【第5話】5人組とぼっちの黒子ってネタ感満載の戦隊ヒーローかよ!(文書ロイドヘレシーとの戦い)

 これは、とある日、人気ひとけの無い路地裏にサッカを連れ込み、一方的に蹂躙した後、『喰らって』いると。


「おい! ちょっとそこの不審者!」

 いきなり中学生から高校生くらいの年頃の6人組に絡まれた。


 リーダーらしき剣士風の少年が。



『ブンシュのうみ!』



 言うなり、ブンシュの海に。

「こりゃあ、見事に引きずりこまれたな」

 俺が思わずぼやくほどにヤツらの手際は見事だった。

「に、してもなぁ」

「ホントウにこれではコスプレですね」


 文子が言うとおり、ヤツらの格好は『どこの異世界転生物語だよっ』つーくらいのハジケっぷりだ。

 先ほどの剣士風の少年を筆頭にとんがり帽子にローブといかにも魔法士風の少女、カブトは付けず少し軽装気味なファンタジーRPGでよくある侍風の少年、柔道着を着崩したようなボロボロの道着に身を包みやけに呼吸の荒い妖しげなポニーテールの少女、これまたよくある回復魔法を使えそうな真っ白な修道服に身を包んで手を胸の前で組み瞳を閉じて祈りを捧げてる少女。

 そしてそいつらのだいぶ後ろに人形劇の操手そうしゅよろしくまさに『ザ・黒子クロコ』といわんばかりの出で立ちの人間(性別・・なぞ分かるかっ! これだけで分かればたいしたもんだよ)、つーか黒子クロコさんハブられてる?


 俺の思考しこう余所よそにヤツらは好き勝手にのたまってくる。


【剣士:男】は「王道の話を突き詰めていけば、おのずと道は開ける」って暑苦しっ!


【魔術士:女】は「元々はミステリー好きかつリケジョ志望のわたくしからすれば、思考しこうのロジックこそ至高しこうと言えますわね」っていかにも高飛車たかびしゃ


【侍:男】は「江戸は最高!ござるよござるござるござるござる」うん、君、頭になんかいてるね、もうキミノココロが分かんないよ。


【格闘家:女】は「肉体のぶつかり合いこそ至高! あっ、変なイミじゃなくてだな」ってどう考えても婦女子ふじょしでしょこの子! しかもかなり重傷じゅうしょう部類ブルイの!


【治療術士:女】は「わたしの言葉はあなたを癒やす。わたしはコトバのチカラを信じている」とかいってなんか『』みたいなの放ってくるやん! サッカの放つ瘴気しょうきはらう彼女の『』は、だが残念! 俺には効果無しだ。たぶんそれほどまでに俺は(サッカとして)成長しているということなのだろう。


「ふっ、ふふふ、たまんねぇなあ、オイ」

「なんですか、気持ち悪い。アタマになんかきましたか?」

「言ってろクソ野郎。嬉しいやら哀しいやらで少し複雑なんだよ」

「たしかにマスターの『力』が増せば、先輩を取り戻す道筋みちすじが立つかも知れません……だがそれほどにマスターは人間から『はずれ』変質へんしつしてゆく……アナタがもっともきらう、先輩の命を奪った『サッカ』という存在・・へと」

「心の声を読むんじゃねーよっ」

「いえいえ、何を今更。マスターと私はもうすでに『一心同体・・・・』じゃあ、ないですかぁ」

フフンと言わんばかりにドヤ顔されるのムカつく。マジむかつく。


「おい、何をごちゃごちゃ言っている」

「いきますわよ!」

「ござるござるござるござる」

「血沸き肉おどるくんずほぐれつ、ああんっとろけるぅぅ」

わたしは、負けるわけにはいかない」


 剣士が、魔術士が、侍が、格闘家が、治療術士が、示し合わせて仕掛けてくる。アレ? 黒子クロコさん微動びどうだにしない! もしかしてビビってる? にしてもわずらわしいなぁ、もう!


「あぁ、もぅ、うっとぅ、しぃ。『狂戦士バーサーカーモード』展開・・!」

「了解! 『狂戦士バーサーカーモード』に移行いこうします。『ペーパーナイフ』双剣展開ダ・ブ・ル』。さぁ全てをほふり、共に戦士之楽園ヴァルハラへと至りましょう」

「テメェとく気はねぇよ」

「あぁ、素っ気ない。でもそういう態度がジュクジュクしちゃうん出好デスけど♪」

「…………」

「あぁ無視? こういう放置プレイも大好きなんですけどぉ」

「こうなると、お互い興奮こうふんしすぎていけねぇなぁ! さぁヤるゾ」

「ぎょぉぉーーい、ぎょい御意ぎょい


 どうにもまらない文子の相の手を合図に、『蹂躙じゅうりん』が始まった。


 全て具現化ぐげんかした文字・・で作られている。斬撃ざんげき闘気とうきかたまり属性魔法ぞくせいまほうっぽいナニか、悪霊あくりょうが嫌いそうな聖気せいきを練り上げたっぽいナニか、がそれぞれ乱れ飛ぶ。


 対して俺は、斬り、払い、回転切りよろしく風圧?で吹き飛ばし、わりと簡単にヤツらの攻勢こうせい処理・・できている。


 斬罵刀ざんばとうクラスの得物えもの二振ふたふりも使ってる割には負担は全然無い。それでいて追尾性能ホーミングが付いてるとでもいわんばかりに的確に敵に当たり、刀身に爆弾でもついてるかというほどに敵にヒットした瞬間に過剰なほどの手応えが自分の手にフィードバックされる。

 まぁ『狂戦士バーサーカーモード』ってるから色々派手に感じているだけなのかもしれんけどな。



 して、5人はせさせたが、やはり黒子クロコ微動びどうだにしない。ん? 若干震じゃっかんふるえてるな。



『敵性サッカに対する対抗措置クリエイト模索プロデュース

『いいから、恥ずかしいんですか? とても披露ひろうできるモノではないと自信が無いのですか? わたしはそうじゃない! あなたを、あなたのチカラを信じているのです。あれだけ頑張ったじゃないですか』

 向こうにいる(たぶん冴えない)黒子クロコの中にいるのだろう、(おそらく)文書ぶんしょロイドであろうと。


「…………でも、ヘレシー」


 (おそらく黒子クロコ本人と思われる、から、ぼそりとか細い声(ちょっと少年のように聞こえなくもない)がつむがれる。


『い・い・か・ら・ヤ・る・で・す』


 文書ぶんしょロイドであろうからげきが飛び、跳ねるように(たぶん)少年がこちらに突撃してくる。


「僕のたってのたてを聞いてくれぇーーー!」

 両手を前に突き出し、いかにもマンガ的なわざとらしい醜態しゅうたいさらしている。


「しゃらくせぇぇーーー!!」

 こちらも突撃し、二振ふたふりの斬馬刀ざんばとうをちょうどヤツのてのひらでクロスさせるつもりで振り抜く。


 と。


矛盾むじゅんという言葉を知っていますか』


 これまた文子ふみこに勝るとも思わないくらい得意気とくいげな敵の文書ぶんしょロイドの耳障みみざわりな台詞セリフが聞こえたかと思った刹那せつな。ヤツのてのひら斬罵刀ざんばとうが吸い込まれたと思うと。


結末けつまつは、えてしるべし』


 敵の文書ぶんしょロイドの声が合図になったかのようにまばゆいひかりがそこから広がり。


「…………なっ」


 光が消えたかと思えば、俺の斬罵刀ざんばとうに無数の亀裂きれつが走り。


対消滅ついしょうめつかよ」

 思わずぼやいた刹那、粉々に砕けてしまった。

「『狂戦士バーサーカーモード』が強制的ムリヤリ解除とかされました。行動不能フリーズです」


『さぁ、今のうちに』

「ドロン」

 二人のやり取りを機にブンシュの海は解け、ヤツらは忽然こつぜんと姿を消していた。


「クソッ! 逃したか」

 テンプレな悪役の台詞セリフよろしく俺が悪態あくたいをつく。

「にしても、アレは何だったんだ?」

 気持ちを切り替え、さっきの戦闘に出てきたヤツらの情報を文子に聞いてみる。

「先ほどの戦闘せんとうもとい接触せっしょく共振きょうしんで向こうのデータを取得しました」

「おっ、解説頼む」

「はい!」

 文子はハキハキとした対応で向こうの戦力分析をしてくれる。

「ヤツらは『文子(ふみこ)ver.2.00』を使用してました」

「データによると、表向きは精神的に障害がある等、なんらかしかの『意思疎通はなせるか』が困難なモノ物語世界ブンシュの海だけでも共有できるようにとのコンセプトらしいですが……」

「ウラの顔は『サッカ討伐』の為の、ていい『道具ツール』ってとこか」

肯定こうてい

「で、性能は?」

「文子の自我を一切合切いっさいがっさい排除した仕様・・のようですね。これじゃあ。、使い手の思うがままに『何でも』出来てしまいますよ」

「まったくもって、心外ですね!これでは文子の【良心・・】が働かないではないですかっ!」

 プリプリ怒る文子を見ていると、先輩を喰った後の文子の態度を思い出し、怒りが渦巻いていき……思わず全力で吐き捨てていた。

「はっ! お笑い草だな! テメェ等に【良心・・】などあってたまるものかっ!」


「そういえば、さっきの黒子クロコには文書ぶんしょロイドの意識イシキがのっていたな」

「あれは『文子ふみこver.1.75』みたいです。おそらく1シリーズ文書ぶんしょロイドの意識イシキを残しているのでしょう」

「いずれにしろ厄介やっかいな相手だったな」

「でももううことはないでしょうね」

「なんでだ?」

「んふふー……カ・ンですよ」

 とにかく、もう、得意気とくいげににやつく文子ふみこの横顔がたまらなく気持ち悪い。

「でも、なんていうか、いいですね」

「なにがだよ」

 ウザさ全開の俺の相づちにも気にした風はなく文子ふみこはのたまう。

「あの二人のベテラン夫婦のようなやりとり。まさにを感じます。マスターとわたしのように」

「ほんとうにテメェは『クソ野郎やろう』だな」

 深くため息を吐き出す俺を文子ふみこ慈愛じあいに満ちたひとみで見つめていた(それがまたウザかったんだけどな!)。

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