第二七匹 分岐

 ヘカテリーナが自分の感覚を信じて、雑木林の中でも嗅覚を頼りに進んでいく。


俺はそれを後ろで見ながら、時折行く手を防ぐ邪魔な小枝などをナガサで道を切り開いていく。そうして、進んでいくと何かが何度も通ったと思われる痕跡を発見する。


それを見たヘカテリーナは


「アキトさん、こんな所に細い道ができています。これは一体どういうことでしょうか? 」


と、質問してくる。


「ヘカテリーナ、これは獣道だろうな。ヒトと同様に森に住む動物達も何もない歩きにくい道より、何かが通ってできた歩きやすい道を好んで通る。そうして、獣たちが地面を均していくうちに獣道ができるってわけだ」


「な、なるほど・・・。森にそんな道ができているなんて知りませんでした。それを知ってるアキトさんはさすがです」


そう頷いている彼女に俺は、


「でだ、その道を見つけたということはだな・・・。ヘカテリーナの捜索は間違っていないっていうことになる、偉いぞ」


そう言う。すると、ヘカテリーナは嬉しそうにしながら耳や尻尾をパタパタと揺らす。


「たしかにアキトさんの言う通り、この道からはいろんな動物の臭いがしてきます。ということは、これに沿って歩いていけば良いですか? 」


「正解」


そうして、俺たちはその獣道を辿って歩いていく。それは鬱蒼と茂る木々の間をクネクネしながら続いていて、時折、樹皮がきれいに剥がされた気や何かが木の皮を削ったようなものも見られる。


「多分だが、この雑木林はイノシシ以外にもシカとかの動物が住み着いてるな」


そう呟くとそれを聞いたヘカテリーナが大層、驚いた表情で


「そんなことまでわかるですね。アキトさんはすごいです」


と、俺を尊敬の眼差しで見てくるのであった。



∴ ∴ ∴ ∴ ∴ ∴



 それから、しばらく道なりに進んでいく内にヘカテリーナが立ち止まり、キョロキョロと辺りを見渡す。


「どうした? ヘカテリーナ? 」


俺はそう彼女に声をかけると、


「追っていた臭いがここでこの獣道から逸れて、あっちの方向に続いてるみたいなんです。アキトさん、どっちの方に進めばいいんでしょうか・・・? 」


ヘカテリーナは不安そうな顔で俺に助けを求めて聞いてくるのであった。

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