第29話 『資料室&自宅』 その1

 そこから後は、あまり書いても仕方がない。


 王女様は、自分の出番が済んだら、さっさといなくなってしまった。


 その先、第2オケがどうなったのかは、知りませんよ。


 ぼくは、自分の家、つまり、資料室にかえったのだ。


 資料室自体は、実は24時間稼働している。


 お手伝いの方は、交代で入るけれども、深夜と設定されている時間帯は、ロボット君だけになる。


 この、ロボット君は、見た目からして、古典的なロボット形態なのだ。


 ただし、全体に曲線を描くような体形になっていますから、武骨と言うことではない。


 質問をしようと話しかけると、もう、有り余るうんちくが、ずらずらっと出てくるので、いやならそこで、『ありがとう。』と言って、止める必要がある。


 これは、閲覧に来た方にも、ロボット君の活用方法の中で、その注意がわかるようにしていた。


 ロボット君は、しかし、それが分かっているので、なおさら、一生懸命、教えてくれるらしい。


 『お帰りなさい。マスター。』


 お手伝いの、若いお兄さんが、ぼくを迎えてくれた。


 ロボット君は、向こうの方で、なにやらごそごそ整理に忙しそうだ。


 なんでも、この彼は、画家の卵なんだそうである。


 今回の参加は、『修行の一部です。』とのこと。


 画家さんは、音楽とはまた違った表現方法を用いる。


 彼は、訪問先で、お客様の自画像を描いて差し上げるお役目なんだとか。


 『なんだか、わくわくするんです。だて、宇宙人相手でしょう。ミレーさんもマネさんもモネさんも体験してないわけですよ。』


 なるほど。


 聞いた話では、銀河連盟の諜報員は、けっこう古くから地球に駐在していたらしい。


 見た目では分からないので、彼らに関する具体的な資料は残っていないけれど。


 いまだに、解読できていない『ヴォイニッチ手稿』は、そこらあたりと、どうやら関連があるらしいと言う噂も、近年にはあったのだが、根拠はないようだった。


 『マスターは、もう、お休みタイムでしょう? ぼくは、12時で勝手に帰ります。どうぞ、お食事などしてください。』


 『そうですか、じゃあ、頼みます。』



            📚 



 まあ、ぼくは、自分では何にもしてないんですよね。


 ただ、聴いていただけだ。


 それが、ぼくの、ここでのありかたなのかもしれない。


 ご飯は、いくつかの選択肢があって、お弁当を頼むことも可能だし、自分で電子調理器で、簡単な調理をすることも可能。


 ただし、火を使うことは、禁止である。


 配達屋さんが来るわけではなく、室内の配達ボックスに、頼んだものがいつの間にか、どこからか、やって来るのだ。


 便利なものだが、あまり深くは考えない事にした。


 ボックスの中は、ただ単なる空間に過ぎない。


 どことも、つながってはいないのだ。


 今夜は、野菜サラダ&チキンライスの大盛りを頼んだ。


 5分もかからず、そいつは現れた。


 ほかほかの、正真正銘、チキンライスである。


 野菜も、どう見ても、本物だ。


 味も、まあまあ、というところ。


 まあ、最初でもあり、あまり無理はしないようにと、第2王女さまからも言われたし、それでも、なんだか神経が逆立っていて、すっと寝てしまうのは、なかなか難しそうでもあった。


 とりあえず、自室に入ったぼくは、びっくりして、『おわ!』っと、声を上げてしまった。

 



  ***************   🍚

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