第二六匹 自信
解体を終えた俺達を村人達が荒らされた自分達の畑へと案内してくれる。
その畑は収穫を今か今かと待つカボチャやニンジン、イモ類が実っていた。
その景色にヘカテリーナは、
「いっぱいお野菜が実ってますね」
目を輝かせながらその景色を見る。
「でも、ところどころ畑が荒らされたような部分があります・・・。」
「そうだな。土が掘り返されたような部分が多く見られてる。それに糞に獣毛が混じっているのを見ると、イノシシだな」
さらに俺は残されている足跡を観察していく。そうすれば、畑を荒らしたイノシシの群れの数がわかってくる。
「予測だが、群れの数は8匹ほど、成獣5匹に一歳ほどの幼獣3匹だな」
「えぇ! 見ただけでわかるなんて、アキトさんすごいです」
ヘカテリーナは、そう言って俺を尊敬の眼差しで見る。
糞を見るに排出後8~10時間は経っているとみられる。
「つまり、ここには未明に来たということになり、正午過ぎの今の時間帯だと、このイノシシ達は寝ていると考えられるな」
「な、なるほど・・・、さすがアキトさん。見ただけでそこまでわかるなんてすごいです。」
「それよりも、ヘカテリーナ。少し時間が経ってるけど、このイノシシ達の臭いを追うことはできるか? 」
俺は彼女にそう聞くと、
「クンクン・・・。微かですが、動物の臭いがしますので、これを追っていけばいけるかと思います」
「すごいじゃないか、ヘカテリーナ」
俺が彼女を褒めると、ヘカテリーナは頬を赤く染めて照れる。
「えへへへ。そ、それほどでも・・・」
その照れ具合はなかなか可愛いものであった。
そうして、ヘカテリーナの嗅覚やイノシシの足跡を手掛かりに奴等の後を追っていく。
彼女は集中した様子で、臭いを嗅ぎ分けながらどんどん雑木林の方向へと進んでいく。
「どうだ? ヘカテリーナ、臭いの方は追えそうか? 」
俺がそう聞くと、
「はい、まだ僅かで自信がないのですが、イノシシこっちの方向に歩いていったと思います」
少し自信なさげにヘカテリーナは言う。
だが、俺はこの場に残されたまだ新しくできたばかりの足跡などから、ヘカテリーナの追跡が間違っていないと確信し、
「大丈夫、ヘカテリーナは確実にイノシシに近づいているから、自分が正しいと思う方向に歩いていけばいいぞ」
その言葉を聞いたヘカテリーナは、
「・・・っ、はい! 」
と返事よく答えて、少し自信を取り戻してくれるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます