【完結】文書(ぶんしょ)ロイド文子シリーズ原典 『サッカ』 ~飽話(ほうわ)の時代を生きる皆さんへ~ 俺は何が何でも作家になりたい! そう、たとえ人間を《ヤメテ》でもなぁ!!
【第2話】先輩との出会い(投書がきっかけで文芸部の女帝にお持ち帰りされた件)
【第2話】先輩との出会い(投書がきっかけで文芸部の女帝にお持ち帰りされた件)
――少し昔を思い出す。
とにかく、テストとか勉強とか好きじゃ無かった。だから国語のテスト中だけはエンターテイメント時間だった。先生が抜き打ちの意図があるのか分からないが全く知らない話を読めるのは楽しかった。
……といってもその程度、特に周りと大差は無い。本の虫というレベルなどほど遠い。ただ、その国語の先生がテストで出す全く知らない話は短編ばかりだった。それも二千文字以内の超短編。すべてが短時間で解決して、でなんか考えさせられる作り。なんかイイって思えた。
で、影響されたかどうだか分からないが(自分でも出来ると思ってしまったのかもしれない)生活の中で、感じたこと、気づいたことを千文字程度の短編にまとめるようになった。授業中、一番後ろの窓側の席、ばれないのをいいことに授業ノートの端に走り書いていった。
高校1年生の春、毎日が充実し、やってて楽しいと感じていた。
でも、書いたはいいが、見せる相手が居ない。友達に見せたら当然気味悪がられるだろうし、ネットに曝すのも気が引けた。かといってせっかく出来た話をこのままってわけにも出来ず、このこっそりと書いた超短編たちをどうするか迷っていた時、掲示板の隅っこの文学部投書コーナーに目が行った。
『何でもイイ。話求む』
厚紙を組み合わせた手作り感丸出しの投書箱にやっと感情の持って行き場を見つけた俺は放課後、人の居ない時を見計らって、ノートの端を契って適当に何枚か突っ込んだ。ただ捨てるには惜しかったし、ノートを提出した際に先生に見られるのも癪だったからだ。
翌日、授業を終えた俺の元へ見慣れない女生徒が訪ねてきた。ネクタイの色から二年上の先輩と分かる。まあ、ソレが無くとも瞳は人を威圧せんばかりの眼力をたたえていたし、腰まで下ろした黒髪は艶を通り越して綺麗に光を反射し、漫画かっ! というほど陰影を作り出していた。
顔はクレオパトラが居たら多分この顔と万人が言うだろう萌えを排除した美人顔。まさに女帝と呼ぶにふさわしい。多分ムチがこれほど似合う人は滅多に居ないんじゃ無いだろうか?
これじゃあ相対するのは蛇に睨まれた蛙だなあと思いつつ、実際俺自身がそうなってる。だって当の女生徒がその眼力をまっすぐに俺に向け、ジャッカルの如き勢いで迫ってきたのだから。
「見たよ、きみの話」
「……話?」
混乱する俺を余所にクラス中がざわめいている。
当然だ。
こんな美人だけど威圧感満載の女王様が来ている訳だし、俺なんか悪いことしたっけ?
「何言ってる。昨日投書したじゃないか。短いがいい話だ」
「ああっ!」
と俺は叫ぶ。
「合点がいったようだな」
やっと分かったのかと言わんばかり、女王様はため息を一つ吐くとやれやれと首を振り。
「とにかく、これから一緒に来てくれ」
有無を言わさない強い物言いにクラスがどよめきたつ。
えっ俺、これから犯されるの?
「私はミサキ。気軽にミサキ先輩と呼んでくれ。ところできみの名を聞こうか」
なんかいいようにされてる気がしてちょっとむかついたのもあった俺はかましてしまった。
「俺は王者になる男です」
クラスの時間が止まる。
言っちまったよ。
でも仕方が無いだろっ、先輩が来た時点でもうクラスでの俺の平穏は終わったと悟ったのだから。
先輩の反応はどうだろう?
聞くまでも無かった。
「く……は……は……はははははーーー!」
押し殺した笑い声から一気に突き抜けた高笑いへとテンションをシフトした先輩は。
「最高だ。すぐに持ち帰ろう」
すでに俺が彼女の所有物になったかのように、常人では考えられない
そして部室に連れ込まれて早速、ノートパソコンを
「なんかショートショート書いてみろ!」
とのたまった先輩の無茶ぶりに応えるべく、日常の気づきからショートショートのオチを決めようと頭をフル回転。
オチをつかみとるまでは、「あー」「うー」とのたくりながら、頭をかいたり、半開きの口でボーっとしたりと、とにかくせわしなかったと思うが、なんとかオチを引き寄せた!
ここまで思い付けばそこから前の導入部等の執筆はわりと直ぐなので思わずニヤリ。その後はひたすらキーボードを打ち込見続ける。
集中! 集中! っと。
「本当にキミは書いてる時と書いてない時の落差が激しすぎるね」
俺の書いてる様子を先輩はあきもせず、優しい眼差しで見つめてくる。
「まあ、調子良いときは調子良いんですよ。俺は」
ぶっきらぼうに言葉を返すが、だってこればかりはどうしようも無い。ネタが無くてプチ発狂している状態より集中しているときの方が良く見えるのはわりと普通だろうに。
「まさにウサギ……さしずめピョン吉くんといったところかな」
ひどい言い草だが、そのネーミングが今の俺自身を的確に描写しすぎていて思わず笑ってしまった。
「ははっ、じゃあミサキ先輩は亀ですか?」
「そうだよ。コツ、コツ、とね」
思わず聞いた質問にかみしめるようにゆっくりと答える先輩。優しい笑みをたたえながら。俺はそんな先輩の顔を見つめて思わず顔をそらす。先輩が何を想っているのか分からないのがものすごく歯がゆかった。
それから……ミサキ先輩には、課題(お題)『キーワード三つを元に極短編を書いてみよう……毎日』とかをもらって、いくつか書いてみた。
いつも毎回締め切りギリギリになって慌てふためく俺(……だって、追い込まれたときにネタが降りてくるんだもん)を見て先輩が。
「ピョンちゃんを見てると楽しいよ。うん、なんか、安心する。製作者は自分一人だけではないと思うことが出来る。頼もしいよ」
と言う。時たまこうやってちょっとしたSっ気が出るのも先輩のお茶目なところだ。
そして、一通り課題をこなしていった俺は、先輩に認められたのか、「とりあえず何でもイイから長編書いてみ。一回書き上げれば世界が変わるよ」という
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