【完結】文書(ぶんしょ)ロイド文子シリーズ原典 『サッカ』 ~飽話(ほうわ)の時代を生きる皆さんへ~ 俺は何が何でも作家になりたい! そう、たとえ人間を《ヤメテ》でもなぁ!!
【第2話】『サッカ』討伐開始!(師との出会いが俺を強くするぜ!)
【第2話】『サッカ』討伐開始!(師との出会いが俺を強くするぜ!)
「私はヨシナリ。サッカの狂気を感じ取り、人との違いを認識できるモノだ」
文子と俺のやり取りを見守った後、去ろうとする俺達を引き留め、壮年の作家志望の男は照れくさそうに笑った。
「で、君はなんていう名前かな?」
今更ながら問いかけられて言い淀む。
そういえば今の俺は『何』なんだろう?
「なら、サッカらしくペンネームを名乗っては如何ですか?」
珍しく文子から提案してくる。
俺はその意図を訝しがったが、文子は少し遠慮しがちに告げる。
「先輩の残滓にあなたへの贈り物がありました。それが、あなたに向けたペンネームです」
驚く俺に文子は続ける。
「おそらく、マスターが物語を書き上げた際に贈るつもりだったのでしょう。聞いて……くれますね?」
厳かにしゃべる文子、その空気に俺は押し黙って先輩を見つめる(ちなみに顔の傷は元通りに修復していた。文子の力でらしい)。
「王邪 兼道(おうじゃ かねみち)といいます」
「意味は何だ?」
「どうやら王道と邪道を兼ねる……すなわち全ての物語制作を統べる者という意味のようです」
「そうか、先輩が、ハハハ」
そのまんま中二病のペンネームに驚いた俺だったが、名前に込められた意味を知って優しく笑う。先輩からの俺への想いが心を満たしていく。
「そうか、じゃあ王ちゃんと呼ぼうか。よろしくな、王ちゃん。ああ、俺のことはヨシナリさんでいいからな」
会話を見守っていたらしいヨシナリさんが俺に呼びかける。そして話が始まった。
「ええと、まあ、私はサッカに片足突っ込んでんだわ。まあ、成り損いかな。そして私はサッカとしては生きたくない」
「どうしてだ?」
「私は人間とサッカの間という
俺の質問に半ば宣言じみた会話を返す。
「それにミサキちゃんのおじいさん……先生には随分と世話になったからねえ、君を助けたのはその恩返し。ミサキちゃんを喰ったのは少しいただけないなあ」
「まあ、いいか、ミサキちゃんの魂は若干残っているようだし、身体も文子によって保存されている。多分元に戻せる。でもその為にはまず、サッカを狩らないといけないけどね」
先輩を蘇らせれるかもしれないという事実に俺は浮き足立つ。
「多分、ある程度のエネルギーは必要だろうし、地道にコツ、コツとね」
「でもなんでそんなこと知ってんだ?」
「先生が言っていた。あのサッカと言うらしいバケモノ達は元は人間だ。君みたいに文子によって人工のサッカが誕生した事例は初めてだけど、まあ気にしないで」
「死んだ人間の一部はサッカとなり、神様に人間の魂を材料にした物語を提供するようになる。人間はすべからく彼らに搾取される存在なのさ」
「そして王ちゃんが見た『碧い海=ブンシュの海』が、人間の魂の還る所であり、かつ、サッカが生まれる際に必要な苗床なのさ」
「でもこんなにペラペラと全部しゃべっていいのか?」
当然の疑問にもヨシナリさんはどこ吹く風と言わんばかりにケラケラと笑う。
「まあ、まず信用されるには、まず情報をね」
「よろしく」
そして唐突に伸ばされた手、その手を自身の今の存在、世界のあらましを聞いた俺は戸惑いつつもしっかりと握り返す。
そして俺は、先輩という師を失って間もなく。新たな師を得るのだった。
「まあ、とりあえず、何体か狩ってこい。そうしないとある程度の自我は保てないだろう。まあ、自慰行為に近しい作業だと思って割り切る事だな。んで、また適当に寄りにこい」
待ってるからと言われて、俺と文子は適当にサッカを狩りに出かける。要領は分かっていた。(おそらく人の魂を求めて)そこら辺を単独でふらついてるサッカに狙いを定めて狩る。
あの時出したペーパーナイフを振るい、サッカを倒した後、そのまま吸血鬼みたいに身体のどこかにかぶりつく。
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