第5話 決戦

「まもなく「栄誉騎士団長殺し」と接敵します!」


「よし、第一部隊、「障壁中和」魔法詠唱開始!中和確認後、攻撃魔法を集中させよ。相手の実力を測る。いつ魔法使いたちに反撃が来ても対処できるよう、防衛騎士も備えよ!」


舞台は王都近くの大平原。

魔物襲来の報告を偵察隊から受けると、騎士団長は指示を開始する。

「栄誉騎士団長殺し」は、報告通り一見すると通常の人型魔物。

だが、よく見ると、半透明の薄い膜のようなものが全身を覆っているのがわかる。あれが問題の魔法障壁であろう。

討伐部隊は総勢20名あまり。それを10名ずつの2部隊に分けている。1部隊の編成は、「障壁中和」担当の魔法使いが2名。攻撃魔法担当が3名。そしてそれぞれの魔法使いを防衛する騎士が5名となっている。

2部隊に分けた理由は、第一に魔物一体に対し、一度に攻撃できる人員は限られること。第二に、反撃された際の危険を分散すること。


また、先に攻撃する第一部隊は、未知の部分の多い魔物に対応できるようベテランを多く編成している。必然的に第二部隊は経験の浅い者が多くなる。騎士団長は第一部隊。「英雄の息子と娘」の兄妹、および、昨日急遽討伐に加わった少年剣士は、第二部隊に名を連ねている。


「栄誉騎士団長」含む最強パーティを全滅させた魔物とついに対峙し、多くの者が生唾を飲んだ。


「「障壁中和」、いけます!」


「よし。討伐開始!!」


「「障壁中和」確認!」


「攻撃開始!!」


ベテラン攻撃魔法使い三名による、集中魔法。魔物一体を倒すには十分すぎる威力を見せ、爆発による砂塵が吹き上げる。


「魔物の様子をうかがう。総員一旦待機。」


魔物にどれほどのダメージが与えられたか。一同は固唾を飲んで見守る。砂塵が薄れた先には、


「くっ、やはり、化け物か・・・」


生物なら、跡形もなく消滅しておかしくない威力の魔法。


・・・にもかかわらず、「栄誉騎士団長殺し」は左腕を吹き飛ばてはいるが、まるで意に介さぬようにそこに立っていた。


「だが、攻撃は通じている!続けていくぞ!!」


「待ってください!様子が変です!!」


偵察隊からの突然の声。すると、みるみるうちに魔物の左腕は復元再生した。同時に魔法障壁も復活する。


「再生能力もあるだと!?」


「反撃、来ます!!」


魔物から、「障壁中和」および攻撃魔法を仕かけた魔法使い5人に、それぞれ一本ずつの計5本の触手で反撃してきた。


「防げ!!標的を魔法使いたちから自分たちへ変えるんだ。」


騎士団長を始め、5人の防衛騎士が触手と対峙する。


「くっ!」

「何て重さの一撃だ・・・」

「しまった!!」


だが、一人の騎士が触手を切り捨てようとするも一撃で切り捨てられず、標的の魔法使いまで攻撃を許してしまう。


その時、それは起こった。


「ハッ!!」


ベテラン騎士でも苦戦する触手を、


・・・後方にいるはずの「少年剣士」の一撃が「斬り落とした」のである。

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