◆幕間◆ ~文子の気持ち~

◆幕間◆ ~文子の気持ち~

 私は嫉妬しっとしていたのだと思う。


 あのがマスターにすりたびに、なんか、こう、もやもやするのだ。


 これはやはりプログラムされたものなのだろうか?

 

 主人を好きにるように仕組しくまれたいつわりのおもいなのだろうか? 


 もしそうだとしたら、まねいた結果・・がひどすぎる。


 私の勝手かって感情・・のせいで、人を一人、ころしてしまったのだから。


 そして、『たり』に主人の不幸を願う。

 ありえない、ありあない、『文子ふみこ』としての機能キノウゆうする単体・・としての存在価値・・・・はすでにあるはずもないだろう。

 ……『これが、人間ニンゲン?』と、思わず疑問をていするほどに、私の思考しこうは混乱のきわみにた。


 そんな私を引き戻したのはマスターの一言・・だった。



俺以外・・・の『すべて』をうしなえ」



 まさに天上天下唯我独尊てんじょうてんがゆいがどくそん。マスターの一言は絶対零度ぜったいれいど寒気かんきともなっていたが、混乱する私に分かりやすいほどの方向性・・・を与えてくれた。


『まあ、もともと私に人格じんかく……というか人権・・は許されるわけがいし』


 私にはしか無い。つまりは贖罪しょくざい

 でもそれはマスター自身・・も自らに過剰なほどに無理矢理むりやりしているような気がする。


『……罪人・・、〈ふたり〉か。……ふふふ』


 なんだか楽しくなってきた。


 やっと、初めて世界でマスターとふたりっきりになれた気がした。


「……もう、あなたはモノガタリつくることはありません。ひたすら物語モノガタリウミおぼれてくだけ。それこそが私の復讐・・。私のおもいをまなかったあなたへの……フフフ……負不腐怖フフフフ


 おもわずぼそりとうそぶいてみる。


 マスターに聞こえるかどうかはどちらでもいい。


 私がただ、これからの決意表明・・・・みたいなことをしたかっただけなのだ。


 この先は冷たい、冷たい、冷たい、果てしなく寒気かんきともなった旅路。


 となり主人しゅじんつないでもくれないだろう。


 温もりは無い。

 でも構わない。

 に歩めるのだから。

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