第4話 討伐部隊編成
「報告します!「栄誉騎士団長殺し」に動きあり!この王都へ向かっています!!」
「ついに来たか。」
「「栄誉騎士団長殺し」が、遂にこの王都に向かって動き出した!3日後には近隣まで到着すると思われる。よって3日後、王都外の平原にて、この魔物を迎え撃つ!!」
「その任務にあたる精鋭をここに伝える!」
騎士団長が、討伐部隊の人員を発表する。
その中には、「栄誉騎士団長」の息子と娘の名前もあった。
妹である少女魔法使いは、「魔法障壁中和」担当。兄である青年騎士はその防衛を担う事となった。
その翌日の夜。
兄妹は、栄誉騎士団長の妻である母親と共に夕食の席を囲んでいた。
母親は最愛の夫を亡くしたばかりだ。そして同じ魔物に、今度は自ら腹を痛めた子ども達も奪われるかもしれない。
・・・が、悲観している様子は見うけられない。騎士団長という立場の人間と所帯を持つ際に、そういった事から覚悟はしていたのであろう。
なので、最後の晩餐と言った感じはない。3人とも信じているのだ。
この任務の後も、変わらず家族で食卓が囲めることを。
コンコン
玄関を叩く音がする。
「?こんな時間に、誰かしら?」
母親が玄関にて、突然の来訪者を迎える。
「あら、あなたは・・・」
「夜分に失礼します。お久しぶりです、奥方様。」
突然の来訪者は、彼女の夫の最期を見やった、少年兵の一人であった。
彼女の夫が殉職した際、立会として同行した少年兵たちが、奥方である彼女まで騎士団長の最期の様を伝えに来ていたのだ。
「ええ、久しぶりですね。・・・それで、どういったご用件?」
そう言いながらも、奥方は理由を察していた。
「はい。・・・失礼を承知でいいます。私を「栄誉騎士団長殺し」討伐部隊に推挙してください!」
やはりと、彼女は思った。
彼女の夫の最期の様を伝えられた際、少年兵の一人がこう言ってくれた。
「申し訳ございません。見届けることしかできず・・・我々にも力があれば・・・」
この言葉に、彼女は感謝と危うさを感じ、諭すように伝えた。
「そう言ってくれて嬉しいです。夫も喜んでいると思います。・・・ですが、今のあなた方に仇を果たして貰いたいとは思いません。厳しい言い方になりますが、あなた方が束になってかかっても、その魔物は倒せないからです。」
「私は魔法使いとしての実力が高いと自負しています。その私より夫は強かった。そして夫に同行して頂いた方々も、名の知れた実力者ばかり。そのメンバーが全滅してしまう相手・・・その魔物を実際に見たことが無い私ですら、とてつもない脅威だと思うのに、実際に見たあなた方は違うのですか?」
「・・・・・」
現役を退いたとはいえ、一流の魔法使いであり王国最強の騎士が選んだ伴侶。夫を失ったばかりであっても気丈に、そして厳しく諭す彼女に、少年らは何も返せなかった。
「・・・その意気込みは素直に買います。おそらく近いうちに、本格的な討伐軍が編成されるでしょう。その時までに、そうですね、現役を退いた今の私と渡り合えるくらいの実力がついたなら、討伐に推挙しましょう。」
目の前にいる人物は、魔法の実力以外にも生半可な相手ではなかった。
そういったことがあったにも関わらず、目の前の少年は「自分を推挙して欲しい」ときた。
「正直、私のところへ本当に来るとは思いませんでした。・・・他にも方法はあったでしょうに。」
「・・・これが筋だと思いましたので。」
少年の言葉を彼女は好ましく思った。
後は、その言に実力が伴っているかだけだ。
「では、あなたが夫たちを殺した魔物と戦うに値するか、試させて頂きます。どうぞ中へ。」
「・・・失礼します。」
少年を屋敷内の訓練部屋に案内する。
「こちらの部屋よ。私も準備します。中でお待ちになって。」
少年を部屋で待たせると、自身も準備で自室へ向かう。
その途中、子ども達が食事しているリビングへひょいと立ち寄る。
「ちょっと、「栄誉騎士団長殺し」討伐参加希望の子の試験してくるわね。」
その言葉に、兄は食後の紅茶を吹き出し、妹は口に運ぼうとしたフォークの手を止める。
そして二人とも、あんぐりといった表情で、自分たちの母親を見た。
この奥方、意外にお茶目な面もあるようだ。
「お待たせ。ちょっと、うちの子たちもあなたの実力を見に来たんだけど、別にいいわよね?」
「もちろんです。・・・では、お願いします。」
構える少年兵・・いや、少年剣士。
その返答と態度に満足すると、奥方も構えた。
「・・・あなたの実力、見させてもらいましょう!」
その翌日、すなわち「栄誉騎士団長殺し」討伐戦の前日、
「栄誉騎士団長夫人」の推挙により、一人の少年剣士が討伐部隊に加わることとなる。
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