第五条 女だらけの大運動会~騎馬戦の部~

第一項 上からスカート履いてもいいですか?

 なんと、赤いビキニを私に差し出した委員長。


 持った感じ、かなり露出が高そうだ。

 普通に無理でしょ。15才が着る水着では無い。


 ……無いのだ!


「いやいやいやいや、こんなん無理ですって。つけられないですって!」

「なんなら下もつけるが?」


 下も?

 委員長が、ぶらんとビキニ下の紐部分を持って垂れ下げる。


 いやそれ、隠れてないですよ。


 布じゃ無いです。それ。


 紐です。

 ほっそい紐です。


 そりゃもう、まる見え、もろ見えですよ。

 

 と言うか、私、下の処理……


 こほん。


 不適切な表現があったことを、ここにお詫びいたします。


 あーでも。

 やっぱり恥ずかしいよね。


 あっそうだ!

 せめて。


 私は委員長に提案する。


「上からスカート履いてもいいですか?」

「まあ、上がビキニで、下だけスカートと言うのも、エロ増強でアリと言えばアリだな。」

「スカートがめくれる前提って! イヤですよ。保険です、めくれちゃったときの保険です!」


 それはそうだろ。

 何のためのスカートなんだ?

 隠すためでしょ?


「保険か……それではスカートの着用は却下だな。自らめくるのだったら検討の余地があったのだが。」


 キッパリと、そしてハッキリと却下する委員長。


「めくる前提でスカート履くとか、ある訳がないじゃないですか!」

「却下だ。」


 頑なに拒否する委員長。

 いやもう、納得がいかないよ。


 私は委員長に食い下がる。


「そもそも去年、生徒会長はビキニ着たんですか?」


 そうだよ。

 清純派の委員長が、ビキニを着て騎馬戦やるなんて想像がつかない。去年やらなかったのに、今年だけビキニとか有り得ないでしょ。


 と思ったのも束の間、生徒会長の口から想定外の言葉が飛び出した。


「もちろんですわ! 最上級のビキニ。それはもうドラクロワの名画、民衆を導く自由の女神のようでしたわ。」

「自分で言ってるし! って、あの絵画って、おっぱい丸出しですよ?! ……もしかして?」

「いやですわ。それは内緒です。ねえ零様。」


 私がR18疑惑を妄想していることを感じ取ったのか、生徒会長は身体をくねらせてモジモジしている。


 そこは否定してくださいよ。


 間髪入れずに委員長が、生徒会長の代わりにフォローと言えないフォローを入れる。


「まあ、百々花は終始、私の背中に抱きついていたからな。ポロリしたのは、騎馬戦が終わった後……おっと。これからは子供には言えないな。」

「零様、いやですわ。恥ずかしい。」

「ははははっ。すまんすまん。」


「深入りはやめておこう……」


 騎馬戦が終わってからのポロリ……R18の百合展開しか思い浮かばない。


 ある意味、とっても絵になりそうだけれど。


 って、ダメダメ!

 これより先は、立ち入り禁止の領域だ。


 私は純情可憐、15才の乙女なのだ。


 私が妄想を掻き消すかのように、ブルブルと頭を振っていると理亞ちゃんがニヤニヤと近寄ってきた。


「由宇ちゃんのビキニ、きっと似合うと思うんだけどな。」

「またーっ! 他人事なんだから!」


 もう、理亞ちゃん。

 似合うとかそう言う問題じゃないんだよ!

 

 恥じらい。

 乙女の恥じらいだよ!

 

 と、言ったところで理亞ちゃんには伝わる訳もなく私は、批難の目を理亞ちゃんに向けることしか出来なかった。

 

 まあ、批難の目なんて、理亞ちゃんに通じる訳が無いのだけれど。

 

 委員長が、私のことを急かす。


「風祭由宇! 早く着替えてこい!」

「わかりましたよー。ううう、イヤだなあ。」


 ――10分後。


「おお! いいじゃないかー! 陸上を辞めた影響なのか、うっすらと脂肪がついているところが、また、たまらんな。」


 委員長が私の身体を上から下まで、舐め回すようにジロジロと視姦する。

 

 ううう……恥ずかしいよう。


「やめてください! あまりジロジロ見ないでくださいよー!」


「何を言っているのだ? ビキニは他人、むしろ私に見せるために着るものだ。」

「そんな訳ないじゃないですか!」


 私が嫌がれば嫌がるほど、委員長は喜ぶ。

 なんだその変態的な性癖は。


「そんなに隠すな。もっと良く見せろ。せっかくのビキニが勿体ないぞ。」

「嫌です! 他人に見せられるものじゃありません!」

「この未成熟な身体つき、そして赤くなって恥じらう西園寺由宇。たまらんな。」


 今にもヨダレが垂れそうなだらしがない顔を見せる委員長。すっかりキャラが崩壊してしまっている。


 隣で黙って見ていた生徒会長が、歯ぎしりしながらブラウスのボタンに手をかける。


「うぐぐぐぐ……やっぱり百々花、脱ぎますわ!」

「生徒会長、やめてください! って、ボタン外さないで! はめてください!」

「あはははははっ!」


 私と生徒会長のやり取りをみて、他人事のように笑う委員長。


 こらこら、あなたの彼女でしょ!


「委員長も笑ってないで止めてくださいよ!」


 私が委員長のことを批難すると、理亞ちゃんは両手を頭の後ろに回して面倒くさそうに言った。


「あーあ。ちゃっちゃと騎馬戦初めて、ちゃっちゃと優勝して終わりましょうよ。」

「うわっ! 理亞ちゃんがまともなこと言ってる!」


 どどどどどうした理亞ちゃん。

 いつもならゲス顔で生徒会長のことを煽っても良いくらいなのに、とても不機嫌そうな顔を見せている。

 

 理亞ちゃんの突っ込みを受けて我に返る委員長。


「うむ。そうだぞ。百々花、服をちゃんと着なさい。」

「わかりましたわ。」


 すったもんだあった後、私たちはようやく騎馬を組む準備をするのでした。

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