【第21話=第二部最終話】『飽食の時代』ならぬ『飽話の時代』の到来。『自分でつくる』心意気のヤツがいなくなり、この国は腐った。(作家ヨシナリ氏のコトバより抜粋)

――――ヤスナリさんの記憶を巡る旅が終わった時、ヨシナリさんの家に居た。ヨシナリさん曰く、何でも人々の記憶と共に言葉が辿たどり着く終焉しゅうえんの浜(コトノハマ)に打ち上げられていた所を拾ったそうだ。そんな場所に出入りできるヨシナリさんも大概たいがい謎だが、それ以上に。


 ふと疑問がよぎる。

綺麗キレイ言葉・・」って何なんだろうな。

 『ミツバチ』達の報われない運命、サッカ達の悲哀、全てがという『ただ一人・・読者・・』を成り立たせるために機能・・存在・・している。

「なんて、なんて理不尽・・・なんだ……」

 力なくうなだれる俺。

「これが理不尽か? 今の人の世とどう違うね」

「ヨシナリさん……何言って」

「読者はいつどこだれ構わず残酷・・だよ」

 うろたえることしか出来ない甘い俺に、ヨシナリさんは過酷・・現実・・を突きつけるのだった。

「なあ、ヨシナリさん。読者ってなんなんだろうなあ……」

「『飽食ほうしょく』の時代ならぬ、『飽話ほうわ』の時代・・到来・・よう。この国はすっかりくさっちまった。『自分・・でつくる』心意気・・・のヤツがいなくなっちまったんだよ」


 同じようなことを言っていた先輩・・のことを、思い出した。

 先輩も読者を得体の知れない恐ろしいモノとしてとらえ、精神・・を病んでいった。


 大仰おおぎょう解説・・の後、ヨシナリさんは俺に向き直り告げた。

「なあ、王ちゃん。おめえさんはどうするんだい?」

 は何も答えられなかった。でも、これだけは言える。

「俺はただう(読む)だけですから」

 ……そう、喰欲しょくよくのままに。


「プレイヤーめ!」


 ヨシナリさんの誹謗中傷ひぼうちゅうしょうが聞こえた瞬間・・、ミツバチの意識・・が俺のナカに根を張った気がした。


 今まではサッカをった時はそいつらの記憶・・が残る程度・・だったけど、コイツの場合は『う』。意識・・というか明確・・意志・・を感じるんだ。


『ああ、お前のナカって心地ここちいいな。色んな感情・・が渦巻いててさ、気に入ったゼ。死ぬまでも死んでからもクソみてえな毎日だったけど、なんか少し癒されるわ。まあ、よろしくな。しばらくは眠るけど、機会・・があったら顔出すわな』


 と、一方的に告げて意識・・が消える。

 アイツらしいと言えばいいけど。



 そして文子ふみこはと言うと、いつにも無くしおらしくしていた。

「申し訳ありません。マスター」

「メイを追い詰めたあの時、私がもっと油断をしていなければ、マスターをあのような危険にさらすこともなかったでしょうから」

 相当へこんでいるのか、絞り出すように出された文子ふみこに俺は素直・・に言葉を返すことにした。




「お前のことを許すつもりは無い。だから壊れるまで利用することに決めている」

 これは嘘偽うそいつわり無い俺の意志・・だ。だが、弱音・・も吐く。

「だがなあ、それにもまして思うことがある。孤独・・っつーのはこたえるなあ、とさ」

 俺はしたがえているようでいて、実は文子ふみこ依存・・しているのだろう。

 だが、どうしようもない。

先輩・・を無くした一人・・だ。……一人・・は『辛い』。だからお前が必要・・なんだよ」

 そしてぼそりとつぶやく。

「(代用品・・・とはいえ……なぁ)」

 文子は聞いていないだろうと思いたいがそれならそれでいいとも思う。俺はそれだけのことをアイツにしているんだろうから。


「(まあいいさ……どうせ落ちるのは地獄・・だ)」


 全てが終わり、落ちた地獄には先輩が待っていてくれるのだろうか?

 そんなどうしようもなくご都合主義的つごうしゅぎてき誇大妄想こだいもうそうひたり、自分がいつにもなくおしゃべりだなあと感じつつも言葉・・を発していく。

 多少は建前・・も混ぜるつもりだったが、もうそのまんま本音・・吐露とろになっていた。

 そして、そんな自分に生まれているわずかな迷いを、文子ふみこに対して芽生えた甘辛あまからい想いを振り払うように言葉をつむいでいく。

「それなりに頼りにしているんだぞ、相棒・・。……一人・・意外・・としんどいからな」

 文子ふみこの方は固まったまま、微動びどうだにしていなかったが、やがて、すっきりとした笑顔・・で告げた。

「マスター、改めて想いました。私はあなたと出会えて良かった。そして、あなたとげたいという欲求・・が絶え間なく・・からきだしています」


 そして、俺は文子ふみこ純真じゅんしん笑顔・・ながめながら、そういえば、ここまでの告白・・って先輩・・にもしたことなかったなあと、少し後悔・・内包ないほうしたため息を返したのだった。




 そして俺のサッカとの攻防戦・・・はひとまずの収束・・むかえるのだった。

 だが、『プレイヤー』としての日々・・は終わらない。





――――そして数年の月日が経った。

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