第十匹 セラピー

 帰宅した俺を出迎えてくれたのは、ヘカテリーナだった。彼女は俺の帰りを尻尾を大きく振って、喜んでくれている。


「アキトさん、おかえりなさい。昼食にしますか? 夕食にしますか?」


そう言って、ご飯が食べたいと暗に訴えてくる。


俺は


「ああ、今日は大猟だから好きなだけ食っていいぞ」


と、そう言いながら、ハラウサギの解体をし始めていく。


まずはじめに、ハラウサギの死体を木の太い枝に吊るしあげ、そして、毛皮と肉を分けていく作業をする。


毛皮と肉にある程度の切り込みを入れたら、毛皮を下にひっぱる。すると、ペロンペロンと面白いように毛皮が剥ける。この工程は毎回面白い。


皮が剥げたら、いつものように、内臓を傷つけないように腹部を裂いて内臓を取り出していく。肝臓と心臓もすぐに取り出して、お腹を空かせて待つヘカテリーナに調理させる。


ジュュュュュ、ジュュュュュュ


肉の焼ける音に彼女は耳としっぽをぴょこぴょこ動かす。見るからに早く食べたいと一目でわかる。


「アキトさん、アキトさん、もう食べていいですかね? いいですかね? 」


ヘカテリーナは頻りにそう聞いてくる。


「まだまだ・・・もうちょっと待って」


そう言われると、彼女はウズウズし始める。その限界が来た時、俺はゴーのサインを出す。


「わーーーい、いただきます。はむ、はふはふはむはむはむ・・・んんんんんおいしいです」


彼女は舌鼓しながら、それを食べておいしそうな顔をする。


その間にも、俺は残った屠体を解体していく。そうして、ウサギの体を足、ロース、もも、ばらと小分けにして分けていけば解体完了だ。


 さて、それではウサギの肉を使った簡単な料理でも作ろうとしようか。


最初にモモをこんがりと鍋で焼いていく。その間に、俺は家の倉庫から貯蔵していた玉ねぎを取り出して、ナイフで切り鍋に入れて一緒に炒める。そして、家の近くに生えているハーブを少し摘み、味を調整すれば完成だ。


「ほら、できたぞ。」


ヘカテリーナは、その料理に目を輝かせる。


「い、いただきます。はむはむはむ・・・んんんんん、とってもおいしいです」


彼女はそう言いながら、顔を綻ばせて幸せそうな顔をしていた。


その時!!


「痛い・・・あ、頭が割れそうです・・・」


ヘカテリーナは頭を抑えながら苦悶の表情を浮かべるのであった。

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