第33話 『陰謀?』その3
ぼくは、パジャマから普段着に着替えて、資料室に出向いた。
ロボット君が受付を、しっかり張っている。
ぼくが入って行くと、ロボット君が、器用な指先で、『あっち!』という感じでなにかを指し示した。
そこには、あの丸い球が、読書しながら『座って』いたのである。
それは、紛れもなく、かつて『可笑市』に住んでいた、かの、異世界人だったのだ。
他には誰も入室していない。
どうやら、ロボット君が、《資料整理の為に入室禁止》にしたようだ。
彼らの場合は、『宇宙人』と呼ぶのが適当かどうかわからない。
そもそも、この宇宙の存在ではないのだと言っていた。
物理法則も違う、他の世界の出身だと言う。
そこで、彼らは『幽霊』と、呼ばれていた。
実のところ、このまん丸な姿が、本当の姿だとは言えないのだ、と、本人たちは主張していた。
この宇宙では、そう見えるだけのことだ、という訳だ。
しかし、地球人には、そう見えるということは、そういう姿だと考えるしかない。
『やあ、おひさしぶるです。』
そいつは、実に気安くそう言った。
そうは言われても、彼らの姿も声も、地球人には、まったく区別がつかないのだから、誰だったかなんて、分からない。
すると、それは、地球人の姿に変わったのである。
『いやあ、失礼。これで、よろしいですかなあ。』
なるほど、これは、かの、御飯小路兄妹の兄である。
いや、その姿を略奪した異世界人である。
彼らは、はっきり言って、非常に危険な存在だ。
誰にでも取り憑き、誰にでも化ける。
彼らが、この宇宙船に入り込んでいると言うことは、大変に恐ろしい事態だ。
これが、『陰謀』の正体なのだろうか?
しかし、御飯小路の兄は、思いがけない事を言ったのだ。
『ぼくは、単独であって、他にはここに乗り込んでいないです。ご安心を。この船で何かをするつもりはない。ちょっと、途中まで乗せてもらいたいだけです。ぼくらの一族は、この太陽系から脱出しようとしたのだが、実は、しくじったんですよ。』
『もとの世界に帰ってはいかが?』
『ははは。そんなことできないのは、あなたが一番知ってるはずです。我々は反逆者集団であり、元の世界には帰れない。ところが、異世界に転移することが、なぜかできなくなっていたんだ。そこで、仕方がないから、地球からはずっと離れた孤独な惑星に移住しようと考えていますが、なかなか、場所が決めきれなくてね。』
『君たちの街は、どこでも行けるんだろう?』
『まあそのはずなんだが、問題が発生した。その問題は、君たちも同様なんだ。つまり、ぼくらも、君たちも、同様に排除しようと言う、陰謀がある。だから、ぼくらは、協力し合うべきなんだ。』
『はああ? 陰謀ですかあ。今夜は、その話を聞くの二回目かな。』
『ほう? あと、誰から聞いたのかい?』
『秘密。あ、おかしなことしないでくださいよ。』
『できないよ。君の抗体は、いまだに有効なんだ。ぼくらは、君には感染できない。しかも君は、その抗体を宇宙船内でばらまいている。そいつは、どんどん広がる。《あれ》は、他の宇宙人にも有効みたいだ。まあ、君が感染源さ。』
『ひとを、ウイルスさんみたいに言わないでほしい。失礼な。』
『それが、事実なんだ。』
御飯小路の兄は、溜息をついたようにも見えた。
『だから、君たちが上陸する場所には、ぼくらは移住したくない。ぼくは、その候補地を選定するお役目だ。』
『ふうん。あい変わらず、身勝手な。』
『そうか? 人間だって同じだろう?』
なんだか、腑に落ちない話だなあ。
ま、あの双子の王女様の存在自体と、良い勝負かもしれない。
みんな、絶滅寸前の地球人に相乗りして、いったいなにを、企んでるのだろう?
おそらく、みな、言葉通りではないに違いない。
『今夜は、それだけ。きちんと、挨拶したかったんだ。こんなこと、しなくてもよい訳だよ。でも、君に協力依頼したかったんだ。知らない仲じゃあないしね。』
**************************
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます