【第9話】オイオイオイ『サッカ』の皆さんは、人の寿命さえも『仕込み』ですかぁ? ヤラセMAXの現場に絶望した!(『ミツバチ』の記憶3)


「アン様は最高だ」


 メイに目をつけられ、その場に居られなくなった自分はアンの部署に配属・・された。

 配属早々、先輩と称してとある中堅・・サッカ(下位サッカの中でも特に立場のあるヤツら……といってもモブだなコイツは)が自分に話(といっても己の過去・・を飾り立てた自慢話)をしてきた。


「いいか、俺はあの人に目をかけられている。メイの野郎みたいに俺達の可能性をつぶさずに伸ばしてくれるお方だ。サポートもここぞというタイミングでしていただける。人間の可能性・・・を引き出すのはサッカの仕事だ! とまで言うあのお方の意志・・無駄・・にするわけにはいかないのだ」


「夢見がちな幻想・・を見る女の子の前に現われて、その恋を応援・・する。だが俺の知るモノガタリの中で幸せな日々はただ退屈・・でつまらないだけだ。だから恋が成就・・した暁には男の浮気を意図的に起こして翻弄ほんろうし、病魔も意図的・・・に引き寄せて短命・・に仕立て上げせしめた」


 ここまで素材のたる人間の人生に奇跡を起こして干渉した例は非常にめずらしく、サッカ界でも珠玉の素材・・となったらしい。


「『余命よめいのあるよめぃ』コードネーム=作品名としてなんだぞ」


 得意満々にしゃべる中堅サッカはどこか無理をしているかのようなテンションだった。つーかタイトル、ダジャレかよっ!


 そこに、はなしを後ろで聞いていたと言わんばかりにアンが姿を現す。

「頑張ってるかい? ミツバチ君。とりあえず、僕のところは実験・・部隊なんだよねえ。ほら、『ミツバチ』とかはさあ、『余命よめいのあるよめぃ』とか創っちゃってさあ、それがもーうける、受ける、きゃきゃきゃ」


 ダジャレにウケてんのか自分自身に酔ってんのかもうすでにアンのテンションは少し壊れかけていた。

 そして言われた『ミツバチ』も、アンに心酔・・してるがゆえ相変あいかわらず弱った女の心に寄り添って、観察・・干渉・・し、人生をねじ曲げてパンチの効いたシチュエーションを回収・・しようとするのだろう。


「なんだかなぁ……」

 俺のつぶやきと同じくして何がアンの逆鱗・・に触れたのだろうか?


「でも、君、同じパターンにはまっただけじゃん。そう、ゲームで言うハマりさ。もう君はんだんだよ。さようなら」


 その一言を最後・・にアンは何も無いとこから巨大なを取り出し、『ミツバチ』を処分・・してしまった。もう、ドン引きだ。なんだコイツ!? 


 なんかやり方が正しくない……というより、頭おかしいじゃねえかっ!


 もう俺はアンのやり方にも性格にも疑問を持ってしまい、ミツバチが処刑された一件以降、アンと同じチームに所属しつつも『そこまで派手じゃなくていいの』と独自の方針を打ち出していくほかなかった。



にやってもらうのは、そうだなあ、さる老人・・人生・・をドラマティックに盛り上げて欲しい。

 そんなおろ、アンからの指示・・


 あてがわれた人間は公園でホームレスをしている老人。

「いよいよお迎えが来ちまったかあ」

『アンタに色々と聞きたいことがある』


 まあ、自分が見えないからだと思うが、実にこの老人は素直に表情を出してくれる。

 ソレを見ているだけでなんだかあったかいものがこみ上げてくる。

 そしてついたずねてしまう。

『最後に願いはあるか?』

の無事を知りたいねえ」


 自分はその申し出に意識を広げて検索・・を開始する。そして娘が元気にしていること、結婚して子供をもうけていること、幸せな家庭を築いていることなど、とりとめの無い、しかし老人にとっては待ち焦がれた情報・・提供・・した。そこでふと聞いてみる。


『なあ、あんた娘に会いたくは無いのか?』

「いいんだよ。娘に会えなくても。あの子がどこかで元気にしてくれているなら、それでもういいんだ。わしゃあ、静かに息を引き取るだけさ」




 そして老人の最期を看取るというクライマックスを前に自分は……このわれた。

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