売れてしまう歪んだ世の中になった。

 そしてその中でとあるオンラインゲームに注目が集まった。


『『飽話世界之黙示録プレイヤーズ解禁・・! 広大なフィールドで思う存分サッカ狩りを愉しもう。異空間でのバトルは想像を絶する楽しさだゾ』

『『飽話世界之黙示録プレイヤーズ』の内容、プレイヤー空間=文章の海から飛び出したモンスター=サッカを浜辺で撃退しよう』

『撃退したモンスターは『話の断片だんぺん』を落とすぞ。集めて物語・・を完成させよう』

『フィールドのはしではユーザー同士で完成した物語・・の交換が出来ます。【文子Ver.3.00】ユーザー同士・・なら、アナタの頭の中の妄想(物語)の交換・・も可能です』

 まあ、あれだ。『討伐とうばつ』と『収集』と『パズル』要素をバランス良くまとめたゲームだ。

 モンスターを倒す要素、話の断片を集める収集要素、集めた断片を上手にまとめるパズル要素、全てがゲーム好きの感性・・を揺さぶる作りに成っている。まさか文章作成で有名だったあのメーカーからこんな凝った中毒性・・・のあるゲームがリリースされるとは思わなかった。一時は潰れたというウワサさえあったほどなのだ。


 討伐の最中さなか、ちらりと浜の奥(フィールドはし)を見やる。けっこうな数のプレイヤーが休憩もとい、『自分の頭の中のモノガタリ』ないし『討伐したサッカの素材から組み立てたモノガタリ』を和気藹々わきあいあい交換・・して交流・・している。討伐をさっさと終わらせて早いとこ自分もあそこに混ざりたい。

 はやる気持ちを抑えていたら、前方に山のように巨大なドラゴンが立ちはだかる。最近自殺した有名作家そのままの名を持つサッカ……恐らくレアキャラだっ! 案の定、討伐後に回収した『話の断片・・』はかなりいい物だった。

「ひゃっ、ひゃっひゃ」

 嬉しさから思わず上げた下卑げびた笑いを浮かべた刹那せつな、自分の意識・・は刈り取られた。




「――――ふうっ」

 先程喰った人間の意識を反芻はんすうしながら、はため息を漏らす。

「まさかこんなことをすることになるとは……」

「言ってる暇はありません。とりあえず行動」

「わあーったよ!」

 先輩のを被った文子の不躾ぶしつけな物言いに俺は乱暴に言葉を返す。

「先輩をよみがえらせるためには、より多くのタマシイ(人の物語・・)が要るのでしょう?」

「ったくどうしてこんな事に……」

 俺のぼやきは誰に知られること無く消えた。

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