【第6話】仮に人を喰った魔物を丸ごと喰えばそれは人喰いになるのかという問題

 そしてほどほどに喰欲しょくよくのままにサッカを狩ってはべ続ける日々が続いた。

 こちらを怖れたのかはたまたその他の事情かあれからあの6人組を見る事はなかった。そんなおり



「……昨日はちょっと狩りすぎたか……」


 なんか最近、サッカの持つ物語・・美味・・いのである。というかついつい食べたくなるよなクセになる味、生前お世話になっていた、チキンナゲットとかフライドポテトで言うジャンクフードみたいな。

 最近は結構意志が弱くて、誰かに監視でもされていないと衝動が抑えきれない。  

 だから俺は、気を紛らわす為に、自ら話を書くことにした。それもヨシナリさんの前でだ。今日自宅に行くと約束していたが、向かったのは結局正午過ぎ。襲ってくる喰欲しょくよくから一時期でも気を紛らわせているが、えもいわれぬ倦怠感けんたいかんが残る。


「気だるいなあ……」

 そう思って出したため息は、周囲の環境に溶けていった。


 突き抜けるように青い空。

 入道雲が立ちこめ。

 声だけで空間を埋め尽くさんばかりの蝉の大合唱。

 まさに夏真っ盛りと言わんばかりのシチュエーション。



 そんな中、執筆環境を確保すべくヨシナリさんの家に向かう途中。


「ヤッホー」


 聞き覚えのある少年の声に振り向くとそこにはあの時アンと名乗った天使が舞い降りていた。アンが俺に容赦の無い指摘してきを入れる。


「でもキミって作家の想いばっかべ過ぎじゃ無い? ほんっとハードなモノばかり喰べてるよね。おもいはおもいよ。もたれちゃうよ。アーハハハハッ! ってかキミほんと喰癖しょくへきかたよりすぎてるね。偏喰へんしょく中の変喰へんしょく。たまにはあっさりとした普通・・の人間のを喰べないと壊れちゃうよ。近いうちに必ず……ね」


 アンは健康番組で司会者が話すノリの軽さそのままに俺のたどる結末を予想してみせる。

「俺は人間は喰わない」

 たまらず俺は自らの誓いを放つ。先輩を喰べた日に自らにいましめた『ちかい』を。だがアンはそれこそ偽善だと言わんばかりに

「やってることは一緒じゃない? まあ、僕達・・の咀嚼した人の魂もってるみたいだし、死体・・むさぼるハイエナってところかな? キミは」


 人が心底呆しんそこあきした者を見下す時するであろう爛爛らんらんとした狂気・・を顔全体に張り巡らせて言葉を放ちすぐに飛び去ってしまった。

 一瞬の出来事に消えたアンの行き先を俺はただ呆然と見つめていた。





「まあ、ほどほどにしとけよ」

 あれからさらに日々が過ぎ、ヨシナリさんの忠告・・もほどほどに喰欲しょくよくに任せて、サッカを狩ってはくらっていった。

 その中で俺はとあるサッカをった。

 まあ、老人に取りいてその人生の最後を搾取さくしゅする。

 まあ、死神みたいな事をしていたやからだ。




「自分はただの『ミツバチ』だ」


 そう豪語ごうごしていいたこのサッカは今は俺のハラの中に収まってしまっている。

そして『このままでは消えられない! 自分の心残りを解消してくれ』俺の中に意志・・を残した『ミツバチ』は、この先俺と共同戦線を張ることになる。

 そしてこの『ミツバチ』の記憶・・が今まで謎だったサッカ達の生態・・を俺にしめす事になった。

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