第24話 復讐のはじまり(SIDEカオス)
*****SIDE カオス
ぐったりと力の抜けたレティの耳を塞いでいた手を外した。結界で防いだから彼女に声は聞こえないけど、手で覆ってやった方が安心するだろう? 何しろ、レティの感覚はまだ人間だ。人間は目に見える形や触れる温もりを大切にするからね。
まあ、触れる理由にしたのは否定しないよ。可愛いレティ、まだ6歳の体でこんなに疲れてしまって。可哀想に。安心していい。君を脅かすものは僕が排除する。
「聞いてるのか! 僕の妻になるんだ、離せ」
喚く子供の声は甲高くて耳障りだ。舌打ちするだけで防げる程度の雑音であっても、僕の聖女を怖がらせたならお仕置きが必要だ。前世でもそうだけど、この身勝手な魂は誰の作品だろうか。とても苛立たしい。
「羽虫の分際で、僕の美しい花に
この国の王太子だっけ。その肩書がどれほどの価値を持つと勘違いしたのか。剥奪するのは簡単さ。神託を降ろせば神殿は黙ってないし、それ以前に他国が認めないよね。戦争を起こすのは無辜の信者を傷つける行為だから控えただけ。
他国の王族に神託を降ろしたのは、行き違いや勘違いを防ぐためだ。僕が動いた時に邪魔されたくないからね。他の神々への根回しに、余分な時間を取られたのは僕の不手際だった。でもレティを守るために、彼女と僕の間に繋がりを作っておいてよかった。今度間に合わなければ、この世界ごと破壊していたところだ。
直接神罰を与えてもいい。この場で雷に撃たせようか、それとも存在を生まれる前まで巻き戻して抹消する? いや、その程度の罰じゃ僕が満足できない。末端からすり潰し削りながら、生まれたことを後悔させても足りないよ。
だって、僕は一度譲ったんだ。
前世のレティは王太子の婚約者になり、彼を好きだと態度や言葉で示した。この男も最初はそれを受け入れて彼女を愛でた。だから猶予を与えた。俗世の柵を終えて、彼女が自由になるまで……死が彼女を迎えるまで、僕は
呪われた? 何を都合のいいことを。レティの死によって解ける程度の呪詛、本気で彼女を愛していれば撥ね除けられたはず。僅かでも君に隙があった証拠だよ。
結界の外で喚く子供を睥睨し、僕は一方的に宣言した。
「二度とレティに触れさせない。彼女は僕のための花だからね」
ぱちんと指を鳴らし、王太子を王宮へ飛ばした。まだ直接傷つけたりはしないよ。その前にレティを安全な場所に運ばなくてはいけないし、あの男の罪を暴いて罰を受けさせる準備も必要だ。この場でただ殺してやるなんて、親切は勿体ないだろ?
人間は勘違いしてるけど……神も悪魔も紙一重。僕達はいつでも両面の顔を持っている。穏やかな『僕』でいる間に、君は手を引くべきだった。
さあ、復讐の饗宴をはじめようか。
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