第17話 今日はお休みになりました
「安心していい、僕が解決するからね」
そう言ってくださったカオス様に甘えて、私は抱き着いたまま眠りました。カオス様はベッドヘッドに積まれたクッションに背を預け、私を腹の上に抱き寄せます。温かいのと安心したのが重なり、うとうとと眠りかけた頃……カオス様の声が聞こえた気がします。でもよく聞き取れませんでした。
翌朝、私は寝過ごしてしまいました。慌てて飛び起きると、すでに太陽は高い位置です
「お嬢様は今日お休みですよ」
ばあやがそう言って、私の着替えをワンピースにしました。ドレスではないので、誰も訪ねてこないのでしょう。お休みなんて、特別な気がします。
「お母様の調子はいかが? 今日は一緒にいられるかしら」
カオス様にお願いしたものの、まだ怖いのです。お父様の仕事の邪魔は出来ませんから、お母様やばあやが一緒にいてくれたら嬉しい。そう思って口にしたところ、意外な答えでした。
「奥様からも同じお話がありました。今日は庭でピクニックをいたしましょう」
「本当? 嬉しい」
お母様の体調が良い日は、ときどき庭に出ます。そんな日は私もお勉強を休んで、ご一緒しました。前の時のお話です。お腹が大きくなってからは、転んだりしたら危ないと1階のお部屋に移られました。大きなお腹で足元が見えないから、その方がお父様も安心できるみたいです。
お母様がいま使っておられる部屋は、ガラス戸を大きく開け放つと庭に出られました。大急ぎで着替えて、料理人が用意してくれたバスケットを持ったばあやを急かして、お母様のお部屋に向かいます。ノックして扉を開けば、淡いピンクのワンピース姿のお母様が迎えてくださいました。
「お天気が良くて、私も体調がいいの。私達の天使、聖女様はご一緒してくれるかしら」
誘うお母様の手を取り、しっかりと繋ぎます。こんな記憶はないので、これも未来が変わった影響でしょう。こんな変化なら大歓迎です。
「喜んで」
庭から見える大きな木が3本並ぶ丘に向かいます。距離は遠くなく、日陰があり心地よい風が吹く場所でした。何度かばあやとお昼寝した記憶があります。シートを敷いて、クッションをたくさん用意して、木に寄りかかるお母様を支えました。まだ体が小さいので、手を添えたりクッションを差し出すくらいですが、お母様は大袈裟なくらい喜びます。
「昨夜はカオス様がいらっしゃいました」
そう前置いて、私はカオス様にばあやの実家の話をしたこと。たくさん勉強したこと、ダンスが少し上達したことを報告しました。微笑んで頷くお母様の微笑みは、昨夜のカオス様に似ています。お顔ではなく、その優しい眼差しがそっくりでした。
「カオス様ならきっと大丈夫ね」
感激するばあやが泣き出してしまいました。お母様と私で慌ててばあやを抱き締めます。しばらくそうしていると、暖かな風が優しく私達を撫でた気がしました。
カオス様に見守られている。それだけで頑張れます。私は今度こそ幸せになる――そう誓ってくださったのは、神様なのですから。
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