第2話 英雄の息子

― それから数か月が過ぎた。―



その間、魔物と戦って散った6人の精鋭の葬儀は、遺体の無いまま国葬として行われた。

亡くなった騎士団長には「栄誉騎士団長」の称号が与えられ、その片腕であった副団長が、新たな騎士団長に任じられた。


その指揮団長が、一人の青年騎士を訓練していた。


「・・・いかがでしょう?」


「その若さにしては優れた剣技だ。だが、やはり一撃の鋭さ、重さは・・・おまえの父、「栄誉騎士団長」とは比較にならぬ。」


そう、この青年騎士は、亡くなった「栄誉騎士団長」の実の息子。


「近く行われる討伐任務の対象は、最強の騎士ですら倒せなかった魔物だ。魔法障壁などの情報が事前にある分有利ではあるが、それでも、「王国最強の騎士」と同等、それ以上の実力を求めたい油断できぬのはわかるな。」


「はい。・・・父は凄かった。その域にたどり着けるとは言えませんが、いずれは近づきたいと思っていました。」


「ただ、それが今ではないのが、悔しくて・・・」


若い青年騎士のまっすぐな思いを好ましいと思いつつ、厳しい言葉を告げる。


「・・・無いものねだりは、戦いの場では邪魔にしかならない。今できる最良を尽くせ。無論、俺もそうする。」


「わかりました。」


(・・とは言え、現時点でも同年代では別格。騎士団全体でみても上の下と言ったところか。高い伸びしろを考慮すれば、討伐部隊に選んで妥当だな。)


「栄誉騎士団長殺し」が「吸収型の魔物」である以上、練度の低い兵を闇雲に投入しても、被害が増え相手の力がさらに増す危険性が高い。

なので今討伐では、一定以上の力量があると認められた者だけを選抜する。


騎士団長は、「英雄の息子」は十分それに該当すると思っていた。

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