第二五匹 解体

 俺は血抜きしたイノシシの屠体をスキル【回収業者】吸引した後、村人達の案内で集落へと向かう。その集落は近くに川があるらしいので、そこで屠体の冷却をしよう。


集落へと移動していると、村人達は俺やヘカテリーナのことについて、いろいろと質問してくる。


「おみゃさん方はどこに住んでるんじゃ? 」


「ああ、向こうにある古屋敷に住んでいる」


と、答えると村人達は驚いた顔をして、さらに聞いてくる。


「そら、驚いたべ。で、でも、あの屋敷にはまっこと恐ろしい大蛇がおると聞いたんじゃが・・・」


「ああ、そんな蛇も居たな。斃してしまったが、何かまずかったか? 」


と、俺が答える。すると、村人達はまた驚いた顔をして、


「あの大蛇を倒してくれたんか。そりゃ、願ってもないことじゃ。いや、めでたいめでたい。これで家畜が食べられずに済む」


と、言って大喜びする。


「そうですよ、アキトさんは大蛇を倒しちゃうほどすごい人なんです」


と、ヘカテリーナは自分の事のように誇らしげになる。


当事者の俺は、過去の獲物より、これから狩猟するイノシシのことを考えていた。



 そうして、歩いているうちに村人達の集落に到着する。


「ここがおらが村です」


「おう、そうか。なかなか風情があるな」


村の感想は素朴な村である。そして、近くを小さな川が流れている。


俺は引き寄せられるようにその場に駆け寄って、スキル「回収業者」からイノシシの屠体を取りだし、川の水で毛皮についた泥などを洗い流す。


その後、イノシシの屠体の内臓を取りだ

していく。


イノシシの腹を捌いて、内臓を傷つけないよう慎重にナイフを下ろしていく。


肛門部分を布で覆って、縛って内容物が出ないようにして食道から大腸までを体外に出すために腹膜を切っていけば・・・


ドバチャァアアアアア


と、内臓が出る。


そこから、肝臓と胆嚢、心臓を切り取る。


すると、その様子を見ていた村人達が、詰め寄ってきて、


「アキトさんさ、この内臓要らぬかったら、おらたちがもらってよかか? 」


と、質問してくる。内臓は綺麗に処理するのに手間がかかるので、今まで破棄していた。


「ああ、見たところこのイノシシは病気も持ってなさそうだし大丈夫な奴だ。だから、持っていってもらって良いし、後から肉も分けるぞ」


そういうと、村人達の男衆は内臓肉をすべて持っていく。


「アキトさん、村の人達は内臓をもらって何をするんでしょうか? 」


ヘカテリーナがその様子を不思議そうに見ながら、俺に質問してくる。


「ソーセージだろうな」


「ソー・・・セージ・・・?」


ヘカテリーナはその単語が何か分かっていないようだ。


「まぁ、食べてみればわかるから。」


そういいながら、俺は内臓を取り出した屠体を川の水に死後硬直が解けるまでつけておく。


高温の体内のままにしておくと、内部の肉が痛んでしまうからだ。大体、半日ぐらいかと思われる。


「よし、ヘカテリーナ。これから心臓と肝臓を焼いてくぞ」


そう言うと、彼女の目がキラリと光って、すばやく火を起こし始める。一方の俺は例のごとく食べやすい大きさに別のナイフで切っていき、串に刺していく。


そして、しばらく待った後、一串摘まんで食べる。濃厚な旨味のレバーが舌に喜びを知らせる。


ハツを食べれば、その歯応えの中からジューシーな肉汁が溢れてうまい。


「アキトさん、アキトさん。イノシシ美味しいです美味しいです」


ヘカテリーナはそう感動しながら、食べ進めていくのであった。



∴ ∴ ∴ ∴ ∴ ∴



 次の早朝から、川の冷水につけていたイノシシの屠体を引き上げて、頭を下に後両足を紐で括り、村人と協力して木の太い枝に吊り下げる。


この状態だといろいろと解体がやり易いという利点がある。


さて、そうして俺と村人達は、まずイノシシの毛皮と肉を分けていく。


それが終われば、枝肉となったイノシシの肉を部位ごとに分けていく作業だ。


俺は宣言通り枝肉を真っ二つに切り分けて、


「ほい、約束通り半分の肉だ」


「おおお、本当に分けてくださるとはありがてぇ。これでソーセージの中身が豪華になります」


村人達はそう言う。俺は早業で肉を部位ごとに分解していく。


デカいイノシシだったので、その肉の量もかなりあり、さらに俺はもう半分を村人達に分ける。


まぁ、二人だけだったらそんなにいらないしな。そう思いながら最後の肋骨外しを終えるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る