第8話 『旅立ち』その4


 むかしは、地球のあちこちに、大きな都市があった。


 夜になっても、明々と照明がきらめいていたのだそうである。


 しかし、いまは、ここにしかない。


 しかも、遥かに進んだ技術で成り立っているのだそうだ。


 宇宙人たちは、地球人には到達できなかった、『宇宙エネルギー』とか呼ばれるなにかを、宇宙から取り出しているのだそうだ。


 しかも、そこからは、廃棄物も出ないのだそうである。


 理想の錬金術みたいなモノらしいが、地球人には、まだその秘密は、明かされていない。


 ダーク・エネルギーと呼ばれるものに、関連しているらしいともいわれるが、そもそも、それが何かさえ、地球人はわかっていない。


 ぼくは、レストランに赴いた。


 旅費と食費は、宇宙オーケストラ事務所持ちなんだそうだ。


 そんな、豪勢な話しは、聞いたことがない。


 ぼくたちは、銀河連盟に征服されたのか、解放されたのか?


 地球人の間でも、話がついていない。


 もちろん、そんなのは、ばかな議論にすぎないが、連盟は、そうした議論も、特に制限したりはしなかった。


 地球にも、かつては、民主主義があった。


 しかし、絶滅寸前になってからは、事実上の独裁だった。


 政府は、共産主義を表明していたが、残念ながら、人類はさまざまな技術も知識も失ってしまった。


 『中央委員会』は、まさに、謎の組織である。


 人類は、産業革命以前の生活に戻った部分が多かったが、アフリカの古い都市に造られた『中央委員会』は、過去の記憶をかなり保持していた。


 それが、どんな場所なのか、知る人は少ない。


 ピラミッドという、太古の建物が、核戦争をも、生き抜いたとは、聞いている。 


 地球上にあった、多くの都市や、施設や、文化や、科学技術が、どのようなものだったのか、そこには記録されているという。


 ただし、それは、コンピューターの中にであって、その大部分は、もはや再現できないものだったのだが。


 ぼくには、理解不能の領域である。



 彼女は、先に来ていた。


 待たせてしまったのかもしれないが、約束の時間には、まだ10分ある。


 『お待たせしました。』


 ぼくは、女性と交際した経験がない。


 ゆえに、カッコいいセリフなんて、何も知らなかった。


 それに、この相手が、いかに物凄い『天才』であるかなんて、知るよしもなかった。



    ・・・・・・・・・・・


 


 

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