【第8話】神の住まう世界で『サッカ』の本質を知る(『ミツバチ』の記憶2)



「あれ? ……ここは?」



 みたいな感じで、自分が目覚めたのはどっかの手術室のような空間。

 寝かされた自分をまばゆい白色灯はくしょくとうが照らしている。

 特撮ヒーロー物で改造人間・・・・が造られる状況・・に似ている。


「コイツはどんなやつだ?」

「なんでもー、徹底的に一人の読者をいたぶった粘着質野郎・・・・・らしいよー」


 機械的に淡々と答える男とソレを茶化すようにはやし立てる少年。


「コードネームでもつけちゃう?」

「いや、いい。コイツはそこまでのヤツじゃなさそうだ。平均・・からは抜け出得ないな」

「そっか、じゃあいいや『ミツバチ』で。おい、ミツバチ、起きろ」


 ぶしつけに訪ねてくる少年。自分はその平均という言葉に自分の話を認めない上司の憎たらしい表情を思い浮かべ内心イラッとしていた。


 ギリシャ人が着るような簡素な白い服を着せられ、部屋を出され、広大な空間に放り出される。だが、そこには数多の自分と同じ奴等が集っていた。


 東京ドーム数十コはあろうかという古代ギリシャの論議場ろんぎじょうを彷彿とされる空間、そこにひしめき合う人人人……。


 最初、ステージに三人の天使が降り立った。彼らは『構成こうせいサッカ』を名乗り、説明を始めた。


 ここはの住まう世界。

 そして神は物語を所望しょもうする。ソレを支える為、この世界には三人の構成・・サッカを頂点・・として、千人の上位・・サッカ(コードネーム持ち)と百万人の下位・・サッカがいる。そしてサッカは人間・・から覚醒かくせいするのだが、覚醒かくせい時に中途半端・・・・と見なされたモノ達はコードネームをもらえず、下位サッカとなる。そしてこの下位サッカ達の事を皆々は『ミツバチ』と呼んでさげすみ笑った。


 人間に随伴ずいはんして、その人生を『回収・・』し、物語モノガタリの『素材・・』として構成サッカに提供・・する。

 ある一定以上・・・・の特色(感情の振り切れ)を持つコードネーム持ちのサッカは構成サッカに渡す前にある程度の『素材』の加工ないし、『回収』時の状況の複雑化ないし激化・・を行う物がほとんど。

 だが、下位サッカはただただ素材の回収を行い、構成サッカに渡すだけである。


 そう、まさにただの『回収』係、すなわち『ミツバチ』なのである。




 この国では日に三千もの人間が最後・・を迎える。果たしてその中にどれだけ彼らの演出・・したフィナーレが混じっていようか。

 だが、自分はそんな周囲に粛々しゅくしゅくと言い放ってやった。

「なら、自分が『ミツバチ』の概念・・を変える」と。

「だから自分はあえて『ミツバチ』を名乗らせていただきます」


 そんな声に反応したのは長身の天使。たしかメイと言ったはずだ。

「おいおい、これじゃあ、文庫本半冊分・・・にもなんねええーぞおおー! てめーら『ミツバチ』はその程度かあ。……でもまあそうか、人間ごときの一生なんて『その程度』だよなあ! あー! はかないっ! はかなすぎて笑いがとまんええーやあー! ゲハハ! そうだな、あいつらの世界で言うアニメ一話分・・・相当・・だな! うん、分相応・・・! でも、すくねええーけどおおー! ゲハゲハゲハ」


 一話分・・・強調・・したのは、おそらくアニメ化されるラノベ原作の場合、文庫本一巻分で大体アニメ3~4話程度になるからだろう。

 だが、この話を聞いて自分・・は肩を震わせ、怒りを押し殺していた。

 ……自分はこの構成サッカが嫌いだ。

 それにいつも聞き慣れてるコイツガ人間をなじる話もなぜかこの時は我慢できなかった。

 だから立ち上がって叫んだ。

 指をアイツに向かって突き出して宣戦布告・・・・よろしく叫んでしまった。


人間・・馬鹿にすんのもいいかげんにしろっ!」



 場の空気・・が凍り付くのが分かった。

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